鳥たちの舞うとき[詳細]
緊 急 追 悼 出 版!
市民科学者の最後のメッセージ
在野の科学者の立場で反原発運動をリードしてきた高木仁三郎氏が、2000年10月8日逝かれた。9月にホスピスに入院する前、
小社に原稿を託し出版準備を進めた矢先だった。
宮澤賢治を愛する著者の願いが込められた寓話。
■
深い森と清流に恵まれたG県天楽谷で、ダム工事車の不審な事故があいついだ。
地元の利権をめぐる対立、政争を背景に人とカラスの報復合戦がくりひろげられ、
天楽地区の長(おさ)が逮捕・起訴される。
肺ガンにおかされ余命半年を宣告された草野浩平は、裁判の支援を頼まれ、
いつしか天楽谷の人々や森の鳥たちと深くかかわってゆく……。
■目次より |
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第2章 誘いこまれる
第3章 アオとの出会い
第4章 天楽平
第5章 長
第6章 告白
第7章 歯車がまわる
第8章 裁判
第9章 長の死
第10章 鳥たちの舞うとき
第11章 エピローグ
■あとがきより |
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◎
「小説を書きたいというのは、長年の仁さんの夢でした。(略)自分のメッセージを次の世代の人に少しでも伝えたいという思いが強かったようで、具合が悪ければ悪いほどこの作品に集中して、痛みや息苦しさを克服しようとしていたようです。
仁さんはいつも「〈しかたない〉や〈あきらめ〉からは何もうまれてこない、あきらめずにやってみなきゃ。人々の心のなかに希望の種をまき、いっしょに助け合いながら育てていこう」というのが口癖でした。原子力時代の終焉を見とどけられなかったのは、心残りだったでしょうが、これからの社会をどのようにしたいのかは、これから生きていく人ひとりひとりが考えて実現していくことでしょう。」
──高木(中田)久仁子(あとがきより)
■関連図書(表示価格は税別) |
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[工作舎のエコロジー図書]
■関連情報 |
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●2011年 福知山市民演劇「鳥たちの舞うとき」舞台写真
照明を担当された四方正道さんがブログで公開されたものから、一部を転載させていただきました。その他たくさんの写真も紹介されている四方さんのブログはこちら。舞台裏の話も興味深いです。撮影:四方正道
●福知山市民演劇 観賞レポート
高木仁三郎さんの遺作『鳥たちの舞うとき』を原作にした福知山市民演劇。2010年12月の公演に続き、2011年2/5(土)・6(日)に2回めの公演が迫りました。この舞台化は、元近畿大学舞台芸術専攻教授の菊川徳之助さんによる脚本・演出。1/27発行の「高木学校通信」では12月の1回目の公演がレポートされています。高木久仁子さん
…原作がどのように表現されるか一抹の不安もありましたが、プロではない市民が演じると聞き興味がわきました。…思った以上の仕上がりにびっくりしました。仁さんが伝えたかったメッセージが多くの方々へ伝えられたことをとてもうれしく思います。…
奥村晶子さん
福知山市でなぜ「鳥たちの舞うとき」を取り上げたのか。戯曲の題材はあまたあるというのに、あえて脚本を起こすところから始めるという難題に挑む理由は何だろう。その応えを知りたくて、横浜から遠く福知山まで出かけた。…市民会館のホールは熱気に溢れていた。なにしろ町を挙げての2年にも及ぶ取り組みの集大成である。“菊川”「鳥たちの舞い」に活字では得られないパワーを感じた。稽古一日一日の感動の全てが舞台で表現されるから、観客もその嵐に呑み込まれる。劇の中で問われる共生の理念は、あたかも二重写しのように舞台と客席の共生を生み出す。“市民参加型人権劇”と謳われているが、観客までも参加しての大成功だと感じた。…高木仁三郎さん没後10年のこの年に、この地で演じる人がいる。これが最初の“なぜ”の答かもしれない。‥
●2010.12.11-12/2011.2.5-6 福知山市民演劇に
市民科学者・高木仁三郎さんの遺作『鳥たちの舞うとき』が、福知山市民演劇として上演されます。公演は、福知山市民会館で2010.12.11(土)12(日)、夜久野ふれあいプラザホールで2011.2.5(土)6(日)の計4回です。お問い合わせは、事務局 福知山市役所人権推進室内 TEL 0773-24-7022まで。詳しくはこちら
