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気まぐれ古書店紀行
岡崎武志
2006.2月刊行
『気まぐれ古書店紀行』は岡崎武志さんというキャラクターを造本の上からも伝えるべく、いろいろな工夫をした。

◇カバー装画とタイトル・レタリングは、岡崎さんと共に、荻窪・西荻窪・吉祥寺の古書店案内フリーペーパー「おに吉」を制作している版画家、石丸澄子さんが担当。
◇帯をとって、表紙カバーを見ると、「書店で岡崎武志を見かけた人は声をかけて下さい。ここにサインとイラストを入れます」との自筆のメッセージ。本書は本邦初、表紙カバーが著者のサイン・スペースになっている。
◇帯と表紙カバーの袖の部分には、岡崎さん作画の4コマ漫画。帯から表紙カバーへと続けて読むと8コマ漫画としても完結。
◇本文中には、岡崎さん自筆の書き込み入り(印刷で入れているので、本書は古本にはあらず!)。

本との出会いは著者との出会いでもある。この本を手にした人が、少しでも岡崎武志さんの愛すべきキャラクターを感じてもらえればうれしい。一方、岡崎さんとの出会いによって、本との新たな出会いも生まれた。ここではそのいくつかを紹介しよう。(編集担当・石原剛一郎)




【出会いを導いた本】

夜の魂 >>>
チェット・レイモ(工作舎)

はじめてお会いしたとき、岡崎さんはハトロン紙にくるんだ本書を鞄からそっと出して言った。「これを作られた方でしょ。この本、とても好きなんですよ」。うーん、これには参った! 天文・物理学者による天文エッセイ集。工作舎の「プラネタリー・クラシクス」シリーズの中でも人気の一冊で、増刷もした。しかし、著者は無名だし、木版画を使った装丁はとてもいいと思うけれど、阿鼻叫喚の書店空間の中ではひっそりと地味な印象。そんな本をしっかりとチェックして、しかも大切にカバーまでしてくれている! 『気まぐれ古書店紀行』の企画実現をこのとき固く心に誓ったのだった。『夜の魂』書籍解説へ>>>
【均一台の愉しみ1】

講談社現代新書・新書西洋史ほか
(講談社現代新書)

最近、古本屋の均一台で古い講談社現代新書を見かけると、まずカバーをはがして、カバー裏をチェックするようにしている。実は300番代の何冊かのカバー裏には、その本のテーマに合わせたダイアグラムや図版構成が印刷されているのだ。仕掛け人はもちろん、杉浦康平さん。結局、誰も気づかないということで、長くは続かなかったらしい。そんな話をしたら、さすが岡崎さん、さっそく何冊か釣り上げてきた。現在、判明しているのは「新書西洋史」のシリーズで、たとえば前川貞次郎『絶対王政の時代』のカバー裏には「眼の展開──眼球はいかにして電波をみるようになったか」、豊田堯『市民革命の時代』のカバー裏には「機械の増幅──機械はいかにして動きはじめたか」などなど。ダイアグラム制作者のクレジットには、「松岡正剛+戸田つとむ……」の名が!
【均一台の愉しみ2】

マイブック
(新潮文庫)

いわゆる「白い本」で、日記として使えるようになっているのだが、岡崎さん曰く、ブックオフの文庫100円コーナーでこの本が見つかると、10冊のうち1冊には書き込みがあるのだとか。岡崎さんが以前、拾い上げたのはOLさんが日記として使っていたもので、「しょーもない話」があれこれ書き込んであったという。まあ、ブログ全盛のことを考えれば、個人の日常の赤裸々な記録など珍しくもないが、書き込みというのはやっぱりナマナマしく、ちょっとそそられる。しかも、大貫卓也さんデザインのこの文庫、なんとなく書き込みたくなるような魅力がある。なんか変なことを書いて、ブックオフに流しますか。めぐりめぐって岡崎さんが買ったりして……。
【取材してもらいたかった人】

鯨の目・成田三樹夫遺稿句集
(無明舎出版)

私のフェイヴァリット映画のひとつ『女囚さそり・けもの部屋』。冒頭、刑事役の成田三樹夫は、地下鉄で連行中のさそりにドアが閉まる瞬間に逃げ出され、手錠をつけたまま右腕をドアにはさまれる。さそりはさらにその右腕を斬り落として逃走、もんどり打って倒れる成田。失われた右腕の仇とばかり、成田はさそり逮捕への執念の鬼と化す……。こわもてのイメージが強い成田だが、実はとんでもない読者家だったことをこの本で知った。遺稿の中の読書メモに出てくる本をごくごく一部挙げると、『断層図鑑』戸田ツトム(北宋社)、『これはパイプではない』ミシェル・フーコー(哲学書房)、『風流の図像誌』郡司正勝(三省堂)、『解剖学者のノート』F・G=クルッシ(早川書房)、『ライプニッツの普遍計画』E・J・エイトン(工作舎)などなど。『断層図鑑』を手にした成田三樹夫なんて絵になるなあ。存命中に岡崎さんにインタビューしていただきたかった一人。
【炎のライバル】

関西赤貧古本道
山本善行(新潮新書)

岡崎さんの盟友にして炎のライバル。この本では、永田耕衣の猛烈な書き込みがある文庫本を入手したくだりが印象深く、写真入りで紹介されているのを見て、今回の『気まぐれ古書店紀行』の仕掛けを決意したしだい。山本さんと岡崎さんの関西弁での掛け合いを目の当たりにしたことはないのだが、おそらく本を一冊作る価値はあると思う。タイトルは『古本漫才』。井上ひさしの「てんぷくトリオ」のコント集のイメージで、二人の掛け合いを収録する。実在する古本屋を舞台に各章を構成してもいいし、特定の作家、本を題材にしてもいい。「エンタの神様」出演を目指して、岡崎さん、山本さん、どうでっか?




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