ガイアの素顔[詳細]
大きな飛躍は、従来の考え方にとらわれずに
予想外のことをやってのける人々によってなし遂げられる。
大きな飛躍は予測不可能なのだ。
……だから、これらの変革も、予測不可能ではあっても、
決して実現不可能ではない。
……予測不可能な夢を実現させることこそ、私たちの課題なのだ。
(第6章 「予測できないことの重要性」より)
■目次より |
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第I部 物語
第1章 エロスと月の衝突(1933)1 偉大なる発見
2 さらなる発見
3 とてつもない思いつき
4 ロケットの性能
第2章 適切な大きさであること——科学プロジェクトのエコロジーについての所見(1988)
第3章 科学者への六つの警告(1988)
1 第三世界
2 第二世界
3 第一世界
4 二つのサクセスストーリー
5 次期大型粒子加速器計画
第4章 望遠鏡と加速器(1988)
1 フリッツ・ツヴィッキー
2 ツヴィッキーとバーデ
3 パルサー
4 バーミンガムとブリストル
5 独創的であることの危険
第5章 宇宙科学の60年——一1958年から2018年まで(1988)
1 たどられざる道
2 アポロが秘めていた可能性
3 シャトル
4 国際紫外線探査衛星
5 これからの30年
6 再び火星へ
第6章 予測できないことの重要性(1990)
第II部 物
第7章 物理学の革新(1958)1 マクスウェル理論を理解する
2 量子力学を理解する
3 これまでの革新
4 次に来るもの
第8章 朝永、シュウィンガー、ファインマンのノーベル物理学賞受賞(1965)
第9章 宇宙のエネルギー(1971)
1 エネルギーの意味
2 さまざまな厄介物
3 荒々しく友好的な宇宙
第10章 大気圏と生物圏の二酸化炭素 (1990)
1 行方不明のCO2の謎
2 オークリッジ声明書
3 酸素
4 樹木と表土の保護育成
5 新たな証拠
第III部 組織
第11章 物理学の未来(1970)1 ブラッグの法則
2 DNA配列解析の新方法
第12章 はやらない研究(1981)
1 科学の流行
2 歴史をふり返って
3 モンスターとモラル
第13章 天文学と個人(1984)
1 ジョージ・ヘールの遺産
2 アマチュア天文家と天文学者
3 娯楽と教育と記念碑
第14章 教えるべきか否か(1990)
1 イギリスからの視点
2 イタリアからの視点
3 博士号の問題
4 再び学校へ
第IV部 政治
第15章 宇宙探査の人間的結果(1968)1 H・G・ウェルズの先見
2 人間社会をとりまく現実
3 宇宙の可能性
第16章 「ノー」に伴う隠れたコスト(1974)
1 過去
2 未来
3 まとめ
第V部 本
第17章 プーピン(1960)第18章 オッペンハイマー(1980)
第19章 ノイマンとウィーナー (1980)
第20章 マニンとフォーマン (1982)
第21章 オッペンハイマー再び(1989)
第22章 モーソンとトルストイ(1989
第VI部 人物
第23章 アルメニアからの手紙(1971)1 国家
2 天文台
3 会議
第24章 もろい静寂(1981)
第25章 ヘレン・デュカス(1982)
第26章 ポール・ディラック(1986)
第27章 人生の師(1988)
1 レモンとミルク
2 ETの生みの親
3 共産主義者と帝国の建設者たち
第28章 1948年のファインマン(1989)
1947年11月19日 コーネル大学にて
1947年11月27日
1948年3月8日
1948年3月15日
1948年6月11日
1948年6月25日
1948年10月4日
1948年11月1日 ボストン
1948年11月14日
1949年1月30日
1949年2月28日 シカゴ
1979年12月21日 プリンストン
1981年4月9日 イリノイ州アーバナ
第29章 ガイアの素顔(1989)
■関連図書(表示価格は税別) |
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[20世紀の知の巨人たち]
■書評 |
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●2005.7.28 毎日新聞 余禄
巨大科学への辛辣な批判
…ダイソン教授が『ターキー』、つまり飛べない鳥と評したのがスペースシャトルである。教授は88年のエッセイで、シャトルは技術開発の典型的失敗例と書いている(『ガイアの素顔』工作舎刊)
低価格で操作は簡単、頻繁な飛行の耐え、しかも安全というのがシャトルの売り物だった。だが、実際にはどれ一つとして満たしていなかったというのが教授の診断だ。何より14人の犠牲者を出した2度の事故が、この評価を裏づけてしまった…