■書評ほか |
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●2011.5.20 ブログ「里山のフクロウ」
「市民科学者・故高木仁三郎さんの遺言」として、本書の主人公・草野浩平すなわち、高木さんの反原発論旨を明快にまとめてくださいました。
この小説で唯一、原発について語られるのは、草野浩平が原告側証人として、宮城県の漁村にあるO原発の認可取り消し裁判で、総論部分を証言する場面だけです。論旨は、次のとおりです。
1.ひとつの原発の建設は、その他の選択肢をすべて圧殺してしまう。
(1)漁民の漁業権や、他の手段によって生活する可能性をつぶしてしまう。
(2)巨大資本によって地域経済が支配される。
(3)電力産業が基幹となり、全エネルギーが電力に支配される、巨大権力集中型のエネルギー社会システムを生み出す。
2.人間と自然の関係も一方的になり、人間がなんの権利もないのに、動物や植物に対して絶大な危害をおよぼしていく。
(1)人間の設けた「許容量」は、「海に棲む魚たちや森に棲む鳥たちの了解をとったものではない」。
(2)原発のような巨大システムは、「人権だけでなく他の生物の生きる権利を圧殺する度合いが極限的である」。
最後に、……「人間と他の生物が共生すべき21世紀にむかっては、そういう人間の側の一方的な押しつけになる技術を減らしていくのが、われわれのなすべきことではないか、人間は自分の開発した巨大技術で自然界を支配する権利など、宇宙と自然界全体の名においてないのではないか」。
小説『鳥たちの舞うとき』の全編にわたり、通奏低音のように奏でられているのが、この「人間と他の生物との共生」という思想です。テーマや舞台が、原発であれダムであれ、そのことが変わることはありません。 全文は「里山のフクロウ」へ。
●BIO CITY 2005 no.30(2005.2.15刊行)
八ッ場ダムと高木仁三郎
…2000年に亡くなった市民学者、高木仁三郎氏の絶筆、『鳥たちの舞うとき』は、この八ッ場ダムをモデルにした小説である。…ダムも原発も命を滅ぼす方向にあると考えていた高木さんにとって、群馬県の戦後政治の象徴的存在であり続けた八ッ場ダムは無関心ではいられない存在だった。レクイエムといえる最後の作品の舞台に八ッ場を選んだのは、脱ダムから脱原発につながる〈いのちの再生〉を後世へのメッセージとして残したかったからではないだろうか…。
小説の舞台・八ッ場ダムは今
高木久仁子さんの「八ッ場ダム」現地レポート>>>
●2001.6.17 河北新報「ほんの400字評」
…政争の道具や一握りの自己中心主義者のために、多くの住民が犠牲となるばかりか、森や川、鳥たちを含めた大自然を破壊してまでも強行する「開発」とは、一体何なのだろう?末期がんだった著者が最後まで訴え続けた自然への畏敬の念は、深く人々の心に染み入り、必ずや世代を超えて引き継がれると確信するものである…。
●科学2001.6月号 鎌田慧氏、高木仁三郎氏追悼
いままで論理的な文章を書きつづけてきた高木さんは、発想を思い切り飛躍させることによって、未来のロマンを描きたかったようだ。
●BIOCITY 20号
担当編集者ノート[高木さん最後の「生きられた時間」を併走する]
●毎日ライフ 2001.4月号
住民と鳥たちが同化して、共生をうたいあげていく本書の世界は、魂の純化を誘う。
●建築ジャーナル 2001.3月号
「ダム工事を推進する側の醜い姿を遠景に、鳥とモーツアルトと人間の心温まる交情の物語、美の歓喜のメルヘンといっていい…。
●2001.3.25 ASAHI EVENIG NEWS BOOKS
「A nuclear scientist decides to ally himself with the birds」との見出しで、朝日の英字新聞に大きく書評掲載。
●月刊みすず 2001年1月号「2000年読書アンケート」
金森修氏(科学史)「この優れた科学者が最後に虚構という形で渾身のメッセージを残したという事実がわれわれの心を打つ」、渡辺政隆氏(科学史・進化生物学)「この本を世に送りだした人々の情熱と執念にも脱帽」、宮内泰介氏(地域社会学)「最期のメッセージというより最期の遊び、と私は読んだ」。
