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女性は生まれつき異常という先入観。男性より数学能力に劣り、月経前症候群という病人にされ、 更年期には女でなくなる…「科学」の名のもとに定説とされ、 社会的な女性の不平等を招いた神話の数々。 フェミニストとして、科学者として、それら性差研究にひそむ偏見と誤診を冷静に指摘し、 混沌に満ちた性差の科学に新たな指標を提示する。 |
■目次より | ▲ |
第1章 はじめに 生物学的視点から 強姦はとめようのない交配衝動なのか 生物学的に劣る女性は貧困に甘んじる? 科学の死角にスポットをあてる 科学者として、フェミニストとして 第2章 天才 男は女より賢いのか 社会的性差別をうながした理論 知性は遺伝するか 客観的で公正なはずの科学者が… 男女共学の是非をめぐって 性別だけで判断できない言語能力 視覚・空間能力の性差はきわめて小さい 社会的制約が影響する空間能力 理論過剰だった生物学の流れ X 連鎖仮説が人気を博した理由 左対右、脳半球の働きを再点検 問題解決への異なるアプローチ 数学能力は男女でちがう? 天才論争についての結論 第3章 遺伝子 遺伝、性の発達と環境 遺伝子とはなにか、どう作用するのか? 遺伝子だけに還元できない脳と行動 X、Y および性的発達とホルモン 性のアイデンティティとホルモンをめぐる論争 遺伝子から性へ 第4章 ホルモン 月経、閉経と女性の行動 子宮が女性の人生を支配する 月経前症候群はほんとうに存在するか 思考や感情が生理に影響する フェミニスト生物学者たちの研究 静けさのまえの嵐─閉経 閉経の定義と生理学 閉経と抑うつの相関を示すデータはない 男性の生殖系を絶対化するあやまち 第5章 攻撃 男性をつき動かす力 闘争、攻撃、戦争…は男の生物学的特性か 男性ホルモンと人間の条件 「攻撃」は故郷の子宮からはじまる ストレスの多い環境でみられるオスザルの優位性 オスネズミの攻撃性 鏡よ鏡、この世でだれがいちばん攻撃的? 社会化プロセスを考慮した性差研究 第6章 進化 社会生物学に組みこまれた女性 社会生物学者たちのいいぶん 動物はほんとうに強姦するのか? 進化:総合説 包括適応度への疑問 社会生物学と性 オスの一夫多妻傾向を探る 種の投資からみた自然淘汰 ふたたび強姦について 生物学的プログラムの偏重 未来の女性が直面するジレンマ 第7章 結び 性と科学 よい科学、悪い科学、フェミニストの科学 運動競技における男女差 未来へのプログラム |
■著者紹介:アン・ファウスト-スターリング Anne
Fausto-Sterling |
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アメリカ、ロードアイランドのブラウン大学、生物学・医学部教授。50年代末から全米におこった公民権運動、ベトナム反戦、ウイメンズ・リブ運動に参加する。科学が社会的・経済的・政治的に与える影響を重視し、科学と社会の相関関係を射程に入れたダイナミックな科学研究に取り組んでいる。とくに性差については、研究者自身の偏見や思い込みによる研究が社会の定説となりがちなことを批判し、本書を著した。地球市民としての平等をめざすフェミニスト科学者の研究テーマは、性の生物学、人種問題、社会生物学、発生遺伝学など、多岐にわたる。 |
■関連図書 | ▲ |
・ジェンダーは科学を変える!? ロンダ・シービンガー 2600円 ←同時代の実態 ・セックスの発明 トマス・ラカー 4800円 ←医学史・社会史の実態 ・科学史から消された女性たち ロンダ・シービンガー 4800円 ←17世紀の実態 ・女性を弄ぶ博物学 ロンダ・シービンガー 3200円 ←18世紀の実態 ・女性を捏造した男たち シンシア・E・ラセット 3200円 ←19世紀の実態 ・お母さん、ノーベル賞をもらう S・B・マグレイン 2800円←女性科学者とノーベル賞 ・二人のアインシュタイン D・トルブホヴィッチ=ギュリッチ 2400円 ←最初の妻 ・NASA/トレック コンスタンス・ペンリー 1900円 ←スペースシャトル事故後の噂 ・自然の死 キャロリン・マーチャント 3800円 ←エコ・フェミニズム ・セックス&ブレイン ジョー・ダーデン=スミスほか 1900円 ←流行りの脳の性差 |
■書評 | ▲ |
◎渡辺政隆氏(『科学朝日』1990年8月) 「……性差はほんとうに科学的に「証明」されたのだろうか。とんでもない。「証明」したとする研究の多くには、学術誌上で疑問や異議が出されている。データの集め方や統計解析の解釈、対照実験などに不備があるという指摘が多数なされているのである。では、意図的にデータがねつ造されているのだろうか。 実は、そういうわけでもない。ここがこの種の研究を評価するうえで難しいところである。性差にかぎらず、差のあるなしを調べる研究では、そもそも、差があることを見越して研究に着手されるのが普通である。そして、報告されるのは、(めでたく)差を見つけたものばかりである。つまり、意図的なねつ造ではなく、無意識のバイアスが働いていることが問題なのである。そのうえ、性差や人種間差を報告する科学者たちは、政治的な色に染まっていない厳然たる「事実」を報告しているにすぎないと考えているからなおさらのこと始末が悪い。たとえば男性のレイプ衝動や浮気願望には進化がはぐくんだ遺伝的・生理的基盤があると主張する科学者(男性だけとは限らない)も、そのような行動を正当化するためにそう主張しているわけではない。 差は存在しないという研究報告がなされない(もしくは学術誌に掲載されない)ことも問題である。そのせいで、たとえば性差の存在を主張する研究をたちどころに反証できる既存の証拠はきわめて手薄である。したがって、バイアスのかかった研究を論破するには、その研究に潜む虚偽を一つひとつ暴いていくしかない。これは、じつに気のめいる仕事である。いったん築かれた神話を崩すには、確固たる知識と冷静な議論が何よりも必要とされる。本書は、このやっかいな作業に敢然と取り組み、見事に成功しているといえるだろう」 |
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