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科学の運[詳細]


幸運(セレンディピティ)は備えある人にのみ宿る

ルイ・パスツール



■目次より

第1章 物理学上の発見:電気から放射能へ
    カエルの筋肉が痙攣したのは(ガルバーニとボルタ)  
    教室実験が電磁気発見をもたらした
    洞察の閃きと誘導電動機の発明
    暗闇の蛍光:X線の発見
    曇り空が放射能の発見に味方した
第2章 原子核から宇宙へ
    メーザー、レーザーと「ビッグバン」理論
    メスバウワーの無反跳原子核共鳴
    ハーシェル、アダムズ、ルベリエの新惑星
第3章 化学と生化学における偶然の導き
    酸素は誤謬から発見された
    ヴェルツェリウス、ウェーラー、そして尿素
    パーキンとアニリン染料
    染料か薬物か
    どうしてクロニジンが…?
    間違ったお米とビタミンB
    スイッチ、スイッチ、スイッチ:インチキホッキン?
第4章 微生物学における幸運と失望
    幸運は備えある人にのみ宿る
    潜伏性チフス?
    産褥熱とゼンメルワイスの悲劇
    スロットマシーンと砕け散った試験管
    忘れ去られた形質転換
    臭化水素と遺伝暗号
    多型現象:オーストラリア抗原と肝炎ウィルス
第5章 ペニシリンの発見:偶然か必然か?
第6章 抗生物質の発見
    発見されなかった抗生物質
    躊躇に徹したワクスマン
    ツメガエルとマゲイニン
第7章 人間の行動を変えるもの…?
    笑気ガス、エーテル、そしてクロロホルム
    局所麻酔術:それはコカインから始まった
    エンドルフィンとトーマス・マンの予言
    偶然から発見されたトランキライザー
    幻覚剤と精神障害治療薬の発見
    精神神経免疫学の誕生
    カツオノエボシとアナフィラキシー
第8章 医学上の諸発見
    夜間ドライブと発見
    人間を眠らせるもの?
    シェーファーは目を丸くした
    ラジオイムノアッセイの発見
    止血法の変遷:クエン酸からヘパリンへ
    細胞の凍結保存法
    生水から発見されたリンゲル液
    パパインとウサギの垂れ耳
第9章 嘘のようなインスリン物語
    パンチングとベスト
    インスリン発見史を振り返って
第10章 事実の正体とは?
    思考集団と科学的事実
    水平思考と拡散思考の役割
第11章 私的なエピローグ





■著者紹介:アレクサンダー・コーン Alexander Kohn 1919-

ポーランドに生まれ、1937年にパレスチナに移住、エルサレムのヘブライ大学に入学し、微生物学を専攻する。1940年から46年まで軍籍。47年にM. Sc.、51年にはPh. D を取得。52年から新設されたイスラエル生物学研究所所員となる。54年、生物物理学部門(後のウイルス部門)主任。70年から73年まで同研究所所長。71年、テルアビブ大学医学部ウイルス学教授に就任し、87年より同大学名誉教授。イスラエル微生物学会会員、元会長。著作や論文執筆、医学専門誌の編集にたずさわるほか、科学を諷刺したユーモア雑誌『Journal of Irreproducible Results (再現できない結果ジャーナル)』を1955年にアメリカで創刊、89年まで編集長/編集委員をつとめる。邦訳書はほかに『科学の罠』がある。




■関連図書

科学の罠 過失と不正の科学史 A・コーン 3107円
生命とストレス 科学的発見をめぐる方法と精神 H・セリエ 2200円
アインシュタインの部屋 天才たちの奇妙な楽園 E・レジス 上・下 各1800円
お母さん、ノーベル賞をもらう 14人の女性科学者の発見的生涯 2800円
エラズマス・ダーウィン 破天荒な発明家・詩人・医者の生涯 D・キング = ヘレ 6500円
ニュートンと魔術師たち 科学史の虚像と実像 P・チュイリエ 1900円
「ふと…」の芸術工学 神戸芸術工科大学レクチャーシリーズ 杉浦康平編 2500円



■書評

森谷正規氏(1991年3月1日)
「ここで描かれているのは、単なる運、不運のエピソードではない。豊富な実例を通して、偉大な科学の成果がいかに生まれるかの本質に迫ろうとしている。それは時代の思潮、時代の知性のレベルにも強く影響されるのであり、“発見がなされるのは、その機が熟し、知識の隙間を埋めてくれるものとして時代がそれを容易に受け入れるときなのである”とコーンはいう。
 自ら研究者でありながら科学諷刺雑誌を創刊し、また科学の不正行為を分析した『科学の罠』を著したコーンは、崇高にも見える科学研究を身近に引き寄せて、時代や環境の揺れ動く波間を賢明に泳ぎ続ける人間の生々しい営みとして描いている」

『科学朝日』(1991年4月)
「レントゲンが陰極管から出る、目に見えない新顔の放射線に気づきX線と命名したところ、同様の現象を見ていた研究者は彼一人ではなかった。しかし、観察を綿密に、体系的に追究していったのは彼だけだった。X線のほか、メーザー、レーザー、さらに宇宙のビッグバン理論など、物理学分野の話題もあるが、著者の専攻(ウイルス学)に近い生物、医学の分野が大部分を占める。
 なかでも、著者が多くのページをさいているのは、ペニシリンとインシュリンである。表彰されるのは、最初の発見者というより、その発見の意義を人々に知らしめた人の場合が多い。また、あのアインシュタインがいったとか。真理にとって最大の敵は、権威者の頑迷である」



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