貢献する心
[詳細]
地球は「利他の惑星」である
大橋 力「協調的世界像の起源」より
はじめに……谷川多佳子
「お互いさま」の絆をむすびあう 上田紀行[文化人類学]
「癒し」と仏教的「利他」のこころ/貢献する心を育む社会設計/
「貢献」とは何か、「利他」とは何か/今ここにいない世代に対する貢献/
「恩徳讃」に見る報恩と感謝/「限定交換」と「一般交換」/
ダライ・ラマが語る愛と思いやり/良き種を蒔けば、いずれ芽がでる
ロボットは貢献心をもつことができるか? 瀬名秀明[作家]
「思い」は見えないけれど/「他人を思いやるあたたかい心を……」/
本当の「思いやり」とは何か/
ロボットは「貢献心」をもつことができるか/
《神様》はユートピアをつくれるか
視点をつなぐ「ふれあい共想法」 大武美保子[サービス工学]
貢献学を目指すサービス学/マルチスケールサービス設計手法/認知症の不思議/
脳と筋肉は使い方次第/低下しやすい認知機能と会話/共想法の定義/共想法の実施/
視界の共有を通じて視点の違いに気づき、獲得する/共想法における視点の取り方/
異なる視点から見える世界を提供し合い、互いに貢献する/
視点がつながり発見が連鎖する
ライプニッツの互恵の哲学 谷川多佳子[哲学]
先駆者デカルト/
異なる文明——中国へのまなざし/
モナド/
生命体の科学と哲学の往復、同時代の宗教・寛容
他者を思う心の進化:共感と幻想 長谷川眞理子[進化生物学]
ヒトは他者の心を読み取ろうとする動物/
互恵的利他行動/囚人のジレンマ/「合理的ではない」人間の心理/
実験室で見られる動物たちの行動/ヒトが持つ共感と幻想
協調的世界像の起源 大橋 力[情報環境学・芸術家]
協調的世界像の源は〈心〉か〈事象〉か/プログラムされた自己解体モデル/
仮想生態系上での[有死の生命]と[不死の生命]の増殖シミュレーション/
生きた細胞を用いた自己解体メカニズムの実証実験/
協調的利他的な自己解体を伴う死の遺伝子はどこから来たのか/
「利己」対「利他」という二項対立の無意味さ/
地球は〈利他の惑星〉
【討論会】震災後に語り合う生命と貢献心
ホモ・サピエンスに備わった「思いやり」心/
文明の発達が貢献心を歪めてしまっている?/
文明病としての自己解体=自死を乗り越えるために/
生命への視点が欠けたデカルト二元論の功罪/
ロボット研究の側から見た人間の心
おわりに……谷川多佳子
上田紀行(うえだ・のりゆき)
東京工業大学リベラルアーツセンター教授。価値システム専攻。スリランカで「悪魔払い」のフィールドワークを行ない、文化人類学の観点から「癒し」に関する研究をすすめる。また日本仏教再生に向けて、「仏教ルネッサンス塾」塾長や、宗派を超えた若手僧侶の討論の場「ボーズ・ビー・アンビシャス」のアドバイザーとしても活躍。東日本大震災後も、メディアでアクチュアルな提言を重ねている。
著書に『がんばれ仏教!』『目覚めよ仏教!─ダライ・ラマとの対話』(NHKブックス)、『生きる意味』(岩波新書)、『かけがえのない人間』(講談社現代新書)、『慈悲の怒り─震災後を生きる心のマネジメント』(朝日新聞出版)ほか。
瀬名秀明(せな・ひであき)
作家。東北大学大学院薬学研究科在学中の作品『パラサイト・イヴ』(日本ホラー小説大賞受賞、新潮文庫)で作家デビュー。『BRAIN VALLEY』『八月の博物館』『デカルトの密室』(新潮文庫)、『ハル』(文春文庫)、『希望』(ハヤカワ文庫JA)などの小説のほか、エッセイ集『おとぎの国の科学』(晶文社)、『世界一敷居が低い最新医学教