●2001.2.10 女のしんぶん書評
…房総半島の海近い山の、上空高くトンビがゆったりと舞う姿は私にもなつかしいものです。「(本書を口述した)かまねこ庵」の二階の窓から、きっと見られたことでしょう。そしてあのように大空高く、遠く飛びたいとどんなにか思われたことでしょう。この本のなかで、トンビのアオがホスピスに草野浩平を訪ねるように、青森や能登や全国各地の原発にある町や村の自然、たくさんの生きものたち、そこに生きる人々を訪ね、言い残したことを伝えたい、語りあいたいとどんなに熱く思われたでしょう…。
●週刊ダイヤモンド 2001.2.7号「新刊フラッシュ」
モーツアルトの里、天楽谷を舞台に描く自然と生物の共存。
●2001.2.4 産経新聞
自然との共存をテーマにしたこの幻想的な小説は、高木さんの遺作となった。
●毎日新聞一面三八広告を出しました。
名古屋以東は2月3日(土)、西日本は2月5日(月)掲載。
●2001.2.2 東京新聞夕刊 鎌田 慧氏「ノンフィクション評判記」
人間は自分の開発した巨大技術で自然界を支配する権利など、宇宙と自然界全体の名においてないのではないか」技術者としてばかりか、人間として、自然にたいする反省によって書かれた、著者の遺言でもある。
●つゆくさ通信 45号(2001.1.20刊/脱原発大分ネットワーク)、松下竜一氏書評
…この光景(クライマックスの鳥たちの舞い)を夢見るために、本書は書かれたのだろう。モーツアルトを愛し宮沢賢治を愛した氏は、鳴り響く音と鳥たちに包み込まれて、自らをこのように昇天させようとしたのだろう。「小説としての出来は、あまり問わないでほしいな」という、高木仁三郎のはにかんだ照れ笑いが見える気がする。そしてわれわれは、原発を閉じられないままに21世紀を迎えている。
●週刊宝石 2001.1.11-18号「21世紀の幕開けに読みたい極私的一冊」に佐高 信氏推薦
胸中に静かな泉をたたえた科学者の小説
●2001.1.1 中外日報「こころに響く言葉」岡部伊都子氏
原子力、核汚染、宇宙破壊を悲しみ、原初に還りたい私。鳥たちの舞う意志に学びます。「鳥たちの権利」に気づいて同志となった声。「あきらめずにやってみなきゃ」
●エコノミスト 2000.12.26号「新刊早読み」
宮澤賢治を愛した著者ならではの優しさが随所にあふれる。
●暮しと健康 2001.3月号 佐藤莫河氏書評
がんの末期、房総の“病窓”から空を舞うトンビを眺めながらこの小説を一気に書下ろし「一個人の生死を超えて、森全体の命のなかで自分の死を生かせるはず」と来るべき核なき時代へ遺言を残した。
●2001.1.13 福島民報および1.21 河北新報で話題の本として大きく紹介。
●ラピタ 2001.2月号書評
この実録風の物語をファンタジック仕立てにしているのは、思慮深い鳥たちが主要人物として登場するからであろう。…著者は、人間同様に鳥たちの生存権も認めるべきであることを、暗に強く示唆しているのだ。
●2001.1.25 ふぇみん
文中たえずモーツァルトの曲が流れ、クライマックスの「鳥の舞」では、鳥たちと人と自然が歓喜に包まれる。
●2001.1.13 NHK「週刊ブックレビュー」佐高信氏推薦
NHK衛星第2番組「週刊ブックレビュー」メインコーナー[いま、この一冊がおもしろい]に佐高信氏が推薦してくださいました。合評では他の本の推薦者、評論家の縄田一男氏、スポーツライターの長田渚左氏、司会の木野花氏も絶賛。特に長田渚左氏は「この本を紹介してくださった佐高さんにも、編集者にも出版社にも感謝したい」と。(こちらこそ、ありがとうございます)
●週刊金曜日 2001.1.12号「金曜日の本箱」でも紹介。
●通販生活 2001年春号「今月のおすすめ本」 佐高信書評
詩情あふれた高木の小説『鳥たちの舞うとき』を読みながら、私は涙が止まらなかった。ダム建設反対運動をテーマにしているのに、いや、むしろ、それゆえにか、高木は敢えてその主人公をモーツァルトの好きな音楽家にし、高木と思しき人間も登場させている…。
●2001.1.7 熊本日日新聞 宮本誠一氏書評
作中で突き当たる「いつ死ぬかという問いの次元を超えた何ものか」は、宮沢賢治を愛読した作者らしい、自分自身の魂と向き合うことでしか開けない、より普遍的な場所からのメッセージを含んでいる。高木仁三郎は確かに、賢治の残した、天に上がり燃え尽きた鳥、“よだかの星”になったのだと思う。(小規模作業所「夢屋」代表)
