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歳月の鉛

四方田犬彦、書き下ろしエッセイ

四方田犬彦氏の書き下ろしエッセイが5月に刊行する。タイトルは『歳月の鉛』。東京大学に入学した1972年から、修士論文を執筆した1979年までの自伝的内容だ。しかし、この70年代という時代は、(68年を頂点とする反体制運動の)上機嫌な破壊の季節の後に来た「鉛のように重く意気消沈した歳月」だった。そして四方田氏自身も、内省的な時期だったという。

『ハイスクール1968』の延長にあるこの回想に派手な活劇を期待されている読者は、おそらく失望とともに本書を投げ出してしまうことだろう。1970年代のわたしを特徴づけているのは不活性と停滞であった。…その当時のわたしはニグレド、つまり鉛のように暗くて重い卑金属が、微睡(まどろ)みのなかでゆっくりと変化に向かって立ち上がろうとする時期に相当していたような気がする。(序文より)

『先生とわたし』の由良君美はもちろん、丸山圭三郎や阿部良雄などの講義、宗教学科のゼミを同じくした中沢新一、島田裕巳、さらに松浦寿輝、竹下節子らとつくった映画同人誌など、エピソード豊かに進行する。読書メモや引用、詩の断片、夢の記録などを綴ったノオトが章の間に挟まれ、思索の軌跡が浮かび上がる。

[目次]


第1章 荒地のキャンパス
第2章 内ゲバの記憶
第3章 ノオト1972-1974
第4章 宗教学科に進む
第5章 恣意性と円環
第6章 ノオト1974-76
第7章 駒場に戻る
第8章 映画への情熱
第9章 ノオト1976-78
第10章 空想旅行の探求






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