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自己組織化する宇宙[詳細]

[『自己組織化する宇宙』]は、
……われわれ人間を奥底から駆動する成就への希求の表現であり、
宇宙的な過程の一環をなすわれわれの人生が、
……「自己超越をとおしての自己実現の規範」に参与できるという、
希望の発露だったのである。
短命ではあったが、エリッヒの人生は目ざすところを成就したとわたしは確信する。
彼の業績は、われわれが生き、
そして死ぬこの不思議きわまりない宇宙の総体的な企図について
思いめぐらす多くの老若男女に、このうえない霊感を与えつづけるだろう

イリヤ・プリゴジーヌ(序文より)

■目次より

序 エリッヒ・ヤンツを偲んで   イリヤ・プリゴジーヌ
まえがき 
序章および要約 メタゆらぎから生まれる新たなパラダイム
    0・1 自己再新の時
    0・2 科学の自己再新
    0・3 内容要約 

PART1 自己組織化=自然界におけるシステムのダイナミクス
第1章 序論・影とシンボルについて ケン・ウィルバー
     1・1 還元主義を超えて
     1・2 物理学における研究姿勢の三レベル
     1・3 秩序形成の源泉としての対称性の破れ 
第2章 散逸構造=自己創出性(オートポイエシス)
      2・1 自発的な構造化
     2・2 システム特性の階層的な見方
     2・3 散逸構造の特徴
     2・4 自己参照性と環境
第3章 ゆらぎをとおした秩序=システム進化
    3・1 進化的フィードバッグ
    3・2 ゆらぎの役割=ミクロの視点から
    3・3 マクロ的不確定性
    3・4 新奇度と確立度
    3・5 システムのダイナミクスと歴史
第4章 自己組織化システムのモデル化
    4・1 自然システムにおける相同的ダイナミクス
    4・2 カタストロフィ理論によるもうひとつのアプローチ
    4・3 物理-化学システム
    4・4 生物システム
    4・5 社会生物システム
    4・6 生態系(エコロジカル・システム)
    4・7 社会文化システム

PART2 マクロ宇宙とミクロ宇宙の相互進化=対称性の破れから生まれたリアリティの歴史
第5章 宇宙のプレリュード
    5・1 対称性が破れるプロセスとしての進化
    5・2 物質を生んだ非対称性
    5・3 物理力間の対称性の破れ=時空連続体が広がって進化が展開する
    5・4 間奏曲=凝縮による構造形成
    5・5 宇宙構造の自己組織化
    5・6 物質の移動と宇宙の「系統発生」
    5・7 宇宙における時間の矢
第6章 生物化学的相互進化および生物圏相互進化
    6・1 エネルギー流が化学進化の引き金を引く
    6・2 生物前段階における自己組織化=散逸構造とハイパーサイクル
    6・3 線型自己再生産=遺伝子コミュニケーションにおける垂直性
    6・4 酸素の豊富な大気圏の形成=生命自身がさらなる進化の条件をつくる
    6・6 ガイア=生物圏お呼び大気圏の惑星的自己組織化システム
第7章 生命ミクロ進化における発明
    7・1 共生によって真核生物が出現する
    7・2 有性生殖
    7・3 従属栄養能力=生命が生命を食べる
    7・4 多細胞生物に向けて
    7・5 新奇性と確立性の難しいバランス
第8章 社会生物的関係(ソシオバイオロジー)と生態的関係(エコロジー)=生物(オーガニズム)と環境
    8・1 用語に関する注意点
    8・2 エネルギーの最適利用
    8・3 生命のマクロダイナミクス
    8・4 生物と環境間のフィードバック・ループ=後成的機構とマクロ進化
    8・5 後成的機構とミクロ進化
    8・6 長期的進化戦略に見られる時間的操作
    8・7 人間=後成的進化の産物
    8・8 個別化に向かう社会的進化
第9章 社会文化進化
    9・1 生物コミュニケーションのダイナミクスな展開
    9・2 ニューロン=高速コミュニケーションのスペシャリスト
    9・3 動的原理としてのマインド
    9・4 「三位一体の脳」の進化
    9・5 精神作用の自己創出レベル
    9・6 言語
    9・7 世界の社会文化的再創造
    9・8 主観性と客観性の相補的関係
    9・9 創造的心によって切開かれる進化