●2001.1.7 日経新聞
人間と自然の共生を願った著者の思いが色濃くにじんでいる。
●「落合恵子のブック・クラブ 12月」採用(2000.12.1号 ウーマンズ・アイ) 高木さんの感受性の深さを伝えてくれる実に清々しいノンフィクションである。
●2000.12.27 読売新聞夕刊 文芸欄で情報学者・西垣通氏の初の小説「刺客(テロリスト)の青い花」に関する記事の中で、「学者が書いたことに意味がある小説」の同様の例に、『鳥たちの舞うとき』も紹介。文学の新しい流れを示唆しています。
●2000.12.27 聖教新聞 青木やよひ氏「印象の深かった3冊」に
彼の果敢な脱原発の戦いが、イデオロギーではなく、豊かな感性とやさしさに支えられていたことが更めて心にしみる。(評論家)
●2000.12.24 奈良新聞 子供時代、文学の道に進むことを夢見ていたという科学者の最後の処女小説は余韻豊かな大人のメルヘンだった。
●「ひとりから 2000.12月 第8号」(編集室ふたりから)書評。 死の間ぎわまで力をふりしぼって書き遺された作品は、何と美しく、何と熱く、自然と人間のまじわりの深さと、自然破壊を前にした怒りの一体性を描き上げていることか。作中、モーツアルトの練り絹のような音色が高く低くひびきつづけ、高木さんのたましいにふれる思いに切なさがきわまる。
●2000.12.15付 週刊読書人 金森 修氏書評
一つの願いの顕わな表出
美しい本に出会った。というより、一つの本を介して一つの美しい人生を改めて感じることができた。
●2000.12.6 筑紫哲也 NEWS23 特集「高木仁三郎という生き方」
『鳥たちの舞うとき』が口述テープとともに紹介されました。
また、九州大学教授の吉岡 斉氏も「あの美しい文学を読みましたか?」と語ってくださいました。
●2000.12.3 毎日新聞 中村桂子氏書評
「市民科学者が残した美しい小説」書評再録
●2000.12.2 朝日新聞 天声人語
高木仁三郎さんの追悼が綴られ、『市民科学者として生きる』(岩波新書)とともに、本書が紹介されました。
…きのう閉幕した国会で「原発立地地域振興法」が成立した。高木さんが病床で口述した小説『鳥たちの舞うとき』(工作舎)の一節にある。<ひとつの原発の建設は、その他のすべてを圧殺してしまう。巨大な資本が投入され、地域経済も支配される。巨大権力集中型のエネルギー社会を否応なしに生み出していく>。
●朝日新聞一面三八広告を出しました。
関東以北は11月26日(日)、名古屋以西は11月28日(火)の掲載。
●生活クラブ「本の花束」2000.12月号 一面特集
「鳥たちの翼にのって、〈希望〉は手渡された…
市民科学者・高木仁三郎がのこした人と自然との共生へのメッセージ」
評者は宮澤賢治イーハトーブ館前館長、斎藤文一氏。
「高木仁三郎さんは生前、「小説を書きたい」と語っていた。この『鳥たちの舞うとき』がガン治療中の病床でテープに収録され作品として遺されたと知って、ああ、高木さんの長年の思いがかなったのだなあと胸があつくなった」。続きは全文再録へ。
●2000.11.19 毎日新聞 群馬版
自然への愛着 小説に 闘病中に口述
故郷・群馬の自然とダム建設をモチーフにした初の小説を執筆していた。…
自然の摂理を教えてくれた故郷への愛着が小説執筆の背景となっている。
●週刊ダイヤモンド 2000.11.4号 「井狩春男のこれは売れる!」
フツーに売れば一万部を超えることが絶対にない! とわかっているのを、読者対象を変えたり(『葉っぱのフレディ』をビジネスマンにすすめたように)、その本の情報を読者に身近にするなどして、一人でも多くに読者に手渡したいと思う本がときどきある。この本がそうだ。
●2000.10.28 読売新聞 高木仁三郎氏追悼記事
「在野」貫いた市民科学者
「ホスピスのベッドで意識のある時間は仕事を続けた。出版社の編集者にテープを渡し、以前から温めていた小説の口述筆記に臨んでいた。」
書名が記されていませんが、これは『鳥たちの舞うとき』のことです。
●2000.10.26 高木仁三郎氏追悼番組放送
「あきらめから希望へ——市民科学者・高木仁三郎さんが伝えたもの」
NHK教育テレビ(ETV2000)
出演:久米三四郎・鮎川ゆりか・佐高信
番組内で佐高信氏が『鳥たちの舞うとき』に触れ、「高木氏とは心の中の泉をもっているという点で共振する」と語られました。