音楽のエゾテリスム[詳細]
L'ESOTERISME MUSICAL EN FRANCE 1750-1950
「音楽の秘密」を手にした人たち
宇宙と響き合う音を、神の叡智と接する音楽を
追い求めつづけた人たちがいる。
エゾテリスム(秘教的な思想)が復興したフランス1750-1950年は、
大衆的なオカルトが流行し、さまざまな学問分野が
縦横に橋を架けようと努めた真摯な時代だった。
世界は交流を、音楽は「宇宙の調和」を願い、その思いこそが、
ロマン主義、象徴主義、シュルレアリスムへと反響していく。
■目次より |
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第1章 啓蒙の世紀における天体の音楽
思弁的音楽[musique speculative]ライプニッツ、シャフツベリー卿
ニュートン----ピュタゴラスの逸話とスペクトル七分説
カステル師の「色と音」の研究----色彩三分説と視覚チェンバロ
エッカルツハウゼン、ゲーテ、ラモー
ブリズー、バトゥー神父----比率か感情か、和声か旋律か
ルイ=クロード・ド・サン=マルタン----象徴とアレゴリーとしての音楽
第二章 エジプトおよび中国のピュタゴラス
ルシエ神父と三倍数列ラボルドと微分音チェンバロ
ド・ヴィスム・デュ・ヴァルゲ----オペラ座支配人を務めたスウェーデンボリ主義者
ヴィロトーとエジプト音楽研究
第三章 ファーブル・ドリヴェ
奇蹟に満ちた時代「ギリシア旋法」とナポレオン戴冠記念「オラトリオ」
聾唖者の治療
幻の書『音楽』
秘密結社「真のメーソンと天の耕作」
第四章 フーリエとフーリエ主義者たち
輪廻転生と宇宙進化論宇宙の音楽
人間の音楽
弟子たち
フーリエの思想的源泉
第五章 ヴロンスキーとヴロンスキー主義者たち
「絶対」の発見者ヴロンスキートゥルプナ、フェティス、アザイスの論争
カミーユ・デュリュットが紹介するヴロンスキーの音楽論
ベルギーにおけるヴロンスキー
シャルル・アンリ-----知覚の幾何学
エルネスト・ブリット----音楽と占星術
第六章 一九世紀中葉のピュタゴラス主義者たち
ラキュリア神父----キリスト教ピュタゴラス主義者ルイ・リュカ----エゾテリスム左派
カストネール父子とアイオロスの竪琴
音楽療法——ショメ博士とポンテクラン侯爵
第七章 エドモン・バイイと一九世紀末の「宇宙の調和」
エドモン・バイイと「アール・アンデパンダン」書店ロシャス大佐の心霊実験
交霊術者・霊媒・オカルティスト
総合主義者——スヴィエチャノフスキー、ギュイヨ、グリヴォー、アズベル
サティとドビュッシー
第八章 サン=ティーヴ・ダルヴェードルと「アルケオメートル」
作曲家サン=ティーヴ・ダルヴェードルアルケオメートルの生成過程
サン=ティーヴ・ダルヴェードルの音楽論と神聖音階の探求
『音楽のアルケオメートル』の出版
芸術への応用——シャルル・グジ
第九章 思弁的音楽と現代
エミール・ベルナールの『レノヴァシオン』誌とポール・ヴュリオの『アントルティアン・イデアリスト』誌リチョット・カヌード----ベート−ヴェン、ニ−チェ、宇宙的オルガスム
フィデル・アミ=サージュ、ジョゼフ=シャルル・マルドリュス、エジプトの秘儀
エゾテリスム『ヴォワール・ディジス』の音楽特集合
ジャン・タマール——ゲノン的解決法
原注
訳者あとがき
付:楽譜
ファーブル・ドリヴェ作曲「もの悲しい思い出」
エドモン・バイイ作曲「ウラドの悲しみ」
サン=ティーヴ・ダルヴェ−ドル作曲「イゾラ・ベッラ」
参考文献
索引
■関連図書(表示価格は税別) |
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■書評 |
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◎"3e millenaire"
誌音楽のエゾテリスムに関する研究書はほとんどない。本書は、この大きな欠落を埋めると同時に、音楽についての考察がもっとも豊かに展開された1750〜1950年という時代のフランスにおける、多様な探求の全貌を明らかにするものである。
◎"Le Monde de la Musique
エゾテリスムと音楽、この二つは音楽学者から見ても神秘学者から見ても、きわめて密接に関係していると感じられることが多いようだ。著者は、ファーブル・ドリヴェからサン=ティーヴ・ダルヴェードルにいたるまで、二世紀のあいだに書かれたさまざまな思弁的音楽の書を詳細に検討している。今日、音楽は、身体治癒の手段、心的統合の手段、霊的実現の手段として、その有効性をますます認められつつある。本書を読めば、音楽のエゾテリスムというものが現代の文化においていかに重要であるかが理解できるし、霊的なものが明日の芸術のなかに流れこんでくるという期待を抱くこともできるだろう。
◎musee34号(TOWER RECORDS) 小沼純一氏書評
おそらく日本でも、いや、世界でもかなり省みられない、あるいはなおざりになっている音楽についての捉え方のひとつが、ほかならぬ“エゾテリスム”だろう。
◎bk1 石堂藍氏書評
…音楽の神秘思想と言って思い浮かぶのが、ロバート・フラッド程度である筆者には、珍しい情報が多く、たいへんに興味深かった。要するにマニアックな本なのだが、こうした偏向のある本だけが与えてくれる感慨を味わうことができるのである。…。