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ライプニッツ術[詳細]

目次著者紹介関連図書書評


等身大からはじまるライプニッツ入門

「私」というモナド
「私」をめぐる問題は哲学にとって最重要なものの一つだ。ライプニッツはこれに対して正面から取り組むことめったになかったが、いわば問わず語りに多くを語っていた。「モナド」が結局はそれなのだ、と私は思う。……私たちが自分自身のことについて思いをめぐらすときに否応なしに迫ってくる感覚がモナドという表現を求めたのである。……私はモナドの一つである。なぜすべて「私」と言わないのかというと、「私」と言えないものにも同類の感覚を共有したいからである(「あとがき」より)




■目次より

0 まえがき
ライプニッツ・マップ1 遊歴期(1646-1676)
ライプニッツ・マップ2 遊撃期(1676-1716)

1  発想術

1-1 ポジティブな姿勢 主張と否定◎厳しさと希望をあわせもつ楽天家
1-2 発見の記号学 ◎神秘の記号◎人間の思想のアルファベット◎単純観念◎記号と対象
◎記号の設定◎発見◎総合と分析◎目録
1-3 連続と多様性 ◎近代科学◎運動の法則◎連続律◎自然は飛躍せず◎現象の多様性◎自然の多様性◎存在の多様性
1-4 無限 ◎三種類の無限◎現実の無限◎顕微鏡と無数の存在◎存在の重層性◎宇宙を映す永遠の生きた鏡
1-5 類比 ◎比喩◎類比◎自然の類比◎精神と自然◎中国◎神と人間◎類比の逆転「小さな神」

2 私の存在術

2-1 私の存在 ◎私という存在◎表象◎意識的表象◎微小表象◎判明-混雑◎視点◎モナドの窓
2-2 世界 ◎私と世界◎可能世界と天地創造前夜◎存在への問い◎理由律◎決定の原理◎オプティミズム
2-3 個体の位置 ◎統一性◎心身問題◎作用因と目的因の調和◎自発性
2-4 人間の戦略 ◎中間者◎幸福の学◎蓋然性の論理◎保険論◎偶然性◎リスク・マネジメント

3 発明術と実践術

3-1 計算機の発明 ◎パスカリーヌまで◎ライプニッツの計算機◎工夫「ライプニッツの歯車」◎二進法計算機◎計算機の裏側◎ライプニッツ以後
3-2 図書館活動 ◎本との出会い──ライプツィヒ◎図書の整理──マインツ◎図書館改革──ハノーファー◎ウィーン、イタリア旅行◎もう一つの図書館──ヴォルフェンビュッテル◎終の棲家──ハノーファー◎その後
3-3 ハルツ鉱山開発 ◎ハルツへの挑戦◎第一計画=水車改良◎第二計画=風車併用◎第三計画=連動風車◎第四計画=水平型風車◎執念◎ハルツの教訓◎その後のハルツ
3-4 マルチタスキング ◎一六八六年◎一七一六年◎モバイル人間

4 情報ネットワーク術

4-1 受信術 ◎情報収集◎情報整理◎カオス
4-2 発信術 ◎相手を見据える◎例証◎リンク◎枝分かれとネットワーク
4-3 情報は時空を編集する ◎隣り合うこと◎空間と時間◎新しい世界の創出

ライプニッツ 1702年密着取材
遺されたもの ◎自筆資料◎刊行本
文献/事項索引/人名索引/あとがき



■著者紹介:佐々木能章 (ささき・よしあき)

1951年福島県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。三重大学助教授を経て、現在横浜市立大学教授。 幼少時は大工にあこがれ、中学時代には数学や物理学に惹かれた。高校生の時の級友との語り合いと『三太郎の日記』とから人間に目が向き、大学で哲学を学ぼうと決意した。卒業論文は「ライプニッツの空間・時間論」で、その頃からライプニッツと付き合っていることになる。ライプニッツを選んだのは、あまりメジャーではなかったこと、文系にも理系にもまたがっていたこと、大きな書物がなかった(と思っていた)こと、私の第二外国語がフランス語だったこと、ちょっと読んでみた『モナドロジー』がさっぱりわからなかったこと、などなどである。その後もライプニッツを中心とした哲学・思想史の研究をする一方で、医療技術がもつ現代的意味についても考えている。最近は、四国遍路などの巡礼の意義について実践も含めた研究を楽しんでいる。
訳書に『ライプニッツ著作集』6巻7巻宗教哲学『弁神論』上・下、8巻前期哲学、9巻後期哲学(8・9は共訳、工作舎 1989-91)などがある。




■関連図書(表示価格は税別)

  • ライプニッツ著作集 全10巻  工作舎
  • ライプニッツの普遍計画 バロックの天才の生涯  工作舎 5340円
  • 下村寅太郎著作集7[ライプニッツ研究] みすず書房 5000円 1989.8
  • ライプニッツ ルネ・ブーヴレス 白水社文庫セクジュ 951円 1996.6
  • ライプニッツ 永井博 勁草書房 2700円 1997.11
  • ライプニッツ シュプリンガー・フェアラーク東京 2893円 1996.12
  • 襞─ライプニッツとバロック─ ジル・ドゥルーズ 河出書房新社 3000円 1998.10
  • モナドロジーの美学 米山優 名古屋大学出版会 5800円 1999.10



