奇天烈紳士録[詳細]
Eccentric Lives and Peculiar Notions
愛と悲しみの非常識!
今なお、地球が平らであると信じる人々。
歴史を陰で操る秘密結社の陰謀を暴こうと血眼になる女性。
超保守的・超伝統主義の大英帝国の下院議員。
奇妙奇天烈な考えに取り付かれ、
自らその「実践」と「啓蒙」に没頭した人々が織りなす愛しくも哀しい人生模様。
ああ、信じる者に幸あれ!
■目次より |
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◎彼女は私への愛を認めるのが恥ずかしいだけなのだ
恋に落ちて…/誘拐犯になろうとも/愛は強く、狂おしく
2 サマーセットの系図学者 イアン・スチュアート・ミル
◎妻の霊視能力でアーサー王の系図を解く
アーサー王の子孫として
3 平らな地球の信奉者 レディ・ブラント
◎地球が平らであることは証明可能な事実である
パララックスの平坦論/進化論者ウォレスの挑戦/レディ・ブラントの熱意/今日の平坦論者たち
4 地球の内側に住む人間 サイラス・ティード
◎この世界は空洞の地球内にある
新科学的宗教“コレシャニティ”の証明/新エルサレムへの道/予言者亡き後も
5 不屈の神父 ジェレマイア・オキャラハン
◎何も当てにせず、ただ貸しなさい
利子は神に背く行為/出版人による援助
6 超保守的な下院議員 チャールズ・ド・ラエット・ウォルド・シブソープ
◎絶対に「改革」など認めない! 外国人は全員スパイだ!
反動主義、排外主義を体現/鉄道は「蒸気のたわごと」!
7 陰謀学のファースト・レディ ネスタ・ウェブスター
◎歴史を操る秘密結社を白日のもとに!
誰が「スパイ」か/陰謀研究家の少女時代/秘密組織イルミナティ/世界を駆けめぐる悪の力/アメリカ人により持ち去られた原稿
8 彫像と話した男 ルートヴィヒ・ド・ギルテンシュトゥブ
◎私は死者からの直筆メッセージを得た
霊界からのメッセージ
9 二人の奇妙な領主 ロクビー卿とリー・ウォーナー
◎過剰な放任と過剰な寛容さ
紳士の政治・経済・思想/親切すぎる領主がしたこと
10 ラトビアの失恋男 エドワード・リーズカルニン
◎この城は、いつか彼女と住むために
珊瑚と石の宮殿
11 野人を訪れた裁判官 モンポッド卿
◎その地では「尻尾をもった人間」が多く生まれているのです
モンポッドとオランウータンの国/尻尾人間のように
12 優良人間を作る科学者 フランシス・ゴールトン
◎優れた人間だけが子孫を残す権利がある
C・ダーウィンの奇妙ないとこ/優生学の提唱と実用
13 氷結戦艦の発明者 ジェフリー・ナサニエル・パイク
◎パイクリートこそ戦争を終わらせる大発明
いじめ、偏見に挑んだユダヤ人/氷の船ハバコック
14 最後のドルイド エドワード・ウィリアムズとプライス博士
◎美しきウェールズの伝統は死なず
伝統に生きる男/古代ウェールズの復権/ロッキング・ストーンのプライス博士/最後のドルイド
15 聖書を書き換えた男 ウィリアム・コミンズ・ボーモント
◎イギリスこそ人類文明発祥の地である
イエスはイギリスで生まれた!/いまだ明かされぬ最も偉大な…
16 頭に孔を開ける人々 ジョーイとアマンダ
◎開頭手術で閉ざされた意識を拡大しよう
電気ドリルで脳を解放しよう/二人は信じ、実行した
17 蔵書狂 トーマス・フィリップス vs ハリウェル
◎世界のすべての本をわが手に!
結婚さえも本を目当てに/紙・印刷・本への執心/愛すべき「独り占めの妖怪」
18 英国選民思想の説教師 エドワード・ハインとシャフツベリー卿
◎神に選ばれしイギリス人には大いなる使命がある
ギリス人とユダヤ人/善行中毒の紳士が悔む唯一の失敗/選ばれし民のアイデンティティ/雄弁家ハイン氏のアメリカ伝道
19 シェークスピアを疑う者 デライア・ベーコン
◎あんな間抜け男であるはずがない!
ストラットフォード派の不安/F・ベーコン説の抬頭/決定的証拠を求めた女性/シェークスピア劇の哲学の真実
20 偉大なる異端者 イグネイシャス・ドネリー
◎「シェークスピア」劇は大いなる暗号に満ちている
アメリカの政界を揺るがせた男/暗号を解読する/異端者として生きぬく
21 F・ベーコンの選ばれた解釈者 ダーニング・ロレンスとオーウェン博士
◎ベーコン卿が残した宝物が必ずあるはずだ!
ベーコンの暗号の鍵/ある心霊主義者の背後に/ベーコンの箱の宝探し/フロイトの分析
22 UFO研究者たち ジョージ・アダムスキー
◎彼らは金星から来たと語った
宇宙からの訪問者/世界をおおうUFO熱
■関連図書(表示価格は税別) |
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■書評 |
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◎『日本経済新聞』(1996年3月10日)
地球が平たんであると信じて疑わない「科学者」、「外国人は全員スパイだ」と決めつける議員、「世界のすべての本を我が手に」という欲望に取りつかれた蔵書家……。著者は英国人らしいユーモアを感じさせる筆致で、バランスを欠き社会からかい離していく人々を愛情をもって描く。楽しんで読んでいられるのもこういった人たちが身近にいないからかもしれないが。
◎鹿島茂氏(『朝日新聞』1996年12月1日)
古書収集家の話は一話だけだが、この一話に登場する蔵書狂がすごい。彼は夫人が死ぬと、持参金を全部古本につぎ込んだ。しかし彼には強力なライバルがいた。娘婿である。娘婿は蔵書目当てで娘に近づき、義父の死後、蔵書をまるごといただくことに成功した。まさに血も涙もない蔵書狂の「戦い」である。