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理科系の文学誌[詳細]

かつて、科学と文学は、神話のなかで融合しており、
文明発生以降も占星術や、魔術、寓意文学などのうちに密接な関係を保ってきた。
近代になって、それぞれは分離する傾向をもったが、
宇宙時代にはいって、再びSFのなかで接触をはじめた。
そこで、文学が科学の普遍性をつかって宇宙と人類を描こうとするとき、
科学そのものの奥に、歴史的、地域的な「呪術的な刻印」が残っていることに気づく。
この刻印は、じつは文学の立場からはあまりうまく描写できない。
逆に荒俣氏のように「理科系」の立場から「文学史」をチェックすることによって、
より鮮やかに浮かび上がってくるのだ。
雑誌連載の頃から、私はこのすぐれて斬新な試みを、鮮烈な驚きをもって見守りつづけてきた。

SF作家 小松左京



■目次より

プロローグ 宇宙文学の系譜
    a 文学にとっての宇宙
    b 系譜と連結
    c 新世紀への投影

PART 1 言語の宇宙へ
ケースⅠ 『バベル-17』
   a 善意の〈罠〉が必要な理由について
   b デカルトの凡ミスと言語について
   c 言語の謎についてのSF的事例
   d 完全言語のこわし方
   e 理想言語をもとめる人々の心得
ケースⅡ 『ガリバー旅行記』
   a 柿本人麻呂からスウィフトへ
   b 暗号をめぐる三人の奇妙な関係について
   c 暗号学左派のためのマニフェスト
   d 叛文学としての『ガリバー旅行記』
ケースⅢ 『山椒魚戦争』
   a 言語の秘密について
   b 母音の宇宙的解釈
   c 言語のユートピアへ

PART 2 物質の未来を求めて
ケースⅠ 『結晶世界』
   a 水晶とガラスの決定的な違いについて
   b 柔らかい月と堅い月
   c 非対称の結晶と生命
   d 生命から鉱物への旅
   e クリスタリゼーション
ケースⅡ 『時の凱歌』
   a 光速という名のあこがれ
   b 光はまだ見えるか
   c 光と物質のたわむれ
   d ブリッシュの「光の文学化」
   e 「光あれ!」
ケースⅢ 『エントロピー』
   a 映画仕掛けのオレンジ
   b 思考実験の種あかし
   c 思考実験は美学である
   d 熱力学第二法則の意味
   e エントロピーの物語化

PART3 生命圏科学異聞
ケースⅠ 『エレホン』
   a ダーウィン最後の冗談
   b 進化論に殉じた怪人たち
   c 〈有機体的幸福〉
   d 機械の書
ケースⅡ 『闇の左手』 
   a 誤解されても、死ぬよりは……
   b 進化するのか、しないのか、どっちだ?
   c 生物のふしぎなプログラム
   d 〈生涯×n 倍〉の理論
   e 『闇の左手』
   f 両性具有は〈矛盾〉である
ケースⅢ 『地球の長い午後』
   a 植物の思想
   b きわめて神秘学的なインターリュード
   c あしたは風をはらんで……
   d ティヤール・ド・シャルダンとは何か
   e 〈温室〉あるいは植物と動物の死闘

PART4 二十世紀の眺望
ケースⅠⅠ ロシア=ソヴィエト
    a ロシアはかならずしも影のなかに閉じこもっていなかった
    b 時のざわめき……
    c レーニンが救った西洋と、レーニンに抹殺されたロシア
    d 技師メンニの場合
ケースⅡ イギリス
   a 〈かの忌わしき砦〉をめぐるリング外の死闘
   b 「反ウェルズの系譜」としてのイギリスSF
   c 科学者の生涯と宗教家の倫理
ケースⅢ アメリカ
   a 侵略と革命
   b 〈本土決戦〉
   c アメリカのための利用
   d SFは、かくてアメリカナイズされる
   e 終章のためのエピソード
ケースⅣ 日本
   a ソラマメと地球
   b ボキャブラリーの本質
   c 物理学への葬送曲
   d 日本素朴派のための

PART5 函数関係としてのSF
ケースⅠ 作品〈非A〉
   a 言語障害白書
   b 悲しみと忘れな草
   c 言語の夢
   d 『神狩り』との同調
ケースⅡ 生物学戦争
   a 支那のふしぎな百科辞典
   b ACCとCAAの問題
   c 植物もまたマルクス主義に共鳴することの実例について
   d ぼくの村も戦場だった
   e キリンの首とバーナード・ショー
ケースⅢ 文学建築論
   a アフリカ原住民がウォークマンをつけたら、たぶん発狂することについての、一般的理由
   b 文学と建築とがイコールでつながっていた時代のこと
   c 黄金分割の美学
   d 定型詩──ミルトンの場合
   e 文学における数と形

エピローグ 高い城の男、あるいは東西の融合

   a この世が精神物質からできあがっていることの発見
   b 西と東の合う町で
   c アメリカでの事情
   d 高い城の男




■著者紹介:荒俣宏 Hiroshi Aramata

1947年7月17日生れ、蟹座。東京生まれ、東京育ち。少年時代は、休みのたびに三浦半島まで魚の採集に出かけていた。中学生のころより幻想文学をつぎつぎに読破。以来「本のムシ」になる。高校では渋澤龍彦とパラケルススとアンブローズ・ビアスに耽溺。日魯漁業コンピュータ・ルームに就職後、数か月遅れて慶應義塾大学法学部を卒業。サラリーマン時代より英米幻想文学の訳出紹介をはじめ、退社と相前後して、文学から科学へとイマジネーションの触手を伸ばし、ナチュラル・ヒストリーに「幻想」を渉猟。
 神秘学、博物学、幻想科学、産業考古学、路上観察学、図像学、小説など幅広いフィールドで活躍。現代文明の「忘れもの」に光をあて続けてきた。図版図書コレクターとして海外にも知られる一方、小説『帝都物語』では、東京論としても評価をえた。著作は『別世界通信』『大博物学時代』『想像力博物館』『本読みまぼろし堂目録』をはじめ、約200点を超える。



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