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ペルシャの鏡[詳細]


バロック的想像空間への誘い


ルーマニア出身の学生ルイは、古い修道院蔵書の中で発見された
ライプニッツの知られざる弟子アロイシウス・カスパールの手稿に魅せられる。
「実体とは鏡自体をも映し出す凹面鏡のようなものではないか」——
アロイシウスのライプニッツへの問いが、
ルイを「可能的世界」の迷宮に連れ出していく…



■目次より

1 『ライプニッツの形而上学叙説への批判的注解』
ルーマニアの古い修道院蔵書の中で発見されたライプニッツの知られざる弟子アロイシウス・カスパールの手稿。ライプニッツの「可能的世界」への批判的な考察が展開される。

2 『異端審問教程』
スペインの大異端審問官の秘書、アルパル・ツサニーが記した詳細な異端審問実践書。異端のざわめきを聞くための「沈黙と恩寵の法」が述べられる。

3 『饗宴』
ミラノの地下出版社が出した好事家向けの限定本。プラトンの『饗宴』の形式を借りて、快楽に行き着くことのない愛は絶望の表われであることを証明する。


4 『エル・マハディ』
ルーマニアの俗物知識人グロスの主著で、韻文五幕の悲劇。スーダンの大反乱を舞台に、鏡像に復讐される支配者エル・マハディが描かれる。

5 『ペルシャの鏡』
 本書の主人公ルイが文学セミナーの課題として執筆した創作。人間の欲望を担う分身を無限に創り出す「ペルシャの鏡」に魅入られた男の顛末が語られる。





■著者紹介:トーマス・パヴェル Thomas Pavel 1941-

1941年4月4日、ルーマニア、ブカレスト生まれ。62年、ブカレスト大学にて言語学修士号取得後、69年までブカレストにある言語学研究所の準研究員。また64〜65年にかけてはルーマニアの週刊誌『ルッカファルール』の外国文学部門の編集長を務める。70年より、カナダのオタワ大学で教鞭をとり、現在教授。71年、パリ第3大学にて言語学博士号取得。カナダペンクラブ会員。
著書にエッセイ集『声の抑揚』(1976)、研究書『コルネイユの悲劇における語りの統辞法』(1976)など。


■関連図書

ライプニッツの普遍計画 バロックの天才の生涯  5340円
ライプニッツ術 モナドは世界を編集する 3800円
世界の複数性についての対話 フォントネルによるお洒落なSF 1900円
地球外生命論争 カントからロウエルまでの世界の複数性をめぐる思想大全 20,000円
ケプラーの憂鬱 孤独な天文学者の半生 2500円
星界小品集 ゼンマイ仕掛けのスペースオペラ 1600円
夜の魂 天文学逍遙 2000円
夜の国 心の森羅万象をめぐって 2500円
子午線 メートル異聞 2427円
銀河の時代 上・下 宇宙論博物誌 各2200円


■書評

◎石堂藍氏(『幻想文学』第40号・1994年1月)
「幻想と現実との混交、そして現実を幻想の中の入れ子にしてしまうというパヴェルの試みは実にみごとに決まっている。同時に幻想の書物、そしてそれにまつわる幻想の物語もすべて読みやすいながらも、哲学的刺激に満ちている。本としては薄いのだが、佳品としておすすめしたい」



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