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文字と書の消息 [詳細]

目次著者紹介関連図書書評



文字百景

東アジア漢字文化圏の人々は、古来の漢字を敬いながらも、
近代化に向けて、簡略化や新作文字を試みる。
古紙に重ね書きして、底に潜む文字とにじみあう書があり、
身体を書と同化するパフォーマンス書道も人気を集める。
路地裏の落書き、工事現場の書体、文字アート、書のアウラ……
文字と書が織りなす数々の文化誌をひも解く。


キルヒャーの漢字



■目次

第一章 文字の場所・文字の風景

【文字の場所】
  落書きと痕跡
  文字を書くことと場所への愛
  墨堤、場所の記憶
  江戸から東京へ
  石碑とスカイツリー
  水平の碑
  朽ちる碑、摩滅する文字
  “文字交換都市”西安
  十万年後へのメッセージ
  工事現場の文字「修悦(しゅうえつ)体」

【文字の風景】
  言語景観
  看板を読む
  近代上海の言語景観
    八破画が描く上海/廃墟の文字/二重のパロディ
  乾拓あるいはアーバン・フロッタージュ

【文字と名】
  展覧会と書
    テクストとしての展覧会/書のタイトル/上田桑鳩「愛」

第二章 漢字、東アジアの歴史を映す

【漢字の改良】
  西夏(せいか)文字の過剰
  「擬似漢字」の系譜
  日本の漢字の「改良」
  中国の漢字の「改良」
    台湾の複雑な漢字
  漢字ナショナリズム
  金属活字の書体

【漢字のエキゾティシズム】
  読めない漢字
    道教の文字信仰/漢字らしき文字
  アタナシウス・キルヒャーの漢字
  ヴィクトル・セガレンの『碑』
  セガレンの『碑』の刻印
  ざわめく漢字「雑体書」
  飛翔する文字「飛白」

第三章 古今東西、文字を遊ぶ

【秘密の文字】
  にせの文字
    新しい世界と文字/文字遊び/徐冰のにせ漢字
  秘密の文字・秘密の書写

【消える文字】
  文字と〈手〉と〈メ〉の間
  宙に書く
  「訂正符」と書くこと
    見せながら消す/「乙」字の役割/生々しさの痕跡
  文字を消す
  マジック・メモ
  惜字炉・焚字炉
     文字の民俗‐敬惜字紙/善会と惜字

【文字と遊ぶ】
  仮名の文字遊び
  漢字の文字遊び
  吉祥文字
  文字遊び、言葉遊び、言葉のかたち
  回文の不思議

【文字と詩】
  カリグラム
  新国誠一のコンクリート・ポエトリー
  活字とポエジー 171
  近代短歌と文字
    文字と言葉/非人称の「私」/口語短歌の登場
  速記と書
    口語と速記/〈声〉と速記

第四章 文字が秘める身体性

【五感の文字】
  文字を食べる・呑む
  マンガのオノマトペ
  声と歌と文字
  文字にさわる[木活字]
  文字にさわる[指先で読む]
  文字がたてる音
  文字の美・文字の力
  文字の靈力

【文字のふるまい】
  パフォーマンス書道
  「INK ART 墨の芸術」より
  漢字の呪縛とアート
  内藤絹子「影としての言葉」
  洞窟壁画と文字の予兆

【線と言葉】
  浅野弥衛「描線の詩学」
  ラインズ
  線・建築・ダンス
  線が書く

【性と文字】
  少女たちの文字
  出口なおの文字
  女文字

第五章 文字とメディア

【皮膚と文字】
  入れ墨と文字
    刺青と身体/文字のメディア「身体」/皮膚に書く意味

【書きつけるもの】
  紙の再利用
  紙背文書と無数の「重ね書き」
  字彫りと書のアウラ
  黒板の思想
    黒板の機能/メディアとしての黒板

【書物】
  杉浦康平のブックデザイン
  書物の余白に
  俳諧一枚摺
  〈場所〉の書・現在の言葉

あとがき 


道教の“読めない”漢字 漢字の文字遊び「魁星点斗図」
左:道教の“読めない”漢字/右:頭が「正」、顔が「心」など、漢字の文字遊び



■著者紹介:古賀弘幸(こが・ひろゆき)

1961年福岡生まれ。法政大学文学部哲学科卒業後に書道関係の出版社に勤務し、書や美術の雑誌・書籍の編集制作を手がけた。その後はフリーランス。主な企画・編集に『書の総合事典』(柏書房、2010)などがある。
論文に「訂正符の研究」(『大東書道研究』)ほか。鑑賞入門書『書のひみつ』(朝日出版社)を2017年5月、本書とほぼ同時に刊行。
大東文化大学書道研究所客員研究員。 同研究所が発行する月刊「大東書道」の連載を継続中。
古賀弘幸 公式サイト https://hiroyukikoga.wixsite.com/gorgeanalogue




