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平行植物[詳細]

目次著者紹介関連図書書評


絵本作家レオーニが贈る
幻想の博物誌

自然が芸術を模倣するのか、
芸術が自然を模倣するのか……?
幻想の庭・想像の山野に繁茂する数奇な植物たちの博物誌。

ヒゲバカマユビナリ



■目次より

平行植物図版集成
はじめに——レオ・レオーニ
主要平行植物一覧表

第1章 平行植物とはなにか

植物学の歴史——古代から近代まで
奇妙な植物たち——植物学を脅かす異端の存在
現実と非現実——触知できる第2の現実の可能性
平行植物の分類法——言語に従属する植物・言語から生まれる植物
アルファとベータ——第1回国際平行植物会議

第2章 起源をめぐって

モルゲンツェンの大嵐説——垂直に立ちあがった最初の植物
最古の平行植物——ルリスタン砂漠の化石をめぐって
進化過程における謎——古生物学上の分岐点

第3章 形態について

自然物と人工物——自然の諸形態を特徴づける有機性
幾何学的衝動——図形の背後に潜む無秩序
形態と材質——個体を識別させる植物性
大きさと知覚——遠近法を裏切る植物
植物の言語——メッセージとしての色・擬態としての色

第4章 タダノトッキ科(Tirillus)

  メマイトッキ(Tirillus oniricus)
  コイシモドキ(Tirillus mimeticus)
  ヤドカリトッキ(Tirillus parasiticus)
  ニオイトッキ(Tirillus odoratus)
  フエフキトッキ(Tirillus silvador)

第5章 森の角砂糖バサミ(The woodland tweezers)
第6章 カラツボ(Tubolara)
第7章 グンバイジュ(Camporana)
第8章 キマグレダケ(Protorbis)
第9章 アリジゴク(Labirintiana)
第10章 マネモネ(Artisia)
第11章 メデタシ(The germainants)
第12章 キチガイウワバミ(The stranglers)
第13章 ツキノヒカリバナ(Giraluna)

  オオツキノヒカリ(Giraluna gigas)
  ヒメツキノヒカリ(Giraluna minor)

第14章 夢見の杖(Solea)
第15章 ユビナリソウ(Sigurya)

エピローグ「タウマスの贈りもの」
平行植物奇譚年譜



■著者紹介:レオ・レオーニ Leo Lionni 1910.5.5 - 1999.10.11

オランダ・アムステルダムに生まれ、14歳でイタリアに移住。チューリッヒ大学で経済学を学ぶかたわら、イタリア第二未来派グループに参加。ミラノでデザイナーとして活動するも、1939年、ファシスト政権によりユダヤ系とされアメリカに亡命。48年より『フォーチュン』誌のアートディレクターとして活躍する。
1959年、孫のために作った『あおくんときいろちゃん』で絵本作家デビュー。『フレデリック』『せかいいちおおきなうち』『スイミー』はじめ相次いで発表した童話作品の数々が各国でさまざまな賞を受賞する。
イタリアに戻った1960年以降は絵本および彫刻作品の創作活動に専念。幻想の植物も時間をかけて育み、76年、学術書の体裁で本書を上梓する。
1996年、板橋区立美術館をはじめとする日本の4館で、展覧会も開催される。




■関連図書(表示価格は税別)

  • 植物の神秘生活  P.トムプキンズ他 工作舎 3800円
  • 恋する植物  ジャン=マリー・ペルト 工作舎 2500円
  • 植物たちの秘密の言葉  ジャン=マリー・ペルト 工作舎 2200円
  • 花の知恵  M.メーテルリンク 工作舎 1600円
  • 蜜蜂の生活  M.メーテルリンク 工作舎 2200円
  • ガラス蜘蛛  M.メーテルリンク 工作舎 1800円



  • ■書評

    KINOKUNIYA書評空間 2011.6.17 上田宙氏書評
    久々に「印刷買い」をした。…書店で平積みになっている『平行植物(新装版)』のジャケットを見たとき、タイトル文字がギザギザした輪郭だったので、まさかグラビア印刷?と思わず手が伸びた。実際は現在主流のオフセット印刷だったので「まあそりゃそうだろう」と少しがっかりしつつ中を開くと、本文がいまどき珍しい活版印刷。これも何かの縁だと買うことにした。…この『平行植物』のような、30年も前(初版は1980年)の紙型を使った活版本とは、めったに新刊書店では出会えない。…全文は書評空間サイトへ

    毎日が発見 2008年5月号 玄侑宗久氏書評
    レオ・レオーニといえば、日本語版では『あおくんときいろちゃん』や『いろいろ1ねん』などで知られる絵本作家である。また画家、彫刻家、そしてグラフィック・デザイナーでもある。
     しかし私にとっては、最初に出逢ったのがこの『平行植物』であったせいで、彼はなにより現実というものの幻想性・虚構性を教えてくれた思想家であった。
     この本では、まるで老植物学者がこれまでの長年の研究成果を丹念に披瀝(ひれき)するかのように、「植物学の歴史」から説き起こされる。ところがこれは、じつに学術的な体裁で描かれるフィクションなのである。
     読み進めていくうちに、そうか、植物学はもちろん、医学も哲学も、いや、あらゆる学問とはフィクションだったのだ、と気づく。いやいや、それどころか、我々が「現実」と呼んでいるものだって、ある一定の認識の枠組に則(のっと)って捕捉されている以上、一種の虚構ではないか。
     狂おしいまでに丁寧に詳細に述べられるフィクションは、ただ有ることに安住する現実よりも、遥かに強力なリアリティを発している。私はこの本を読むたびに、人間にとって虚構性というものがいかに根深く侵食し、不可欠になっているかを思い知る。
     グンバイジュやマネモネ、メデタシやタダノトッキなどは、すでに私のなかに植物学上の歴史まで含めて息づいている。こんなふうに私の描く小説のなかの人々も、リアルに息づいてくれないかといつも夢みてしまうのである。
     ある意味でこの本は、人間の認識方法についてのデザイン・ブックなのかもしれない。現実は、その認識方法を超えて決して現れない。だから諦めるというのではなく、だからこそこの本から勇気をいただくのである。




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