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動物の発育と進化[詳細]
Shapes of Time

目次著者紹介関連図書書評


ヘテロクロニーとは何か!?

私がこの本で意図しているのは、発育の速度とタイミングの変化が、片や遺伝現象と片や自然淘汰の間にきわめて重要な関係をどのように引き起こすか、という話をすることである。動物の形はどのように進化するか、サイズはどのように進化するか、寿命や幼体期間の長さなどの生活史戦略はどのように進化するか、といった諸問題をめぐる話である。それはまた、もろもろの行動の進化のしかたにも関わりをもっている。これらはわれわれ動物が成長するとともに変わるものだが、程度はいろいろであれ、進化とともに種から種へと変わっていくものでもある。

謝辞より




■目次より

プロローグ
1 進化する胚
     個体発生……受精から死まで/進化と自然淘汰/内部からの進化
2 ヘッケルとガースタングの逆さまの世界
     ヘッケルと生物発生原則/初期の反復説論者たち/反復説の全盛期
     反復説の衰退と崩壊/反復説……安らかに眠れ
3 来るべきものの形
     胚を構築する/細胞の運命を決定する/目には目を、歯には歯を
     羽をつくる/各部分の成長
4 ある犬の一生
     漫画の進化/チワワからウルフハウンドまで/多様性は生命の源泉
     昆虫類……性競走で優位スタート/兵アリとサシガメ
     サンショウウオにおけるストレスと性/イヌ類をもう一度
5 雌雄性にかかった時間
     性別のない世界/雌雄性の出現/雄にするか、雌にするか/
     追いつめられた雄シカ/ピグミーチンパンジーとブタオザル/
     極端な性的二型/ソードテールとカワハギ/
     「客間へどうぞ」とクモが言った/甲虫類を偏愛しすぎたこと/
6 鳥類と腕足類とブッシュバック……種分化におけるヘテロクロニー
・      ダーウィンのガラパゴスフィンチ/大あらしの後の腕足類/進化的な螺旋
7 ピーター・パン症候群
     子供のような形をして/ウェットサイドを歩け/
     肺魚類における細胞サイズの進化
     細胞死とネコの脳の進化/小形化へ逃避する
8 過去の姿、未来の形
     ギヴアンドテイクを少しばかり/
     ドードー……巨大な幼鳥か、超過発育したハト成鳥か/
     鳥類における飛翔の進化/前進の第一歩/カメ類の進化/指を指ししめす
9 形をさらに進化させる
     大きく、実に大きくなる方法/恐竜類の成長/馬鹿さわぎをする
     だんだん大きくなるのはなぜか/二者択一を迫られて
     各部分の成長/指に翼をそなえて
10 生活の仕方を進化させる
     原生生物の生活様式/四千万年の道のり/ヤツメウナギの食べすぎ/
     齧歯類をもう一度/イヌ類の飼い馴らし/行動を変化させる
11 生物学的軍拡競争に活力を
     傾向を決定する/中新世における殺戮と破壊/捕食者らと格闘する
     捕食圧が成熟時期に影響する/捕食が大進化を駆動する
12 幼児の顔をした超類人猿
     ヒトはどのようにこれらに当てはまるのか/ヒトは本当に類人猿の赤子なのか
     超類人猿の興隆/なんと錯綜した網をヒトの脳は編んできたことか
エピローグ



■著者紹介:ケネス・J・マクナマラ Kenneth J. McNamara

進化生物学者。イングランド出身。スコットランドのアバディーン大学で地学、古生物学などを修め、ケンブリッジ大学で学位を取得。専門は三葉虫や化石ウニ類の研究。現在、オーストラリア南西海岸、パース市にあるウェスタンオーストラリア博物館の地球惑星部門で古無脊椎動物担当の上級監理官を務める。これまでに"Heterochrony:The Evolution of Ontogeny"(1991)、"Evolutionary Change and Heterochrony"(1995)など、進化に関する数冊の著書や編著書を公刊している。

■訳者紹介:田隅本生(たすみ・もとお)
京都大学理学部動物学科卒業後、同大学院博士過程、東北大学助教授、京都大学助教授などを経て、進化形態学研究室を主宰。脊椎動物学、進化形態学を専攻。著書は『講座 進化4』(分担執筆、東大出版会)など。ことに筆名で訳したS・J・グールド著『パンダの親指』が有名。




■関連図書(表示価格は税別)

工作舎の進化論関連図書
  • 個体発生と系統発生  進化の観念史と発生学の最前線 スティーヴン・J・グールド 5500円
  • 時間の矢・時間の環  地質学的時間をめぐる神話と隠喩  スティーヴン・J・グールド 2524円
  • 選択なしの進化  形態と機能をめぐる自律進化  リマ=デ=ファリア 5500円
  • 性選択と利他行動  クジャクとアリの進化論  ヘレナ・クローニン 6500円
  • 進化発生学  ボディプランと動物の起源  ブライアン・K・ホール 10000円



  • ■書評

    2001.7.1 日本経済新聞 池田清彦氏(山梨大学教授) 『進化発生学』ともに書評
    …新しい理屈を考えるためのヒントに満ちている。キーワードは発生である。遺伝子が形を作るとの言明があたかも真理のように流通しているが、一つの細胞に過ぎない卵から実際の形を作るのは、発生のプロセスなのだ…

    ネット書店bk1 ナビゲーター 彦坂暁氏(広島大学 総合科学部)
    ヘテロクロニーが生物の進化を解き明かす
    …タイミングの変化(ヘテロクロニー)が、生物の進化においてきわめて重要な役割を果たしてきた、というのが本書の主張である。…イヌの品種間の形態的な差異は非常に大きいのに、ネコの品種はそれほど違わないのは何故か。カブトムシやシカの仲間など、動物に広く見られる雌雄の形態の違い(性的ニ型)はどのようにして作り出されるのか。…ヘテロクロニー概念を軸に、遺伝学、発生学、生態学、古生物学などの分野が結びつけられていくのが、とてもエキサイティングだ。…  bk1サイト全文




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