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古木(こぼく)の物語[詳細]

目次 著者紹介関連図書書評Planetalogue:一樹一影を生きる



イチイガシ

「大いなる木」と「人」の15編の物語

晩秋の夕陽を浴びる古木。
その姿はまるで「市井の仙人」のよう。
干ばつ、大洪水、地震、豪雪、
相次ぐ災害に見舞われ続けた一千年もの間、
傷つき耐えて、なおも共に生きる巨樹は人々の心の支え。
荘厳な杉参道に結実した歴史の偉業、篤志信の念仏者ゆかりの柿の木・・・
ときに威風堂々と、ときに素朴に平凡な姿で、ただ静かに
この世の人々の生業を見守る大いなる木の精霊たち。

日本人と木との暮し、カミ観念や信仰心を綴る十五の物語。

樹木の声が聴こえる、
    人の心が観えてくる。




■目次より

序 木は人のおもかげ
樹齢二千年の桜から
心の視点で巨樹をとらえる
日本人にとって「木」とは
一老人のように

第1部 木の声
1章◎「市井の仙人」 鳩山、八幡神社のイチイガシ

実篤の「新しき村」
まるで「市井の仙人」
2章◎越後、虫川の大杉は現代の閻魔大王
風雪に耐えて一千年
大杉は村の宝
うしろ姿に野生が残る
厳しくも慈しみ深い自然
3章◎天翔る楠の壮大なロマン
生きている古代神話
住吉大社と楠の木
船材—航海安全—太陽—三ツ星
4章◎坂東霊場、大慈大悲の慈光寺の榧(かや)
修験道場の巨樹
聖地の七木、七井、七石
御仏の面影を宿す
5章◎大椎は日蓮の声を聞いたか
巨樹と僧を物語る地
民衆とともに生きた日蓮
「法華経」こそが真の仏教と
日蓮を彷彿とさせる大椎
6章◎会津、歴史を覗いた二本の大ケヤキ
再会した「高瀬の大木」
秀吉没して会津の地は・・・
「八幡のケヤキ」と英国女性
大ケヤキの下、参勤交代の道
7章◎羽黒山の杉参道を整備した偉業
巨樹のなか、神に近づく
大和に通じる山岳信仰の聖地
世俗勢力の渦
天宥、三山中興の祖
仏の石の上、杉苗が育つ

第2部 人の心
1章◎一期一会の木となった幻の「根上り松」

宇谷の連理根上り松
究極の舞台装置
一期一会の巨樹となった松
2章◎木喰、刻印二百年の立木仏
いまも会える立木仏
仏像を刻み続けた生涯
彫り込まれた「耳の薬師様」
厳寒期に立木仏を彫る
自らを仏と成すために
巨樹の寿命を生きる仏
3章◎古のときを想わせる、波崎の大タブ
艶やかで強い大タブの自然林
根もとにはお大師さま
「タブ」は「玉」「霊」か
4章◎妙好人・因幡の源左と柿の木
生き仏とされた人
「ようこそ、ようこそ」
ふいっと分かったこと
庭の柿の実は仏さまの恵み
木は必ず応えてくれる
全国に「妙好人」が現れる
5章◎小説家、有島武郎の最後を知っていた木
一枚の木のスケッチ
誕生、家族、友、信仰、旅・・・
「—さびしき我を見いでけるかも」
心模様を映す木の描写
6章◎極楽浄土へ導く善光寺の回向柱
熱い信仰の地
哀切、親子地蔵の物語
極楽浄土へ導く供養塔
回向柱も成仏してゆく
7章◎日本の祖霊と巨樹
霊魂観、祖霊信仰、原郷意識
「小池祭り」と赤松の存在
祖先の霊が宿る大楠
8章◎木を迎え、木を送る
「あるべき様」に
聖なる「柱」
謎めいた神事
木の文明を開いた「柱」
鳥総立ての心意
草木供養塔

収録「古木」マップ
おわりに

本書は当webサイトの連載[一樹一影を生きる]をまとめたもの。 [Planetalogue:一樹一影を生きる]>>>

立木仏

宇谷の根上り松



■著者紹介:牧野和春 (まきの・かずはる)

1933年、鳥取県生まれ。慶應義塾大学文学部卒。ジャーナリストをへて1968年、牧野出版を創立。精神医学関連を中心に出版。併せて日本人の心を関心事に執筆活動を続ける。現在、惜水社社長。桜と巨樹への思い入れは深い。『樹齢千年』(1979年、牧野出版)は巨樹ブームの導火線となった。『本朝巨木伝』『桜伝奇』(ともに工作舎)のほか、次の著作があげられる。『桜の精神史』(牧野出版)、『新桜の精神史』(中央公論新社)。『巨樹の顔』(共著・朝日新聞社)、『巨樹と日本人』(中公新書)、『日本巨樹論』(惜水社)、『森林を蘇らせた日本人』(NHKブックス)、『鎮守の森再考』(春秋社)、『円空と木喰』(共著)『凡夫の民芸論』(いずれも惜水社)。常に現場主義、臨場感をもとに生身の人間としての体感と思索を重視。「事上磨錬」が座右の銘。奥武蔵在住。




■関連図書(表示価格は税別)

  • 本朝巨木伝——日本人と「大きな木」のものがたり  牧野和春 2200円
  • 桜伝奇——日本人の心と桜の老巨木めぐり  牧野和春 2800円
  • 縄文の地霊——死と再生の時空  西宮紘 2900円
  • 地下他界——蒼き神々の系譜  萩原秀三郎 2400円
  • 雲南の植物と民俗——遥かなる日本人のふるさと  前川文夫+湯浅浩史ほか  3200円
  • 滅びゆく植物——失われた緑の楽園  ジャン・マリー=ペルト 2600円
  • 花の知恵——小さな命の神秘世界  M・メーテルリンク 1600円
  • 植物の神秘生活——緑の賢者たちの新しい博物誌  P・トムプキンズ+C・バード 3800円



  • ■書評

    2007.12.11付 日本海新聞 書評
    ページに吸い込まれそう
    …木は単なる木にあらず。人に語りかけ、ときに笑い、ときに涙を見せるのである。このように直言するのは巨樹と桜に魅せられた随筆家の牧野和春さんだ。…豊かな資料や挿話が明快な文章で紹介され、読みながら体ごとページに吸い込まれそうになった。快著である。 …(須崎俊雄/文芸誌『断層』同人)

    2007.12.2 THE NIKKEI MAGAZINE 書評
    …古希を過ぎた著者の、巨樹に対するまなざしが温かい。一期一会の心で各地の古木と向き合い、その体感を素直な気持ちでつづっている。30年近く全国各地の木々を見つめてきた著者だけに「巨樹の立ち振る舞いには尋常ならざる気を感じる」との言葉には説得力がある。
     登場するのは新潟県上越市で風雪に耐え抜いた大杉や、埼玉県ときがわ町の大榧(おおかや)など推定樹齢数百年から一千年の木々だ。著者は歴史を重ねた樹木を通じて、その地に生きる人々の暮らしやゆかりの人物に思いをはせ、日本人の心に刻み込まれた自然を敬う心を描き出そうとしている。…(松永高幸)






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