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表象の芸術工学[詳細]

目次著者紹介関連図書関連情報書評シリーズ概要


高山宏はライヴがいい

高山宏という「知」が発散する空気は熱い。そのせいか、笑気、怒気、狂気はじめ、さまざまな“気”を含んで重いはずのその空気は、実に軽々と教室じゅうを駆けめぐり、聴衆にのしかかる。それに重なって連呼される「おバカ〜!」の雄叫び(たとえば、「インテリアを室内装飾と割り切る本、おバカ〜!」のように——)。…笑い、うなずき、驚きながら、講義という名の知的会話を堪能した。そう、これは一方的に聴かされる講義ではなく、まさしく「会話」なのである。ライヴならではのこの体験を今ここで再現することはむずかしい。まさに一期一会の知の祝祭だ! えっ? 「知」にライヴは向かないって? とんでもない!

(井野瀬久美恵 あとがきより)



■目次より

第1部 視覚表現の奇妙・絶妙

Lecture1 江戸研究にはじまる、視覚表現の現在
1. ……フィージーの人魚がひもとく博物学史
2. ……見世物「黄表紙」と"picture"の近さ
3. ……本が世界を写す鏡でなくなってから
4. ……博物学と、その後二百年の視覚文化

Lecture2 ルネサンスとマニエリスムの視覚文化
1. ……物量が増し、分類学が発達する
2. ……人相見が疑似科学化する19世紀
3. ……貨幣制度が変われば、言葉にも何かがおこる
4. ……博物学者の夢と悪夢
5. ……非・美術図像の裏側に

Lecture3 フーコーが語った18世紀「表象」のすべて
1……1660年代のフランスからの視覚文化革命
2……普遍言語の夢想者たち
3……似て非なる「世界」と「世界像」
4……テーブルに並んだ世界像を読み解く
5……聖なる文字とパピロマニア
6……いくら薔薇と書いても薔薇の香りはしない

Lecture4 ピクチャレスクの時代
1……E・A・ポー『アッシャー家の崩壊』より
2……「画趣に富む」とは大ちがい
3……「見る」ことの暗黒近代史

Lecture5 英国式庭園と蛇行のパノラマ
1……閉ざされた甘美な場所(ロクス・アモエントウス)
2……中世に響いた、天界の音楽の蘇り
3……多様なもの、複雑なものを目指して造る
4……逍遙自在の曲折庭園

Lecture6 ホフマンの「砂男」を読み狂う
1……身体の地図と曲線の重なり
2……曲線をまとったスペクタル
3……グロッタとバロックの綺想
4……ロマン派再考
5……不気味な砂男から見た視覚文化論
6……文学、科学、建築、すべてにデザインが介在する

第2部 デザイン観念史の冒険

Lecture1 辞書の誕生からひもとかれる文化史
1. ……「辞書とは何か」からデザインが始まる
2. ……すべての人に、すべてを教えるために
3. ……教育革命者たちの「表象の歴史」
4. ……デザインのための大いる事典

Lecture2 「個別と総合」のマニエリスム観をめぐって
1. ……ルネサンスとマニエリスムを俯瞰する
2. ……関係ないものを並置するマニエリスム・アート
3. ……「驚異の部屋」の愉悦を永遠に

Lecture3 ヨーロッパ18世紀「ホーティカルチャー」
1. ……イギリスの庭に象徴される「ピクチャレスク」
2. ……フランス、中心を据えるヴェルサイユ美学
3. ……ピクチャレスクな英国式風景庭園
4. ……初期の精神科医はインテリア・デザイナー
5. ……分野を越えて、ホーティカルチャー論を

Lecture4 推理小説を生んだ「インテリア」観念史
1. ……「インテリア」の意味はむちゃくちゃ広い
2. ……室内装飾(インテリア)に心が映る
3. ……インテリア・デザインの勃興とロマン派
4. ……美の極致を求めて
5. ……インテリアと欲望の生きたカタログ「百貨店」
6. ……デザインを「サインを処理する技術」の文化へ

