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英仏普遍言語計画[詳細]


ヨーロッパ統合の夢と挫折。

17世紀のヨーロッパは天災や流行病、30年戦争などで大混乱の渦中にある一方、
従来の世界認識を決定的にくつがえす科学革命も進行していた。
統合と秩序への機運が切実な盛り上がりを見せるなか、
デカルトやライプニッツをはじめとした当時の知識人たちは、
曖昧性のない厳密な知識の獲得と交換を可能にし、
さらには人知の改善と増進を実現するような言語の改革運動を繰り広げる。
彼らの夢見た普遍言語とは、まさに全宇宙を合理的に総括する百科学体系だった…。



■目次より

第1章 真正の文字の言語 知的背景
共通語としてのラテン語/人類最初の言語/速記記号と代数記号の普遍性/ヒエログリフと漢字との関連/コメニウスの言語教育改革…

第2章 共通の文字と初期の諸計画
デ・ヴァレの「母なる言語」/ル・メールの普遍的アルファベット/ウィルキンズの普遍的文字/ロドウィックの共通文字/ベックの数の辞書の体系

第3章 哲学的言語
デカルトとメルセンヌ/メルセンヌの置換言語理論/記憶術論がもたらした影響/ルルス主義とカバラ/ダルガーノとウィルキンズの目的/ライプニッツ瞥見…

第4章 想像の旅と理想の言語
トマス・モアのユートピア言語/ゴドウィンの音調言語/シラノの身振り言語/サルマナーツァールの台湾語/ヴェラスのセヴァランビア語…

第5章 18世紀 言語の起源・一般的文法・普遍言語
ティエボーによる普遍言語の見直し/ド・ブロスの原始言語再建/人間思考の普遍的原則…

第6章 1790年代のパン・グラフィー
ドロルメル、アンペール、コンドルセの計画/ド・メミィユの普遍的書字の構造

第7章 記号と思考
言語記号が思考に及ぼす影響/コンディヤックが指摘した言語の欠陥/コンディヤックとライプニッツの類似性/コンディヤック以後の言語改革の試み…

第8章 イデオローグと完全な言語
分析的言語創設への反撃/数学的概念と道徳的観念の相違/哲学的言語の不可能性への論証/言語と知性の完全性/改革の挫折と継承…

補遺A 普遍言語としての身振り
聾唖者との意志疎通の可能性/聾唖者教育の手段/身振りの普遍性/身振り言語の限界

補遺B 17・18世紀における普遍的文字と言語の諸計画一覧




■著者紹介:ジェイムズ・ノウルソン James Knowlson 1933-

1933年生まれ。レディング大学で博士号を取得後、グラスゴウ大学に9年間在職。1969年以降はレディング大学に戻り、現在に至る。フランス研究科教授。専門はフランス演劇だが、普遍言語についての論稿が多数ある。ベケット研究家としても世界的に著名。


■関連図書

言語の夢想者 17世紀普遍言語から現代SFまで 3200円
キルヒャーの世界図鑑 よみがえる普遍の夢 2900円
薔薇十字の覚醒 隠されたヨーロッパ精神史 3800円
ライプニッツの普遍計画 バロックの天才の生涯  5340円
表象の芸術工学 見世物・マニエリスム・驚異の部屋 高山宏 2800円
ペルシャの鏡 ライプニッツの迷宮をめぐる幻想哲学小説 1800円
バロックの神秘 タイナッハの教示画の世界像  8000円
綺想の帝国 ルドルフ2世をめぐる美術と科学 3800円


■書評

◎西垣通氏(『マリ・クレール』1993年8月号)

「……普遍言語をつくりあげようという熱狂的な運動が17〜18世紀の西ヨーロッパに起こったのである。しかもこれがのちの文化に与えた影響はきわめて大きい。たとえば、現代コンピュータの先端技術である知識工学はその流れをついでいる。にもかかわらず、これまで普遍言語運動の紹介はこの国では決して十分にはなされてこなかった(わずかにパオロ・ロッシ『普遍の鍵』とマリナ・ヤゲーロ『言語の夢想者』が邦訳されたぐらいだろう)。本書は、当時行われたさまざまな試みの経緯や意味をみごとに概括した、実に貴重な本なのである。……ひところ消費文明に浮かれて底の浅いポストモダン論が流行したが、わたしたちはまずその前に、モダニズム成立期の西ヨーロッパでいったい何故こういう普遍言語が渇望されたのか、もっとよく考えてみなくてはならない。それが挫折した経緯についてもよく省察してみなくてはならない。そうすれば、「科学技術先進国ニッポン」の足場にひそむ亀裂に寒気がするだろう。環境問題をはじめ、モダニズムのかかえる難問をとくためには、それくらいの覚悟とエネルギーが必要なのである」



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