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人工言語の迷宮(ラビリンス) 普遍言語の虜となったデカルト、ライプニッツ、チョムスキー、 奇天烈な空想言語を考えだしたシラノ・ド・ベルジュラック、 ブルワー=リットン、ジョージ・オーウェル、 霊媒となって異界の言語をとめどもなく話し始めたエレーヌ・スミス、 スターリン体制下でマルクス主義言語理論を打ち立てたニコライ・マール……。 人工言語の迷宮にさまよいこんだ彼ら“言語の夢想者”の系譜を通して、 言語に潜む神話、夢、狂気を説き明かしていく……。 |
■目次より | ▲ |
序章 言語への愛 人工言語探求の道筋/本書で扱う三タイプの言語活動 第1部 神話からユートピアへ 第1章 言語の創造神話 言語を規定する世界観の変遷 ユートピアから生まれる「存在しない言葉」/新世界発見と言語思想の関係/聖書の言語構造 第2章 夢想家の肖像 言語に憑かれた人々の系譜 言語考察者の妄執/言語狂分類学 第3章 男と女の人工言語 ユートピア構築的言語とヒステリー症的言語 言語理解のふたつのアプローチ/人工言語史での女性の排除 第2部 17〜20世紀の言語思想史 第4章 未完の探求 17〜18世紀における理想言語構想 普遍言語運動/哲学言語の構想/ライプニッツの結合術/空想旅行の人工言語 第5章 科学フィクション 18〜20世紀における言語の科学的考察 普遍言語を求めて/普遍言語構想の新展開/比較文法学から言語類型学へ/進化論視点の誤った導入/国際共通語運動 第6章 「科学」の中の「神話」 最近のSFに見られる言語学理論 現代言語学SF/チョムスキー革命の影響 第3部 言語にまつわる幻想の両極にむけて 第7章 裸の王様 ニコライ・マールの奇想言語理論 マールの言語研究の発端/言語祖先複数説/言語段階発展論による分類/未来言語宣言/階級言語と言語上部構造論/マール主義理論のその後 第8章 夜の女王 異言における無意識と言語活動 T・フルールノワの霊媒観察/エレーヌ・スミスの異言体験/宗教的異言現象/外国語がかりの症例/異言と外国語がかりの相違/異言の構造/火星語の文法的解釈/異言の言語論的側面/異言における「意味」/無垢の歌としての異言 第4部 自然言語の擁護と顕揚 第9章 眠り続ける森の美女 精神の牢獄としての人工言語 自然言語と人工言語の対立/言語活動の本来の機能 第10章 相反力の戯れ 自然言語に内在する均衡状態 人工言語の限界/人工言語の不完全性 巻末資料Ⅰ:人工言語主要作品一覧(言語思想史年表) 巻末資料Ⅱ:人工言語文献資料集 ◎哲学言語 デカルト 1692年11月20日付けメルセンヌ神父宛の書簡 ◎言語の起源に関する科学的思想の変化 プラトン『クラテュロス』 ライプニッツ『人間知性新論』第Ⅲ部「言葉について」、第Ⅱ章「語の意味について」 クール・ド・ジェブラン『言葉の博物誌』第8章「言語活動の起源」 ジャン・ジャック・ルソー『言語起源論』… ◎原始言語の空想的復元 シャルル・カレ『言葉の秘密』 ジャン・ピエール・ブリッセ『人類の諸起源』… ◎フィクションに見る空想言語 フランシス・ゴドウィン『月世界の人』 シラノ・ド・ベルジュラック『月世界旅行記』『太陽世界旅行記』… ◎ニコライ・マール抄録 ヤペテ言語学… ◎異言資料 聖パウロ『コリント人への第一書簡』 エマニュエル・スウェーデンボルク『…諸世界、その住人、精霊、そして天使について』… ◎人工国際言語 人工言語の語族… |
■著者紹介:マリナ・ヤグェーロ Marina Yaguello 1944- | ▲ |
1944年、パリ生まれ。ヤグェーロの名は、父方のポーランド貴族名に由来する。マルティネ、キュリオリのもとで言語学を学び、1967年、ソルボンヌ大学の助手になり、69年以降現在にいたるまでパリ第7大学言語学部門の教職についている。英語の教授資格と言語学の国家博士号をもつ。 邦訳は本書のほかに『言葉の国のアリス:あなたにもわかる言語学』(青柳悦子訳、夏目書房、1997)がある。 |
■関連図書 | ▲ |
・英仏普遍言語計画 デカルト、ライプニッツにはじまる 4800円 ・ライプニッツの普遍計画 バロックの天才の生涯 5340円 ・キルヒャーの世界図鑑 よみがえる普遍の夢 2900円 ・薔薇十字の覚醒 隠されたヨーロッパ精神史 3800円 ・ペルシャの鏡 ライプニッツの迷宮をめぐる幻想哲学小説 1800円 ・バロックの神秘 タイナッハの教示画の世界像 8000円 ・綺想の帝国 ルドルフ2世をめぐる美術と科学 3800円 ・地球外生命論争 カントからロウエルまでの世界の複数性をめぐる思想大全 20,000円 ・世界の複数性についての対話 フォントネルによるお洒落なSF 1900円 |
■書評 | ▲ |
◎種村季弘氏 (『朝日新聞』1990年11月11日) 「本書自体に夢想言語博物館としてのユーモラスな面白さがあるのはいうまでもない。しかし著者の意図はむしろ、奇妙な人工言語や異言の構成する言語の迷宮をさまよった揚げ句、ふたたび自然言語という出口を見出す道程にあるだろう。相反する二つの方向に引き裂かれた自然言語が、にもかかわらず相反力の戯れの場として均衡状態を内在させているという終章で、言語学者にして三児の母でもあるヤグェーロは言語迷宮の出口にたどりつく。迷宮を脱出する手立てがアリアドネの糸なら、この言語迷宮をつらぬく一本の糸は「愛」である」 ◎松山巌氏 (『文学界』1991年新年特別号) 「異言、それまでまったく知らなかった言葉を突然に喋り出す現象についても、貴方は決してうさん臭いものとする固定した考えに囚われずに扱います。ユニークな考察です。特にソシュールも興味をもった霊媒者エレーヌ・スミスについては、ニコライ・マールと同様、詳しく論じていますね。エレーヌは火星語を話したが、こうしたことは数多く見られることと、実例も上げています。エレーヌの異言、つまり彼女の火星語が自然語よりもピジン語に近く、次第に幼児語へと退行して行くことを、語彙の分布と文法によって分析しています。私には、大変に不思議な現象と思えただけに、それを冷静に検討する姿勢に感心しました」 ◎西垣通氏 (『朝日新聞』1999年9月19日) 「この本はとびきり面白い。学者らしく、言語理論や歴史的資料を踏まえてはいるが、筆は軽やかにたわむれ、時には飛翔する。古典にあらわれた言語起源の神話からはじめて、ユートピア小説の空想言語、ライプニッツ流の哲学的普遍言語、エスペラントのような国際交流用の共通言語、さらには、習ったこともない不思議な言葉をトランス状態で口走るあの「異言現象」にまでおよぶ。巻末には付録として、人工言語の主要作品一覧表ならびに有名な人工言語関連文献の抜粋が付いているが、これだけでも一読の価値が十分にある。今の日本語ブームも、実用だけでなく、こういう夢想にまで至ると楽しいのだが……」 |
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