■関連図書

  • 書のひみつ  古賀弘幸 朝日出版社 2017年5月刊行
  • 図説アジア文字入門  東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所=編 河出書房新社 2005年刊行
  • 漢字の魔力 漢字の国のアリス  佐々木睦  講談社選書メチエ 2012年刊行
  • 江戸文字  日向数夫=編 グラフィック社 2016年刊行
  • コトバ・言葉・ことば  川田順造  青土社 2004年刊行
  • 声の文化と文字の文化  ウォルター・オング 藤原書店 1991年刊行
  • 身体としての書物  今福龍太 東京外国語大学出版会 2009年刊行
  • ラインズ 線の文化史 ティム・インゴルド  左右社
  • 魔法の石板  堀江敏幸 青土社 2003年刊行
  • 遊歩のグラフィスム  平出隆 岩波書店 2007年刊行
  • 都市表象分析I  田中純 INAX出版 2000年刊行
  • スイユ  ジェラール・ジュネット 水声社 2001年刊行

    【工作舎の東洋の心】
  • 文字の靈力 杉浦康平
  • ことたまのかたち 川邊りえこ
  • にほんのかたちをよむ事典  形の文化会=編
  • にほんとニッポン 松岡正剛



  • ■書評

    本の雑誌2018年8月号 円城塔さん
    文字の歴史と広がり
    …文字に関する話題を短く広く集めた本書をきままにめくっていくと、文字の歴史が立ち上がり、現代の広がりが洪水のようにあふれでてくる。

    松田行正さん『デザインの作法 本は明るいおもちゃである』(平凡社刊)
    戸田ツトムさんデザインの『2角形の詩論』(北園克衛)を「カバー・表紙には、濃い色の筋入りクラフト…本文を含めて使っている紙はすべて安物ながら、決して安っぽくはなっていない。これがデザイン力のすごさだ」と絶賛し、そのオマージュ本として『文字と書の消息』(工作舎 佐藤ちひろデザイン)を紹介。

    月刊美術2017年9月号
    …人間が文字を生み出してから、文字と遊び、文字を頼ってきた膨大な歴史を感じさせてくれる。

    芸術新潮2017年8月号
    文字と書と人が織りなす万華鏡を覗く
    …本書は文字が作り出す様々な「言語景観」を自在に探索する。工事現場に2003年に突如現れた「修悦体」なる新書体。道教に伝えられた、誰も読めない原初の文字「天書」。中国・湖南省の村に伝わる、女性だけが読める「女書」……。人は、文字で遊び、文字で呪い、文字を踊らせる。…

    書道界2017年8月号 臼田捷治氏書評
    広やかな目線が掬いあげた書字環境の芳醇な厚み
    …ニューヨークの若者たちの異議申し立てに端を発するグラフィティ(落書き)に始まり、それが法隆寺内部の組木に残された工人による落書きなどへと敷衍(ふえん)されていく。…
     並びない広やかな目線。百科全書的な博引旁証(ぼうしょう)により、表記文化の豊潤な厚みを掬いあげた見事な集成だ。

    2017.6.18〜7.2 山梨日日新聞など地方紙 平野甲賀氏書評
    変化自在、奥深い魅力
    …仕事の依頼が来ると、まずは本のタイトル文字のご面相をじっくり観察する。そして、時に容易ならぬ仮名の存在に気付く。否定も肯定も仮名しだい。著者も指摘しているように、仮名は漢字の尊厳さえもあっさりとひっくり返してしまう。言葉(漢字)のイメージからも自由で、その屈託ない遊戯性に励まされる。
     変化自在な文字という生き物。その奥深い魅力を存分に伝える一冊だ。

    6/18 山梨日日新聞・熊本日日新聞、秋田魁新聞、北日本新聞
    6/25 神奈川新聞、下野新聞、新潟日報、山形新聞、東奥日報、宮崎日日新聞、沖縄タイムス
    7/2 岩手日報、7/9 大分合同新聞、佐賀新聞

    2017.6.15 書道美術新聞
    …『大東書道』誌に約10年にわたり連載中の「文字文字WORLD」から約100回分をベースに、加筆修正を施した一書。古代から現代までの文字、書にまつわる事象、習俗など多岐にわたる視点で論考を展開し、各テーマの関連図書95冊を紹介。






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