室』(ポプラ社)やノンフィクションでも幅広く執筆活動を展開。とくにロボットにおいては研究最前線を並走し、『ロボット21世紀』(文春新書)、『瀬名秀明ロボット学論集』(勁草書房)、『ロボットとの付き合い方、おしえます。』(河出書房新社)などを上梓する。最近では藤子・F・不二雄の漫画を原作とする『小説版ドラえもん のび
太と鉄人兵団』(小学館)を刊行し、子どもとロボットに育まれる思いやりの心をいきいきと描く。
大武美保子(おおたけ・みほこ)
東京大学人工物工学研究センター サービス工学研究部門准教授。「機械は固いもの」という既成概念を覆す「ゲルロボット」の開発にはじまり、工学と生命科学、医学、脳科学、情報学、計算機科学などの融合領域の研究テーマを開拓し続ける。2008年には実践研究のためのNPO法人「ほのぼの研究所」を設立し、代表理事・所長として、自ら開発した「ふれあい共想法」による市民参加形の認知予防サービスを柏市を起点に各地で展開している。
著書に『Electroactive Polymer Gel Robots ? Modelling and Control of Artificial Muscles』(Springer-Verlag)、『介護に役立つ共想法—認知症の予防と回復のための新しいコミュニケーション』(中央法規出版)。
谷川多佳子(たにがわ・たかこ)
筑波大学人文社会系教授。ホモコントリビューエンス研究所副所長。哲学・思想専攻。パリでデカルト、ライプニッツを中心に近代哲学を形成する思想・言語・イメージのダイナミズムを研究。現代哲学や日本思想の研究者はもとより、J?M・シャルコーにはじまる精神医学や美術、脳科学などをリードする研究者との交流により、新たな人間像、思想の可能性をさぐっている。
著書に『デカルト研究─理性の境界と周縁』『デカルト『方法序説』を読む』(岩波書店)、『主体と空間の表象─砂漠・エクリチュール・魂』(法政大学出版局)、訳書にR・デカルト『方法序説』『情念論』(岩波文庫)、G・W・ライプニッツ『人間知性新論』(共訳・工作舎)ほか。
長谷川眞理子(はせがわ・まりこ)
総合研究大学院大学先導科学研究科長・教授。日本人間行動進化学会会長。タンザニの野生チンパンジー、イギリスのダマジカ、スリランカのクジャクなどのメスによるパートナー選びの生態を研究。これらのフィールドワークを背景にして進化生物学、行動生態学の視点から、人間の本性の進化的研究を推進。性淘汰(選択)や利他行動など、いわゆる「最適者生存」や「弱肉強食」というような通俗化したダーウィニズムでは捉えられない進化の過程に光をあてる。
著書に『クジャクの雄はなぜ美しい?』(紀伊國屋書店)、『ダーウィンの足跡を訪ねて』(集英社新書)、訳書にH・クローニン『性選択と利他行動』(工作舎)、C・ダーウィン『人間の進化と性淘汰』(文一総合出版)ほか。
大橋 力(おおはし・つとむ)
文明科学研究所所長。国際科学振興財団主席研究員。科学者として、音響学、情報環境学、生命科学、脳科学、生態人類学などの超領域研究をすすめている。情報環境学を体系化しハイパーソニック・エフェクトを発見して中山賞大賞を受賞。芸術家として、山城祥二の名で芸能山城組を主宰。作曲、指揮、演出、制作などを通して、「自我表現」の限界を超える共同体としての芸術表現を展開する。
著書に『情報環境学』(朝倉書店)、『音と文明─音の環境学ことはじめ』(岩波書店)、『脳科学と芸術』(共著、工作舎)など。CD/LP14タイトルなど作品多数。「芸能山城組ライブ」でレコード大賞企画賞、映画「AKIRA」の音楽で日本アニメ大賞最優秀音楽賞など受賞。インドネシア・バリ州政府のダルマ・クスマ勲章(文化勲章)受章。
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