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ヘッケルと進化の夢 [詳細]

目次ヘッケルについて著者紹介関連図書書評



闘う進化学者の実像。

エコロジーの命名者、系統樹の父、ミッシングリンクの探究者、一元論思想家、「個体発生は系統発生を繰り返す」で知られる進化論の闘士にして、文学、芸術、心理学、医学、さらにはナチズムにまで影響を与えたとされる毀誉褒貶の人


■目次

第一部 生涯と一元論の構想

第1章 ヘッケルの生涯と19世紀ドイツ──進化論との遭遇および一元論への開眼
第2章 一元論と『有機体の一般形態学』
第3章 [資料篇]『有機体の一般形態学』の章立てと概要

ヘッケル図像抄

第二部 一元論のもたらしたもの──文化・社会への影響

第1章 魅惑的な生物発生原則
第2章 ミッシングリンクの夢──ガストレア、モネラ、ピテカントロプス
第3章 科学の自由について
第4章 ドイツ一元論者同盟と教会離脱運動
第5章 ヘッケルの人種主義と優生思想
第6章 エコロジーの誕生
第7章 プランクトン論争
第8章 自然の芸術形態
第9章 結晶の魂──結晶、ゼーレ、実体則



■エルンスト・ヘッケルについて
Ernst Heinrich Philipp August Haeckel 1834─1919

ベルリン大学医学部で学び、イェーナ大学で比較解剖学、動物学を担当。ダーウィン進化論に基づく独自の「一元論」哲学による世界観を打ちたてた。多くの著作を残し、『生命の不可思議』や『宇宙の謎』は、戦前の日本でもベストセラーとなった。「個体発生は系統発生を繰り返す」という生物発生原則や、エコロジーの言葉と概念は、ヘッケルが創始したものであり、生物進化を樹木の枝分かれとして描出した系統樹も有名である。ピテカントロプスなどのミッシングリンクのイメージも、ヘッケルの想像力によるものである。また、深海の微小な生物たちは、彼によって美しい図版となり、工芸・建築分野にも大きな影響を与えた。さらに、教会支配から脱却した世界を創出するため、一元論者同盟を創立し、社会改革運動にも着手しようとした。一方で、その優生学的な見方が非難され、のちのナチズムとの関連が指摘されることもある。……本書は、毀誉褒貶に満ちたその多彩な断片をつなぎ合わせ、「ヘッケルという織物」の全体像を、可能なかぎり具体的に再現する試みでもある。




■著者紹介:佐藤恵子(さとう・けいこ)

1956年、東京生まれ。1978年、東京大学薬学部卒業、1989年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程 満期退学。現職、東海大学総合教育センター教授。専門領域は、科学思想史。
ヘッケル関連以外の論文に「発生生物学の黎明:ヴィルヘルム・ルー試論」(金森修編『科学思想史』勁草書房2010)など、翻訳書として、クララ・ピント‐コレイア『イヴの卵──卵子と精子と前成説』(白揚社2003)、ヤン・ピーパー『迷宮』(工作舎 1996)[共訳]などがある。




■関連図書(表示価格は税別)

[工作舎の進化論の本]
  • 個体発生と系統発生 スティーヴン・J・グールド/仁木帝都+渡辺政隆=訳 5500円
  • ダーウィン A・デズモンド+J・ムーア/渡辺政隆=訳 18000円
  • 動物の発育と進化 ケネス・J・マクナマラ 4800円
  • 生物への周期律 アントニオ・リマ=デ=ファリア 4800円



  • ■書評

    2015.11.15 毎日新聞 養老孟司氏書評
    「人間精神への応用」に大きな影響
    …私見だが、ヘッケルの「個体発生は系統発生を繰り返す」は、じつは情報に関する法則である。それは学者や研究者が論文を書くときのやり方に歴然と表れている。ある主題について、先行研究の結果を「要約して繰り返す」。その後に自分の成果を付け加えて「学問が進歩する」のである。こういう意見はほとんど冗談だと思われるだろうが、私はそう思っていない。思えば十九世紀のメンデル、ダーウィン、ヘッケルの法則はいずれも情報に関する経験則である。われわれは情報という言葉をごく日常的に使う。しかしその意味を真剣に考える機会は少ない。情報は意識、つまり脳が扱うものであることを考えれば、ヘッケルの法則と人間精神の発達が関連することは当然なのである。

    2015.11.8〜12.6 沖縄タイムスなど地方紙22紙に著者インタビュー
    知的遺産掘り起こす
     ドイツの動物学者・哲学者。エルンスト・ヘッケル(1834〜1919年)と聞き、人物像がすぐ浮かぶ人は少数派ではないか。ダーウィンの進化論に基づく独自の「一元論」を唱え、19世紀後半の同国で影響力を誇ったが、その視点が後にナチズムとの関連を指摘され、長く研究に光が当たらずにきた。
     そんなヘッケルの思想や生涯を、東海大学教授の佐藤恵子さんが新著にまとめた。ヘッケルの著作を丹念に読み解き、複雑で多彩な全貌を明らかにする。(中略)
     もはや日常的に使われる「エコロジー」という言葉は、実はヘッケルが創ったという。ヘッケルの知的な遺産は、現代の私たちにも息づく。それを掘り起こすのが、研究の面白さという。「私たちの知識がどのような背景で生まれたのか。一部でも知るのは大事」

    ※掲載紙:
    11.7 沖縄タイムス
    11.8 琉球新報、南日本新聞、熊本日日新聞、宮崎日日新聞、四国新聞、徳島新聞、山陰中央新報、山梨日日新聞、下野新聞、北日本新聞、秋田さきがけ
    11.15 大分合同新聞、佐賀新聞、愛媛新聞、高知新聞、福井新聞、新潟日報
    11.22 信濃毎日新聞、岐阜新聞、長崎新聞
    12.6 東奥日報

    2015.10.30 週刊読書人 金子務氏書評
    全貌を知るに足る重厚な書
    …この半月ばかり、車中や音楽会場の合間で、もちろん自宅の椅子でメモをとりながら、待望久しい佐藤さんの大著に遊ばせてもらった。読み終わって爽やかな気分である。この著作はもちろん小説ではない。単なる解説書でも伝記でもない。現在流行の関心から遡及する記述を排して、地道に、厖大な原著作と背景を読み解きながら、ヘッケル思想の奥行をみごとに描いた学術的労作なのである。われわれは初めて、ヘッケルの全貌を知るに足る重厚な書を手にしたという意味で、この出版は快挙である。…

    2015.9.21 ブログで三中信宏氏書評
    ヘッケル山脈の裾野ははてしなく
    (前略)19世紀から21世紀の長きにわたってそびえ立つ “ヘッケル山脈” を見上げるとき,まったく予期していなかった本書のような本格的評伝が日本語で出版されたことはとてもありがたい.巻末には文献リストと索引が完備されている(ワタクシ側から言えば「蒐書はまだ当分終わりそうにないな」という感を強くした).19世紀ドイツ進化形態学の錯綜した様相を理解するためにも,当時の自然科学や人文・社会科学周辺との密接なかかわりについて知る上にも,さらには科学と一般社会との関係を考察する際にもまちがいなく必読書だろう.掛け値なく読書の秋にふさわしい一冊である.

    全文は三中氏のブログ:leeswijzer: boeken annex van dagboekへ。




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