PART3 自己超越=進化のシステム理論に向けて
第10章 生命の循環プロセス
    10・1 回路的組織機構=散逸的自己組織化のシステム理論
    10・2 自己組織化システムのヒエラルキー・タイプ
    10・3 自己創出的自己再生システム
    10・4 成長型ダイナミクスをもつシステム
    10・5 回路的システム組織機構の相互進化
第11章 コミュニケーションと形態形成
    11・1 コミュニケーション・タイプの一般分類
    11・2 記憶の発生
    11・3 系統後成的プロセス=散逸的原理と保存的原理の相互作用
    11・4 共生
    11・5 マクロ、ミクロ宇宙相互進化の主要段階におけるコミュニケーション
    11・6 コズミック・コネクション
第12章 進化プロセスの進化
    12・1 システム・ダイナミクスのマクロ的、ミクロ的描像
    12・2 複雑さの出現
    12・3 対称性の破れをとおして進行するメタ進化
    12・4 ヒエラルキー的に確保された解放性
第13章 時間-空間的結合
    13・1 コミュニケーションによる空間、時間の相互対応
    13・2 時間の微細構造
    13・3 進化における時間結合、空間結合の諸段階
    13・4 進化の「目的」
第14章 多層的現実(マルチレベル・リアリティ)のダイナミクス
    14・1 多層的自己創出
    14・2 ヒエラルキー的に調整されたダイナミクス
    14・3 管理ヒエラルキーではない、層状の自治

PART4 創造性=自己組織化と人間の世界
第15章 進化(エボリューション)=そして革命(レボリューション)
   15・1 緩やかな変革=それは修正的操作か、進化のゆらぎか?
   15・2 社会制度のメタ安定
   15・3 量子的飛躍から「滑らかな」進化へ?
   15・4 多元的文化と人間生活システムの自律性
第16章 倫理、道徳、システム・マネージメント
    16・1 多層的(マルチレベル)倫理
    16・2 計画における時間-空間的結合
    16・3 経営トップの開放
    16・4 構造的計画にかわるプロセス的計画
    16・5 価値の相補性
第17章 エネルギー、経済、テクノロジー
    17・1 エネルギー利用にみられる時間結合
    17・2 エネルギー集約型経済
    17・3 経済、環境、意識
第18章 創造のプロセス
    18・1 創造のプロセス
    18・2 開いた科学
    18・3 意識の回りの舞台の上で
第19章 開放性の次元
    19・1 強度・自律・意味=進化の進行に関する動態尺度
    19・2 存在の即時性
    19・3 歴史的時間の止揚(サスペンション)

エピローグ 意味

参考文献
訳者あとがき
事項索引
人名索引 


 
 
 
■編者紹介:エリッヒ・ヤンツ Erich Jantsch 

1929年、オーストリアのウィーンに生まれる。51年ウィーン大学で天体物理学の学位を取得。その後、貿易会社のマネージャー、原子力工学とMHD発電のエンジニア、トップ・マネジメントの顧問、音楽・演劇評論家として多彩な実力を発揮。1962〜68年にはOECDの技術顧問をつとめ、技術予測と経営計画の世界的先導者となる。70年、ローマクラブの創設時には、設立メンバーのひとりとして参画。
OECD時代と相前後して、C・H・ウォディントン、I・プリゴジーヌ、M・アイゲン、G・ベイトソンら、多ジャンルにわたるシステム理論の研究者たちとの交流を重ね、創発的パラダイムを生成するための「統合理論」を構想。スローン経営学校、マサチューセッツ工科大学、カリフォルニア州立大学バークレー校などの研究員、客員教授を歴任しながら、創発的進化を追求する一連の編・著書を発表。80年刊行の本書は、その集大成にあたる。邦訳著書は『技術予測』上下(マネジメントセンター出版部)

 
 

■書評

田坂広志(『AXIS』2003年5.6月号)
「意志的創発」と「創発的意匠」
なぜ、この宇宙は、これほど美しい秩序や構造を、自然に生み出していくのか。……それは、おそらく、答えの無い問いである。その問いを、ヤンツは全霊を捧げて問い、そして去った。しかし、ヤンツが去った後も、この問いに対する答えを求め、歩み続けている研究者たちがいる……アメリカのニューメキシコ州にあるサンタフェ研究所。……「複雑系」の性質を解明しようとするサンタフェ研究所の営みは、ある意味で、亡きヤンツの遺志を継ぎ、「自己組織化する宇宙」の秘密を解き明かそうとする営みに他ならない。……
全文再録>>>

日本総合研究所社長 花村邦昭氏(『日経ビジネス』1995年5月22日号「私の一冊」より)
プロセスの自己進化をキーワードとする本書は「万物を動的に捉え、そのプロセスが良い方向へ動くように努めるのが生命の基本的な営みである」と説きます。生命、組織、国家など、悪い方向への進化を避けるためになしうることは、コミュニケーションを取ること以外にありません。


 
 
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