Lecture5 「デザイン」へのメッセージ
1. ……画期的なデザイン・スタディーズ
2. ……ものの形にこだわり解釈するデザインの知
3. ……創造的イマージュを噴出するエラノス学会
4. ……膨大なヴィジュアル集積と意識
5. ……ディテールからのパースペクティヴ

受講者と読者のためのリーディング・ガイド:参考文献
逸脱者の(エクストラヴァガンティスト)Tの肖像:高山宏著訳書リスト



■著者紹介:高山 宏 (たかやま・ひろし)

1947年、岩手生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京都立大学人文学部教授、英文学専攻。17世紀以降の視覚文化と、それを生んだ肉体、社会的条件の追及をテーマにすることから、東西の文化諸相全般に関心を広げる。その到達点に「異質なものの結合の仕方の技術論」つまり「マニエリスム」があると説く。




■関連図書(表示価格は税別)

高山宏の主な著書
  • 目の中の劇場 青土社 3495円 1985/95
  • 黒に染める ありな書房 4500円 1989/97
  • ふたつの世紀末  青土社 2400円 1998.11
  • 綺想の饗宴 青土社 2800円 1999.6
  • 奇想天外・英文学講義 講談社選書メチエ 1900円 2000.10

    主な訳書
  • アートフル・サイエンス バーバラ・M・スタフォード 産業図書 4200円 1997.2
  • 大江戸視覚革命 T・スクリーチ 作品社 4800円 1998.2
  • ムネモシュネ マリオ・プラーツ ありな書房 5000円 1999.11
  • 視線 スティーヴン・カーン 研究社出版 4300円 2000.10

    神戸芸術工科大学レクチャーシリーズ
  • 第1弾 円相の芸術工学
  • 第2弾「めくるめき」 の芸術工学 高山氏論文所収
  • 第3弾「ふと…」の芸術工学
  • 第4弾「まだら」の芸術工学
  • 第6弾ジオメトリック・アート



  • ■関連情報

    2002.9.8〜29 高山宏フェアin PBC渋谷
    パルコブックセンター渋谷店で高山宏フェアを開催。高山氏著作と『表象の芸術工学』関連図書から選りすぐりの100余点が参集。『表象の芸術工学』の中でも重要書として数多く言及されているマリア・タタールやニコルソン、バルトルシャイティス著作(国書刊行会刊)など僅少本も蔵出し出庫。

    2002.9.8 ABC本店 高山宏氏講演会
    2002年9月8日午後2時30分〜4時30分 東京・青山ブックセンター本店のカルチャーサロンで、著者・高山宏氏の講演会を開催しました。
    連夜の雨もやみ、好天に恵まれた日曜、当日参加の方もいて大盛況。高山氏のトークも絶好調、あっという間の2時間でした。




    ■書評

    山口博之氏書評 ブレーン 2014.6月号
    本を選ぶ選書という仕事をしながら、活字の本を読み始めたのは、18歳、大学に入ったときから。マンガと片手で足りる程度の文庫本しか知らなかった僕は、大学の授業で教わる英米文学と平行して、ひとりいろいろな本の世界へとハマり込んでいきました。
    高山宏を知ったのは、高山さんの盟友荒俣宏の本経由だったか、松岡正剛のだったか。ファッションのことにしか興味のなかった僕が、学問の世界でおもしろい!と素直に感じたのが表象論、視覚文化論でした。神戸芸術工科大学大学院での授業を書籍化した本書は、自分の大学で受けた高山先生の授業同様、大量のビジュアルコラージュ資料を傍らに独演会状態で語られたもの。ある秩序、文化の体系の中で並べられる辞書をデザインとして語り、インテリアと推理小説を鮮やかに結びつけ、詩と文学を視覚的に読み解く。いま思うとその手腕や手法は完璧に編集者のそれであり、地と図、絵と言葉、歴史の深みと文化の広がりなど、絡みあう事象から新しい世界がいくらでも見えてくることを教えてくれた1冊。

    デザインの現場 2002.12月号
    貴重な講義を杉浦康平の装幀によって紙上に再現した一冊である。




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