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綺想の帝国[詳細]


あばかれる七つの謎

1・・・「祈祷書」に描かれた昆虫や草花が暗示するもの。
2・・・ルネサンス人はいかにして陰影を描写したのか。
3・・・模倣は芸術習得にとって正当な方法だったのか。
4・・・アルチンボルド作品が皇帝の肖像画である理由。
5・・・凱旋門のデザインに込められた最新の科学知識。
6・・・絹織物技術と怪奇趣味の間の密接な関係。
7・・・「驚異の部屋」に集められた奇怪な事物の意味。



■目次より

序章 自然の掌握 パラダイムと問題点
「古代復興」と「新科学」/宮廷の役割/ワールブルクの方法/ルドルフのプラハ/ 「マニエリスム」への疑問/本書のテーマについて

第1章 自然の聖別 15、16世紀ネーデルランド写本装飾におけるだまし絵の起源
ボスクカイの字体見本帳/静物画の誕生/ホフナーゲルと「ヘント = ブルッヘ」写本群/『クレーフェのカタリーナの時祷書』/虚構としての空間/テキストと図像の関係…

第2章 影の遠近法 投影理論の歴史
*投影をめぐるアルベルティの理論とその先駆者たち
アルベルティと絵画の起源/古代の光学理論/アラビア科学と中世ヨーロッパ…
*レオナルドとデューラーによる投影理論の発見
レオナルドの誤解/自然的透視図法と人工的透視図法/輪郭線の否定/デューラーの混乱…
*16世紀から17世紀にかけての投影理論に対するレオナルドとデューラーの影響
ウバルドとバルバロ/グイドバルドの射影幾何学/ドゥ・コーとマロロワの時代
*批判と訂正:ぼかしと太陽光による投影
マンデルの批判/アギロンの訂正/アッコルティの投影機/デザルクによる解決…

第3章 自然の模倣 デューラーからホフナーゲルへ
模倣されるデューラー/ホフナーゲルのデューラー頌歌/『友愛の書』/詩作上の技巧/美の女神パラスと普遍人/新禁欲主義者の徳/ヘルマテーナーの政治的・倫理的側面…

第4章 自然の変容 アルチンボルドの宮廷的寓意
*フォンテオと彼のアルチンボルド解釈
フォンテオの出自/新年の贈りもの/新しいカエサルのために…
*アルチンボルドの独創的な絵画の鑑定
「空気」/「土」
*皇帝の顔:アルチンボルドによる変容の構成
宇宙と人間世界の照応/ハプスブルクの結婚政策
*アルチンボルドと皇帝イメージ
孔雀と金羊毛/世界支配の予言/アルチンボルド・イメージの波及
*アルチンボルドによるウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世の肖像
季節と諸元素の神/真面目な遊戯
補説 アルチンボルドとプロペルティウス:ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世と古典世界

第5章 ルドルフ二世の凱旋門 1577年のルドルフ二世ウィーン訪問時の天文学、技術、人文主義、美術:ファブリティウスの役割
二つの凱旋門/ファブリティウス一覧表/象徴の門/天球儀と地球儀/メランヒトンとコペルニクス/占星術・天文学・医学・植物学…

第6章 プラハにおける「古代と近代」:アルチンボルドの素描と絹織物業
*アルチンボルド発案の「デザイン」
試みという概念/しみとデザイン/スケッチと怪奇趣味
*アルチンボルドの怪奇趣味
洞窟の絵画/怪奇趣味論争
*アルチンボルドの怪奇趣味と気まぐれ
妄想としての絵/近代を象徴する絹織物
*アルチンボルドと「古代・近代戦争」
新しい怪奇趣味/「古代・近代論争」史/新発見を描く
*プラハにおける古代と近代:アルチンボルドの観客、芸術と科学
ホフマン男爵の周辺/進歩する芸術/古代への優位/ルドルフ朝の機械文化

第7章 世界の掌握から自然の掌握へ:芸術室・政治・科学
*世界の掌握? 芸術室と文化政策
自己表現の劇場/蒐集の機能/象徴的な自然/小宇宙としての芸術室…
*有用性の変容:世界の掌握から自然の掌握へ
フランシス・ベーコンの提案/「自然魔術」の実践/ケプラーと鉱物標本/望遠鏡による支配…




■著者紹介:トマス・D・カウフマン Thomas DaCosta Kaufmann

プリンストン大学美術史・考古学教授。学生時代は文化史および精神史を研究。1960年代後半よりヨーロッパ初期近代の研究をスタート。70年代初頭はワールブルク研究所に所属、ゴンブリッチやフランセス・イエイツの影響を受ける。またJ・S・アッカーマンによる芸術と科学との相互関係をめぐるセミナー等の参加を通じ、芸術作品を読み解く独自の視点を獲得する。


■関連図書

キルヒャーの世界図鑑 よみがえる普遍の夢  2900円
薔薇十字の覚醒 隠されたヨーロッパ精神史  3800円
バロックの神秘 タイナッハの教示画の世界像  8000円
表象の芸術工学 見世物・マニエリスム・驚異の部屋 高山宏  2800円
ケプラーの憂鬱  孤独な天文学者の半生  2500円
ルネサンスのエロスと魔術 想像界の光芒  4800円
記憶術と書物 中世ヨーロッパの情報文化  8000円


■書評

◎高山宏氏(『読書新聞』1995年7月22日)
「「アルチンボルドがいた世界はけっしてカフカのプラハではない」というカウフマンは、画家周辺にあって同様に帝国と皇帝を顕彰する詩や入市凱旋門をつくった芸術家たちの作品を、イエイツやロイ・ストロングがかつて我々を瞠目させた深いアレゴリー理解と執拗な実証的な読みで読みほぐしていく。文学テクストや視覚芸術、産業の材料など一切区別せず、ルネサンスの「学際的な他家受粉」をそっくり擬態するかのように解読していくイエイツ流のやり方もそろそろ飽きたかなという感じでいたが、全然そうではないことを『綺想の帝国』が立証した。このやり方でのみ「ルドルフのプラハという環境のメンタリティ」は描きだせるのだと著者はいう。アルカナ・インペリイ(政治の秘密)にも関係せざるをえなかったことを説いたイエイツ女史の着眼と手法がこうして脈々と生きていることが確認できて嬉しい」



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