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9月の新刊『ヘッケルと進化の夢』


ヘッケルと進化の夢


9月の新刊は科学思想史家・佐藤恵子著『ヘッケルと進化の夢―一元論、エコロジー、系統樹』。19世紀末のドイツで活躍した進化論者、エルンスト・ヘッケルの生涯、思想、その背景と文化・社会への影響をまとめたものとしては、本邦では初めての試みです。

ヘッケルとは、
ダーウィン進化論に基づく独自の「一元論」哲学による世界観を打ちたてた。多くの著作を残し、『生命の不可思議』や『宇宙の謎』は、戦前の日本でもベストセラーとなった。
「個体発生は系統発生を繰り返す」という生物発生原則や、エコロジーの言葉と概念は、ヘッケルが創始したものであり、生物進化を樹木の枝分かれとして描出した系統樹も有名である。ピテカントロプスなどのミッシングリンクのイメージも、ヘッケルの想像力によるものである。また、深海の微小な生物たちは、彼によって美しい図版となり、工芸・建築分野にも大きな影響を与えた。
さらに、教会支配から脱却した世界を創出するため、一元論者同盟を創立し、社会改革運動にも着手しようとした。一方で、その優生学的な見方が非難され、のちのナチズムとの関連が指摘されることもある。……本書は、毀誉褒貶に満ちたその多彩な断片をつなぎ合わせ、「ヘッケルという織物」の全体像を、可能なかぎり具体的に再現する試みでもある。



■目次より

第一部 生涯と一元論の構想

第1章 ヘッケルの生涯──進化論との遭遇および一元論への開眼
第2章 一元論と『有機体の一般形態学』
第3章 [資料篇]『有機体の一般形態学』の章立てと概要

ヘッケル図像抄

第二部 一元論のもたらしたもの──文化・社会への影響

第1章 魅惑的な生物発生原則
第2章 ミッシングリンクの夢──ガストレア、モネラ、ピテカントロプス
第3章 科学の自由について
第4章 ドイツ一元論者同盟と教会離脱運動
第5章 ヘッケルの人種主義と優生思想
第6章 エコロジーの誕生
第7章 プランクトン論争
第8章 自然の芸術形態
第9章 結晶の魂──結晶、ゼーレ、実体則


■著者紹介:佐藤恵子(さとう・けいこ)

1956年、東京生まれ。1978年、東京大学薬学部卒業、1989年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程 満期退学。現職、東海大学総合教育センター教授。専門領域は、科学思想史。
ヘッケル関連以外の論文に「発生生物学の黎明:ヴィルヘルム・ルー試論」(金森修編『科学思想史』勁草書房2010)など、翻訳書として、クララ・ピント‐コレイア『イヴの卵──卵子と精子と前成説』(白揚社2003)、ヤン・ピーパー『迷宮』(工作舎 1996)[共訳]などがある。





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