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大博物学者ビュフォン[詳細]





■目次より

カラー口絵 ビュフォン頌

    野心に満ちた知的ブルジョワ

第1章 ルクレール家の社会的地位の上昇と個人的野心
    家庭環境と青少年期/修養時代

第2章 アカデミー会員になった豪農

    アカデミー入会への道/『博物誌』への緩慢な歩み

第3章 アカデミーから王立植物園へ
    規則正しい生活/数学との訣別/林学と木材の強度に関する研究/イギリスと自由思想

第4章 王立植物園園長
    予期せぬ任命/王立植物園/科学アカデミーでの最後の諸論文/引力の法則についての論争

  Ⅱ 新たな博物誌

第5章 『博物誌』の準備

    『博物誌』の背景/観察学者と分類学者/もう一つの野心/予備研究/最初の3巻の出版

第6章 新しい方法論
    「自然に秩序は存在するのか」/生物学への一歩

第7章 地球の記述と地球の理論
 
   新たな学問/真に自然な博物誌を目指して/地球の発見/理論と問題

第8章 惑星の形成について
    自然的原因についての科学/モデルから歴史へ

第9章 発生から生殖へ
    動物の発生/いくつかの仮説/生殖理論

第10章 生殖から生命の問題へ
    科学哲学の問題/解剖学・発生学上の問題/顕微鏡観察/生命の諸段階

第11章 「人間の博物誌」
    「人間の本性について」

第12章 人類学の誕生
    人生の諸段階/ヒトという種の多様性

第13章 顰蹙をかった高名な著者


  
   長い忍耐を要した『博物誌』

第14章 まじめな学究生活
    地方での結婚/アカデミー・フランセーズ/王立資料館の充実/栄光の絶頂期

第15章 自然と人間
    「自然のエコノミー」における人間/人間と動物/「天の臣下」にして「地の王者」たる人間

第16章 動物から人間へ
    「ホモ・デュプレクス」/人間とその霊魂について/社会生活が人間をつくる

第17章 同定、命名、記載

    同定/命名/記載

第18章 生物の同一性と多様性
    「存在しうるすべてのものが存在している」/「原産地」の研究/馴化と退化

第19章 種、属、科……新たな分類を目指して
    さまざまな分類批判/種の定義/属と科/自然の秩序……新たな分類へ

第20章 変化するビュフォン評



  Ⅳ 歴史を視野に入れて

第21章 不屈のエネルギー

    製鉄所/伯爵ビュフォン/王立植物園の大工事/小ビュフォンの不幸/最後の愛……ネッケル夫人

第22章 「熱情的な素質をもった幅広い視野」

    『博物誌』の協力者/「精神的算術試論」/『鉱物の博物誌』

第23章 歴史と自然
    地球の誕生/冷却の初期/生命の誕生とその歴史/人間の歴史/『自然の諸時期』に対する批評




■著者紹介:ジャック・ロジェ Jacques Roger 1920-1990

パリ出身。ソルボンヌ大学で古典文学を学び、高等学校の教諭職、国立科学研究センター研究員、ポワチエ大学教授、トゥール大学教授などを経て、70年からは母校ソルボンヌ大学教授(科学史専攻)。78年より総合インターナショナル・センター研究所長、高等社会科学研究学院研究部長、アレクサンドル・コイレ研究所長なども兼任し、S・J・グールドやE・マイアをはじめとする第一線の科学者間の交流や学際的研究を推進。また科学史・哲学史関係の各国の学術雑誌の編集委員としても活躍。教育功労勲章オフィシエ章(67年)、レジオンドヌール勲章シュヴァリエ章(67年)受章。ジュネーヴ大学名誉博士。
『自然の諸時期・校訂版』(1962)、『もう一人のビュフォン』(1977・共著)などビュフォンをめぐる著作のほかに、『18世紀フランス思想における生命の科学』(1963)などがある。




■関連図書

ビュフォンの博物誌  全図版1123点3000余種をカラー復刻 12000円
エラズマス・ダーウィン  チャールズの祖父の破天荒な生涯 6500円
女性を弄ぶ博物学  リンネはなぜ乳房にこだわったのか?  3200円
ダーウィン  世界を変えたナチュラリストの決定版伝記 18000円
ダーウィンと謎のX氏  第三の博物学者ブライスの消息 L・アイズリー 2816円
ダーウィンの衝撃  文学における進化論 4800円
ロシアの博物学者たち  マルサスぬきの進化論の系譜 3800円
英国心霊主義の抬頭  ヴィクトリア・エドワード朝時代の社会精神史 6500円



■書評

日栄章氏(bk1 2001年11月24日 ★★★★★)
「百科全書派の代表的な人物、ビュフォンを通じて、本書はこの時代の知識人らが如何なる自然観を持ち、偉大なる古代の伝統的思想からの変貌を、如何にして成し遂げたのかを語る、実は極めて記念碑的な書物である」
全文はこちら>>>

西村三郎氏(『日本経済新聞』1992年5月17日)
「人間が自由に生きるうえで、もっとも好ましい時代と場所として、かつてポール・ヴァレリーは18世紀ヨーロッパを挙げた。その当否はしばらくおくとしても、当時、精神的にも肉体的にも活気に満ちた人物群が輩出し、その才知によって人びとの拍手喝采をあび、世間を沸かせた時代であったことは、疑いない。ビュフォンは、そうした世紀の代表的な人物のひとりだった。
 常に“グラン”(偉大な)という形容詞をつけて呼ばれるこの博物学者は、しかし、単なる博物学者ではなかった。熱烈なニュートン主義者であり、合理的な哲学者、そして荘重な文体を駆使する文人でもあった。ほとんど生涯にわたって書き続けた主著『博物誌』全36巻(1749-89)は、この啓蒙の世紀における一大金字塔というべき作品であることは、周知の事実。
 本書は、この『博物誌』のテキスト分析を中心に、ビュフォンの生涯と精神の歩みを詳細に跡づけた労作である。ソルボンヌの神学者やジャンセニストたちの攻撃をかわすための韜晦や、彼自身の見解の変動もあって、その思想を正確に把握することは必ずしも容易でなかった。本書によってそのうらみが過去のものとなるだろうことは間違いない。永年ビュフォンに傾倒してきた老練な科学史家の手になるものだけに、目くばりは周到、説得力に富む。
 現実的で巧みな処世術により、革命前のフランス社会で学者・文人として最高の地位にまで駆けあがった人物だけに、人間としても大いに興味があるが、本書の力点はあくまで『博物誌』の著者としてのビュフォンにある。当時の時代思潮の背景のもとに自然をめぐる彼の一般理論がいかに構築され、各界がそれにいかに反応したかが、無数の華やかな脇役をちりばめつつ展開されていて飽きさせない。18世紀ヨーロッパの知的世界とその雰囲気を、万華鏡さながらに生き生きとのぞかせてくれる本書が、平明な訳文で読めるようになったことを喜びたい」



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