ダーウィンの花園[詳細]
Darwin and His Flowers
植物を愛した意外な素顔
食虫植物モウゼンゴケの驚くべき運動能力、
昆虫を操るかのようなランの仕掛け、
クレマチスはリーフクライマー、葉柄を鉤にして昇る。
あなたの庭のカバタミが夜になるのと眠るのを、ごぞんじだろうか!
22歳から五年間にわたるビーグル号の探検のときからダーウィンは植物に魅せられ、
研究のために膨大な量を採集した。
いや、それよりずっと以前、6歳の肖像画のチャールズの手には
花の植木鉢が乗っている。
地質学者ライエル、世界的植物学者ジョゼフ・フッカー、
エイサ・グレイを親友とし、
心やさしきエマ夫人とたくさんの子どもたちとすごした博物学者の生涯が、
植物研究の側面から色とりどりに描き出される。……
■目次より |
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第1章 チャールズ・ダーウィンの血筋
偉大な祖父と父/少年時代のエピソード
第2章 最初の発見
博物学とエジンバラ大学時代/ケンブリッジの実りある日々
第3章 ヘンズローと歩いている男
すばらしい先生/ビーグル号乗船まで
第4章 ビーグル号の植物
1 パンパと炎の大地
フィッツロイ大佐/熱帯の植物との出会い/グッド・サクセス・ベイの誓い
2 河川と山々
巨大アリクイの化石発見/ダーウィンの名がついた植物/珪化木が語るアンデス山脈の歴史
3 ガラパゴス諸島と長い帰路
巨大ガメとウミイグアナと…/キーリング諸島、そして帰国の途へ
第5章 帰ってきた水兵
地質学者ライエルとの出会い/未完の植物コレクション
第6章 「事実は私の考え方の原点」
『ビーグル号航海記』の仕事の渦中から/種の問題とマルサス『人口論』/エマ・ウェッジウッドとの結婚/植物に囲まれた研究と生活
第7章 ついにひらめく
ジョセフ・フッカーとの出会い/種は不変ではない!/「自然淘汰」を論じた「スケッチ」
第8章 ばんざい、私の「種」の研究
幸せな家庭生活/塩水に浸した種子の実験/もう一人の「自然淘汰」論者
第9章 静かな闘い
1858年7月1日、リンネ学会/自然界の生存闘争/「大樹」モデル
第10章 大移動
植物地理学のパートナー/氷河や島の仕事と大洋の役割/『種の起原』
第11章 風変わりなおかしな事実の億万長者
気になる「食虫植物」/ランと昆虫/適応進化理論の実例
第12章 つる、鉤と巻きひげ
『ランの受粉』の出版/回旋植物の不思議/リーフクライマーと巻きひげ植物
第13章 人間の素晴らしい実験
『変異』と栽培による変化/花と遺伝の法則
第14章 植物界の殺戮
モウセンゴケの反応/ハエトリグサの葉の仕掛け/海賊のような恐怖植物
第15章 ダーウィンのヒーロー
他家受粉と自家受粉の実験/昆虫を利用する花のしくみ
第16章 正当な結婚と不当な結婚
異なる型の花をもつ植物/雌雄異株への道
第17章 植物の運動と睡眠
回旋運動と成長/植物の睡眠
第18章 記念碑
数々の賛辞
付:ダーウィン一族の家系図/チャールズ・ダーウィン略年譜
■関連図書(表示価格は税別) |
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■書評 |
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◎新妻昭夫氏(『北海道新聞』1997年2月23日)
ダーウィンはなぜこれほどまで植物研究にのめりこんだのか。彼の目的は、地味で動物より低い存在と見なされがちな植物が、いかに積極的に生きているのかの証明だった。それは彼の進化論を例証する作業でもある。しかし著者はむしろ、ダーウィンの植物への愛情を強調する。著者の専門は園芸学の歴史であり、その分析は詳細で正確である。ダーウィンが他界したとき、新聞や雑誌に追悼記事があふれた。『ガーデナーズ・クロニクル』誌には多くの著名人にまじって一人の無名の庭師が追悼文を寄せている。この雑誌は学会誌ではなく、読者の大半はアマチュア愛好家や庭師である。ダーウィンが植物研究の成果をもっとも多数寄稿したのがこの雑誌だった。
◎佐々木正人氏(『遺伝』1997年10月号)
密度の濃い伝記である。さらに、後半の各章ではあまり知られていなかった植物研究の動機、方法、内容、評価がしっかりと紹介されている。どの話も生物について深い含意をもつものばかりであるが、やわらかいが正確な訳文で、好奇心をひいてやまないエピソードに引き込まれてすいすいと読める。本格的なダーウィン理解への橋渡しをしてくれる重要な本である。