シャトルの技術的総決算がどうあれ、人はなおも巨費を投じ、危険を冒して宇宙へ向かうだろう。なぜかについてはダイソン教授も最近の講演で述べている。「税金の払いや義理の母がいやだから宇宙へ出て行く人もいよう。だが一番の理由はそこが前人未到だからだ。
●日経サイエンス 2005.9月号 渡辺政隆氏書評
人間の複雑さの源は知ではなく情緒 科学は手段にすぎない
…科学という知だけでは不足であることを実感したダイソンは、『人間性の複雑さの源は、知性にではなく情緒にある。知的能力が目的を達成する手段なら、何を目的ととすべきかを決定するのが情緒である』との啓示を受けた。
ガイアと情緒の絆を保っているかぎり、人類は健全だと、ダイソンは語る。…
●2005.7.24 読売新聞 浅羽雅晴氏書評
巨大科学への辛辣な批判
…収録された29本の随筆や書評、講演録は、文学から環境、数学、宇宙、生命科学と幅広く、深い知識と洞察に裏付けられている。半世紀間に書かれた古さを感じさせない。天才と道化が同居したファインマンとの交友などは傑作そのものである。
だが巨大科学には辛辣だ。旧ソ連が建設した世界最大の光学望遠鏡の失敗や、米国の超大型素粒子加速器(SSC)建設計画(後に中止)を俎上に、『国の威信で建設され、科学的メリットとは無関係』『実験にもっと金をかけよ』と批判する。
80歳を超えた高齢だが、このほど誘致合戦で日本が欧州に負けた国際核融合実験炉の評価を聞いてみたいもの。きっとニヤリと笑い、片目をつむってみせるに違いない。
●2005.7.10 朝日新聞 渡辺政隆氏書評
逆説と諧謔とちょっぴりの感傷が漂う硬派な科学論
齢80を超えたプリンストン高等研究所名誉教授で高名な理論物理学者のエッセイ集。9歳のときに書いたという未完の短編SFと、80年代に書いた小文を中心に収録。
古今の巨大科学プロジェクトを「適切な規模」という視点から縦横に批判したかと思うと、有人火星探査を本気で推奨する筆致が、真面目とも冗談ともつかない味わいをかもしだす。
いずれも80年代に発せられた警句ながら、20年の時を経た現時点でもなお、いや、いろいろなことがあった後の今だからこそ傾聴に値するところがすごい。…
●アスキー 2005.7月号 大山冠氏書評
多種多様な知的活動を垣間見ることができる
フリーマン・ダイソンと聞いてラリィ・ニーブンのハードSF『リングワールド』を思った人は古手のSF者だろう。フリーマン・ダイソンが提唱した『ダイソン球』は太陽の周りを人工的にすっぽりと覆い、太陽エネルギーをまるまる利用してしまうような人工天体なのだが、このアイデアに影響された作品は以後SFやアニメでしばしば登場し、意外にも多くの人が知っていると思う。
…本書は博士のエッセイ集だが、その出典は講演録、寄稿、書評など多岐にわたり、9歳のときに書いたSF小説『エロスと月の衝突』(未完)から、コ−ネル大学・院生時に教授だった30歳のファインマンに接し、その姿を手紙に書いた部分なども収録されている。その点でも博士の多種多様な知的活動を垣間見ることができる一冊となっている。…
●週刊文春 2005.7.7号 私の読書日記 立花隆氏書評
期待が裏切られることはない
本好きな人なら誰でも特別に好きな作家がいるだろう。新作が出たら、中身も見ずに、とにかくすぐにでも買うという作家である。いわゆる作家ではないが、フリーマン・ダイソンは、私にとって、そのような人物である。『宇宙をかき乱すべきか』(1982)以来、この人の新作が出ると必ず買うが、期待が裏切られることはほとんどない。
プリンストンの高等学術研究所でアインシュタインの同僚だったこともある理論物理学者だが、この人は科学と技術、それに文化のあらゆる側面に通じている現代の万能人である。一時プリンストン大学の客員教授になってしばらく向うで生活したことのある大江健三郎さんに、フリーマン・ダイソンに会ったかと聞いたら、「会うどころか、プリンストンで唯一話が合う人でした」と言っていた。
1923年生まれで、もう81歳のはずだから、そろそろ頭が弱ってきたかなと、新著の『ガイアの素顔』を手にとったら、相変わらず、頭がさえている。…
●2005.5.27 日刊ゲンダイ 週末の読書の友best4
予測できないことの重要性
本書には地球温暖化の問題や科学教育のあり方、ファインマンの若き日のエピソードなどの話題が収められている。なかでも、経済や国際政治の分野における予測不可能性が重要だとし、地球市民である我々に課せられている問題は、予測可能なことに汲々とするのではなく、未知なる予測不可能性に未来を託すことである、と提言している。
●2005.5.26(木) 日経新聞 夕刊
目利きが選ぶ今週の3冊にて竹内薫氏(サイエンスライター)が★★★
天才物理学者ダイソンのエッセイ集。冒頭のSF小説から最終章まで、極上の『知』との出会いにあふれている。後半の人物伝が特にオススメ。