家族をこえる子育て[詳細]
ひとりで悩まないで !
こうのとりのゆりかご・里子・養子・未成年後見・シェルター・面会交流・被害者加害者対話…… 家族問題研究会30年の成果
人間は弱いものではあるが、それでも子どもたちは無限の可能性と無限大のパワーを持っている。それを存分に発揮させるのは大人の役目だ。自分の子であろうと他人の子であろうと、血がつながっていようといまいと格段の違いはない。そう思い定めて、大人が子育てにかかわっていく時、新しい未来が拓けてくるのではあるまいか。
(あとがきより)
■目次 |
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逆境の彼方の輝きをもとめて 渥美雅子
第1章 窮極のセーフティネット
──親はなくとも子は育つ社会を 大塚喜一+渥美雅子
1 間引きを見かねた子育て善兵衛
2 捨て子の救済、江戸から明治へ
3 戦災孤児、そしてコインロッカー・ベビー
4 こうのとりのゆりかご
5 世界のゆりかご(baby box)
6 ゆりかごは将来いらなくなる?
第2章 親のない子を育てる親──里親制度と養子制度 中川良延
1 親のない子は今どこに?
2 施設養護から家庭(的)養護へ
3 里親制度の問題点と解決策
里親委託手続きの流れ/なぜ里親による里子死傷事件を防げなかったのか/
里親(家庭)支援の重要性/自立支援計画の見直しによって里親支援を
4 養子制度とくに特別養子縁組制度の問題
藁(ワラ)の上からの養子と特別養子制度/普通養子縁組と特別養子縁組/
養子縁組の「あっせん」問題をめぐって
5 新しい時代に向けた新しい制度を
第3章 親代わりに頼れる人と場所
──未成年後見とシェルター 松井美知子
1 〈子ども〉を取り巻くさまざまな逆境
2 親に代わる未成年後見人
3 〈子ども〉を守る児童福祉法と児童虐待防止法
4 〈子ども〉が成長するためのさまざまな「おうち」
児童養護施設退所後の〈子ども〉の受入れ施設/〈子ども〉の一時避難所/
施設やシェルターの保護を受けずに成人したケース/
東日本大震災によって生じた孤児の問題/ライフストーリーワークとは
5 懸命に生きる二〇年間を支えるもの
第4章 別れても親、離れても親──面会交流をサポートする 深沢 實
1 面会交流はどのように行われるか
2 さまざまな事例
case A難航した離婚紛争後、自己中心的な別居親との面会交流
caseB 父親が遠方から面会交流に来る
caseC 援助を卒業し父母の自力で面会交流できるようになる
caseD 子どもが拒否して面会交流できない
caseE 子どもが希望しているのに面会交流できない
caseF 父親が外国人(渉外離婚)の面会交流
3 面会交流を実りあるものにするために
第5章 非行少年の気づきのために──被害者との対話による関係修復 山田由紀子
1 被害者加害者対話の会とは?
2 非行をおかした少年が被害者との対話で得るもの
3 被害者にとっても有益な対話の会
4 非行少年の更生に役立つ「家族の対話の会」
5 性犯罪では無理? 被害者と加害者との対話
6 少年院内での「被害者の視点を取り入れた教育」
7 対話によるいじめの予防と対策
8 ボタンの掛け違いを直して
第6章 子どもはこう見る親の離婚──アメリカの子、日本の子 渥美雅子
1 子ども時代、私の場合
2 離婚を乗りこえる子どもたち
case A──カレンの場合「世話係になりたがる子ども」
case B──ラリーの場合「暴力と手を組む子ども」
なぜ暴力に与するのか/片親の喪失から両親の喪失へ
子どもに対するインフォームド・コンセント/醸成されていく怒り
親に対する不平を社会にぶつける/アメリカの面会交流/共同監護/
養育費/学費
3 成人後、私の場合
血縁をこえて 渥美雅子
家族問題研究会から未来の子どもたちへ 大塚喜一
■関連図書(表示価格は税別) |
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■書評 |
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●2014.4.27付 東京新聞
社会全体で子育てを 千葉の弁護士ら6人が共著
…編者を務めた千葉市中央区の弁護士、渥美雅子さん(73)は「ベビーシッターの事件が話題になったばかりだが、経済的に不安定なシングルマザーが増えるなど、厳しい子育て環境にある人は多い」と指摘。「地域全体が周りの子どもや親たちに、ちょっとでも目を向けるようになってほしい」と願う。…
●2014.4.7付 朝日新聞・千葉版
子どもは社会で守る 弁護士・調停員らが本に
…「親代わりに頼れる人と場所」という章(第3章)を担当し、未成年後見とシェルターについて書いたのは、四街道市の松井美知子さん。大学講師や千葉家裁家事調停委員の経験もある。未成年後見について深く考える契機になったのは調停員として関わったあるケースだ。
幼児を持つ夫妻がそれぞれ婚外恋愛をして離婚調停、2人とも「子どもを引き取りたくない」と主張した。親権を求める事例は多いが、双方が親権を放棄したいという現実に直面した。
「何の責任もない子どもの利益を守るためにはどうしたらいいか。子どもの心はどこへ行くのか考えた」と松井さん。逆境にある子ども、親に変わる未成年後見人、子を守るシェルター、児童虐待や東日本大震災でうまれた孤児の例も書き込んだ。
●2014.3.29付 毎日新聞千葉版
新しい子育て提言 家族の幸せ考える本出版
…虐待された子どもが一度保護され、再び親元に戻って命を落とす。そんな事件も各地で後を絶たない。「生活費もなく、未熟な親に子育てを任せるべきなのか。本でも取り上げた里親制度など、生まれてきた子どもを守っていく制度を充実させていくべきだ」と強調する。
同著は育児中の母親へのメッセージも込めた。「一人で育てなくてはと思わず、困ったら理行きの誰かに相談すれば、何かが開けるはず」と話す。
●ふぇみんNo.3051(2014.4.5付)
…中でも、非行少年と被害者の実際のやり取りを再現しながら、関係修復を解説した第5章は胸を打つ。被害者を罰するだけではなく、どうすれば罪の意味をしっかりと心に刻むことができるのか、言葉だけではない反省と向き合えるのか、具体的な提案であり、もっと知られていい問題である。…
●落合恵子さん主宰クレヨンハウス通信2014年4月号内 Woman's EYE
…70年代に若いカップルの嬰児殺人事件を担当して以来、家族や子ども、DVにかかわってきた渥美さんは、家族問題研究会をたちあげ、逆境におかれた子どもの可能性を伸ばせる社会の実現にむけて、実践と発信をかさねてきました。本書はその総まとめ。
●上野千鶴子さんたちのWAN(Women's action network)(2014.3.13付)
…こうのとりのゆりかご、里子、養子、子どもにとっての離婚、離婚家庭の面会交流、未成年後見、被害者・加害者の対話などのテーマを事例や実体験とともに紹介。当事者もまわりも、母性神話から解放されれば、さまざまな可能性が見えてきます。全文はWANサイトへ。
●2014.3.3 千葉日報
21世紀の子育てとは? 弁護士ら6人が“提案”出版
…(著者の一人で編集も担当した)渥美弁護士は「これまでの子育ては母親に頼りすぎてきた。子どもは社会の宝。両親が問題を抱えていても子どもが幸せに育つ社会的な仕掛けを作ろうと呼び掛けるのが本の柱になった」と語る。タイトルにもその思いを込めた。