工作舎ロゴ 書籍解説

HOME > 書籍 > ジャンル一覧新刊一覧 > 犬人怪物の神話/基本データ




犬人怪物の神話[詳細]

目次著者紹介関連図書書評


『東方見聞録』『アレクサンドロス大王伝説』
『山海経』『マハーバーラタ』

他者への畏れが生み出す神話・伝承の怪物たち

犬頭の聖人クリストフォロス、アウトカーストの犬食い族、辺境の蛮族……
西欧・インド・中国の神話や旅行記・史書には、
怪物種族の一たる犬人=ドッグマンが数多く登場する。
この異形のものたちは、どこから生まれたのか?
三大文化圏のはざまにあった中央アジア民族は、
それぞれの文化圏が抱く「異なるものへの怖れ」によって
怪物として語り継がれた。
異なる文化圏との出会いはまた、
自己と他者の相互認知から起こる融合、差別、排除の観念を生む。
そのシンボルがドッグマンだったのである。



■目次より

◎序文  ウェンディ・ドニガー(ミルチャ・エリアーデ宗教史学講座教授)
◎はじめに ……………………………………………………………………………………………

第1章  怪物とはつねに他者(ひと)のこと 

1 第三世界という神話
2 荒野とユートピア
3 生者の国と死者の国の間にいる犬
4 狼人間(ウルフマン)と犬人間(ドッグマン)は、怪物的人間? ヒト科の怪物?

第2章  忌まわしき者から犬頭の聖者へ 

1 忌まわしき者アボミナブル、使徒に会う
2 古代エジプト、ヨーロッパ、アジアにおけるジャッカル、狼、犬
3 中央アジアの人食い種族たちへの伝道
4 犬頭の聖者、聖クリストフォロス
5 古代およびヘレニズム時代の犬星(シリウス)と霊魂を冥界へ導く犬
6 新しい日の誕生を祝福する犬頭のヘルマヌビス

第3章  犬頭人種族の群れ 

1 古代の地理学者達による犬頭人の研究
2 『アレクサンドロス大王伝説』と犬頭人の変容
3 世界の辺境に暮らすアマゾン族と共に
4 中世の地理学・地図製作・神学における怪物的種族
5 イスラム教徒、農民、野人、そしてペスト

第4章  聖仙ヴィシュヴァーミトラと犬食い族 

1 インドの伝説物語の修辞法
2 王には供犠を執り行うことができるか?
3 存在しない第五カーストの起源
4 呪いと呪い返し

第5章  古代と中世インドにおける犬食い族 

1 異種族混交の重罪と追放
2 「内部の他者」、「非存在」の者が住む空界
3 インド最古のドッグマン伝承
4 アウトカーストが信奉するバイラヴァと犬
5 清浄と不浄の二極性

第6章  犬人族が渦巻く中央アジア 

1 インドの伝承における犬面人エフタル・フンと女人国
2 中国の史書が語る異民族と犬
3 三大文化圏から見た中央アジア民族の歴史
4 犬戎と犬祖伝説、狼祖伝説

第7章  中国の犬人伝承----槃瓠と犬戎 

1 『後漢書』の槃瓠神話
2 槃瓠と犬戎族、マン(蛮)族、ヤオ(瑤)族
3 三国時代におけるマンとヤオ
4 異民族の漢化を映す神話

第8章  古代中国の異民族が織りなす混沌 

1 天地創造神話と道思想
2 渾沌の儒教流解釈
3 古代中国の天の犬
4 古代中国における家屋・墓・宇宙

第9章  他者を認めて共に生きる 

1 還元主義と内部矛盾
2 人間の想像力の行き着いた先
3 恍惚と恐怖に包まれた怪物的種族
4 ヨーロッパにおける怪物についての神学的考察
5 文明の伝道者と暗愚の異教徒
6 高貴なる野人の屈服
7 フン族、共産主義者、中東の狂犬
8 他者の顔に神を見る

訳者あとがき・原注・参考文献



■著者紹介:デイヴィッド・ゴードン・ホワイトDavid Gordon White

カリフォルニア大学、サンタ・バーバラ校の宗教史学科教授。アメリカ合衆国、ヨーロッパ、インドを拠点として、南アジアのさまざまな宗教の研究を続ける。エリアーデ、デュメジルの系譜を継いでの、比較宗教学、神話学、人類学、歴史、アジア学、民間伝承、中世研究など広範なジャンルからのアプローチは、本書をはじめThe Alchemical Body:Siddha Traditions in Medieval India(University of Chicago Press,1996)に結実した。また中国、インド、日本、ネパール、チベットにおける、7世紀から現在までのタントリズムを編集した大著Tantra in Practice(Princeton University Press, 2000)を刊行。




■関連図書(表示価格は税別)

  • 怪物の事典  ジェフ・ロヴィン 青土社 4700円
  • アラマタ図像館1「怪物」  荒俣宏 小学館文庫 733円
  • 怪物の友  荒俣宏 集英社文庫 600円
  • 幻想博物誌  澁澤龍彦 河出文庫 490
  • 怪物のルネサンス  伊藤進 河出書房新社 3400円
  • 一角獣  R・R・ベーア 河出書房新社 3398円
  • 人魚伝説  ヴィック・ド・ドンデ 荒俣宏監修 創元社 1262円
  • 龍の起源  荒川紘 紀伊國屋書店 2427円
  • グリーンマン  ウィリアム・アンダーソン 河出書房新社 2800円
  • 森の記憶  ロバート・P・ハリスン 工作舎 3800円



  • ■書評

    「幻想文学61」石堂藍氏書評
    インド神話とアウト・カーストを主題とする専門的な神話研究である。…本書はつまるところ、他種族との混淆というテーマを取り扱うものであり、いささか難しくはあるが、興味深い一冊だ。



    ALL RIGHTS RESERVED. © 工作舎 kousakusha