2月の新刊 倉谷滋著『ゴジラ幻論』
2月の新刊は、倉谷滋著『ゴジラ幻論―日本産怪獣類の一般と個別の博物誌』。
あの映画「シン・ゴジラ」を進化発生学の視点から論じた書。映画で人気を博した女性科学者・尾頭ヒロミのレポート、1954年初代「ゴジラ」の山根恭平博士の孫による講演記録など、最新の科学的知見と虚構が入り交じる。さらにはモスラやアンギラスなど特撮映画の怪獣も次々に登場。
倉谷滋氏は理化学研究所主任研究員であり、進化発生学で世界的に注目を集める第一線の研究者。大著『分節幻想』(864頁、本体9000円)は11月末に刊行するやいなや、毎日新聞書評にて養老孟司先生に「生物と形態を考えたい人の必読書。…さらなる健筆を期待したい」と言わしめたほど。 その倉谷氏の怪獣マニアぶりを発揮した本書は、「ゴジラは恐竜よりも哺乳類」など、専門家ならでは解説がなされ読み応えは十分。ぜひご堪能ください。
詳細な目次は以下をご覧ください。発売は2月下旬予定。四六判上製、298頁、本体2000円+税です。
■目次
はじめに第一章 「ゴジラ生物学会特別紀要」より
巨大不明生物の起源
【基調講演】「シン・ゴジラ」に確認された新事象をめぐって 第一部 山根恭太郎
ゴジラの分類学的位置づけ/爬虫類とは?
[補論]怪獣のリアル―現実と非現実の狭間
【基調講演】「シン・ゴジラ」に確認された新事象をめぐって 第二部 山根恭太郎
ゴジラの進化と発生/尻尾の謎
[補論]リアリティのレベルに関する問題
【緊急レポート】巨大不明生物に関する形態発生学的アプローチ 尾頭ヒロミ
緒言/頭頸部の解剖所見/皮膚と附属構造物についての比較形態学的考察/
ゴジラの尾と背鰭に関する諸問題、ならびに気嚢の存在が疑われることについて/
系統的位置についての考察と結論/分子遺伝学的背景/個体発生上の変化/
人為的発生プログラムの構築に関する仮説/結語
[補論]キングギドラのポジション
【ゴジラ問題調査委員会中間報告書】牧悟郎博士の日記
本提出書類について/翻訳文/付記
第二章 個別の博物誌
ゴジラ生態圏をめぐる四つの報告書
四足歩行怪獣アンギラスの形態学的特徴とその進化的起源 山根恭平
概要/現生アンギラスと化石アンキロサウルス類の比較/複数の脳?
[補論]キングギドラは何頭か?
モスラの昆虫形態学と分類学について 杉本是也
成虫モスラと翅の紋様/モスラの解剖学、およびその変態と習性/幼虫の形態学/
繭/バトラについて
[補論]モスラの魅力
怪獣バランと秘境の蝶 杉本是也
一般的特徴/滑空性の爬虫類/秘境の蝶
[補論]歌舞伎としての怪獣映画
ラドンとメガヌロン 柏木久一郎
翼竜とラドン/プテラノドン/ラドンに関する形態学的考察/メガヌロン
[補論]サービス満点の怪獣映画
第三章 怪獣多様化の時代をめぐる随想
一九六〇年代の「ワンダフル・ライフ」
怪獣の住む世界 1964-1966特撮大好きオヤジのぼやき
ゴジラの変貌―「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」考
怪獣残酷物語―私を戦慄させた怪獣たち
映画に見る生物学的イメージ
モンスターと自然観
昭和人間ドラマの魅力
SFのフィルム・ノワール
異界からの侵犯
Qの終焉
索引
参考図書・文献
[付録]私の怪獣映画ベスト(邦画のみ)
おわりに