  • ■書評

    名和小太郎氏 (『情報管理』46巻2号 科学技術振興機構 2003)
    ライプニッツは大知識人であり、多くの同世代人と書簡のやり取りや論争を繰り返した。その著作は、論理学、数学、自然学、認識論、宗教哲学、中国学、地質学におよび、日本訳の総計では全10巻、全4,124ページに及ぶ。 著者は、このライプニッツの全著作を問題別に再編集し、そこからおもしろい文章を切り出し、これに自己流の気ままなコメントを付ける。これが本書の構造である。しかも、脚注を自在に使って、そのコメントに参照情報を加えている。 こう言えば、インフォマティクスに練達な読者諸姉兄にはもう見当がつくだろう。つまり、この本は上記の浩瀚(こうかん)なライプニッツ著作集のハイパーテキストになっている。ここに本書の特徴がある。

    加藤泰史氏(『感性哲学』第3号 日本感性工学会感性哲学部会発行、2003.10月)
    前半で“モナド”と“世界”が論じられ、後半で“編集”ということで“情報”の問題が主題化されることになる。こうした後半の問題設定を私は高く評価したい。それは感性哲学にとっても大いに参考になるはずである。たとえば、ライプニッツの図書館運営は“概念のネットワークの再編成”を目指す活動であり、アカデミー建設は人的ネットワークを通して“新しい分野の創出が期待できる”として“ライプニッツはあらゆる場で情報の掘り起こしに努めていた。それは新しい意味を探り、新しい世界を生み出そうとする試みであった”と結論づけられているが、この“新しい意味と新しい世界の創出”は感性哲学の目標とするところでもあるからだ。それゆえに、17世紀末から18世紀にかけての学問的変革期に新たな知のパラダイムを模索したライプニッツの試みは現代にとっても刺激的かつ有益であり、また著者自身もそのことを強く自覚して“情報”・“ネットワーク”・“リスク・マネジメントド”などの現代用語を駆使しながら現代的状況との重ね合わせを試みている。そして、それは平明な語り口とあいまって基本的に成功していると思う

    WEBマガジン「ゑれきてる」佐々木能章氏インタビュー
    「対話から創造へ」と題してライプニッツの発信・受信術について6回連載で語りおろし。 「ゑれきてる」サイトへ >>>

    bk1 書評
    「リンク」の哲学——現代のアルス・コンビナトリア
    ライプニッツの創造性の秘密は、「ネットワーク」というどこか神の視点を思わせるところがある言葉よりもむしろ「リンク」(現代版アルス・コンビナトリアとしての)というキーワードでもってとらえる方がよりアクチュアルに解明できる。
    bk1サイト全文へ >>>

    竹田篤司氏書評(2003.3.15号 図書新聞)
    『ライプニッツ術』とは奇妙な題だが、これを〈アルス・ライプ……〉と横文字に直してみれば明快である。つまり万能の天才ライプニッツがもちいた思索と世界認識のための「術」にほかならない。だが、著者はさらにこれを、ライプニッツ理解のための自分流の「術」であるとし、のみならず、そのようなライプニッツを介し、自ら思索する人のための思考「術」にまで、仕立てようとしているかに見える。欲張りな注文だが、しかし本書は、その三つに十二分に応えている。……
    「かれ[ライプニッツ]からはまだまだ出ます」とは、西田幾多郎晩年の手紙の一節だが、「出てくる」とは、掘るに従い、いよいよ湧き出ずる泉のようなライプニッツの思想の真髄を言い当てている。無限の含蓄を蔵したこの「泉」を自力で掘削するための強力なポンプが、本書によって与えられた。「語り」は力まず平明で、かつ、壺を外さない。「ライプニッツ1702年密着取材」「ライプニッツ・マップ」等の付加も、お値打ちである

    佐々木力氏書評(2002.12.13号 週刊読書人)
    「…私にはとりわけ『発明術と発見術』の章が魅力的であった。四則演算可能な計算機の仕組みを、これほど簡明に解き明かしてくれた哲学者を私は知らない。」  書評再録 >>>

    井狩春男氏(2002.10.12号 週刊ダイヤモンド)
    …ライプニッツの発想や情報処理の妙技に着目し、四つの視座から、ライプニッツ哲学の[考え方の根っこ]にわかりやすく迫る本だ。…哲学すると頭が柔らかくなる。ビジネスマンの読書は、ライプニッツまできてもイイ。75ポイント。

    八雲 出氏書評(WEB「哲学の劇場」)
    …本書は通常の意味での哲学書ではない。ライプニッツがいかにしてあれだけの仕事 を手がけることができたのか? その思考と仕事のスタイルと実践の術に迫ろうとい う書物である。つまり、怪物マシーンが走破した全領域をフォロウするというよりは、怪物マシーンにそれだけの走行を許したエンジンがどのようなものであったかを検分する書物といったらよいだろうか。奥出直人氏の書物のタイトルを借りるならライプニッツの「思考のエンジン」のスペックと性能を解明しよう、というアプローチである。これが滅法おもしろい。  「哲学の劇場」サイト全文へ >>>

    黒崎政男氏書評(2002.11.10 読売新聞)
    バロック時代の天才というべきライプニッツを…“工房に入り込んで制作の場面に立ち会う”形で論じようとする労作である。 書評再録>>>




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