耳ラッパ[詳細]
『耳ラッパ』を読むと、われわれの日々の
悲惨な現実から解き放たれる
ルイス・ブニュエル(英語版惹句)文章も絵もいつも魅力的な女性の最も素晴らしいストーリー。
文章や絵を描く女性は自らを若く見せようとするものだが、
キャリントンは若いころから歳を取る喜びを感じる類い希な女性である。
著者をモデルにした主人公は新しい90歳代のアリスだ
■目次より |
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素敵なプレゼント |
■あらすじ・・・ |
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「七〇歳以下の人間と七歳以上の人間を信用してはだめよ。
猫でもないかぎりね……」
親友のカルメラからプレゼントされた素敵なオブジェ、耳ラッパ。92歳の風の老女マリアンが帰宅して廊下の暗がりでそれを耳にあてると、息子と嫁、孫も加わって言い争いをしているのが聞こえてきました。「もう決めただろう」「遅すぎるのよ」「婆さんは人間のうちにはいらない」「ホームの方が幸せよ」……
二匹の猫と小さな裏庭に面した部屋で暮らす平穏な日々は、その瞬間に崩れ去りました。 お城のような本部をとりまいて毒キノコや客車や塔などさまざまな形の離れが点在する老人ホームで、マリアンは個性豊かな老女たちと出会い、不思議な絵や本に記された尼僧院長の魂の遍歴を追体験したり、殺人事件や施設の管理主義にたちむかったり、痛快な冒険の日々を送ります……
新氷河時代を迎えた地球を救うのは誰?
■関連図書(表示価格は税別) |
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■書評 |
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●増田千穂氏(『美術手帖』2003年11月号)
巨匠による小説もどうぞ。…老人ホームで個性的な仲間たちと繰り広げる、シュールな冒険物語
●『エフ』(2003年11月号)
奇妙な老人ホームを舞台に、物語は老婆の記憶と妄想をたどってイギリスの魔女伝説へ
●WEB すみ&にえ「ほんやく本のすすめ」
すみ=なんというか、ぶっ飛び方が半端じゃないよね。この小説じたいをあえて説明するなら、 「不思議の国のアリス」のアリスが老婆になって、40度以上の高熱を出しているときに見た悪夢、みたいな(笑)
読んでて、やれるだけやったなってニンマリする小説はあるけど、この小説は、どこまで 連れていかれちゃうの? 助けて〜!! って感じだったよね。
にえ=最初のほうはユーモラスで、ウフフって微笑みながら読んでるんだけど、最後のほうは顔を 引き攣らせて、ヒステリックな笑い声をあげながら読みたくなるような。
●山形浩生氏(朝日新聞 2003.10.5)
シュルレアリスム画家としても幻想小説家としても名高いレオノーラ・キャリントンの代表作。92歳の老婆が、友人に補聴器(=耳ラッパ)をもらい、家族に老人ホーム送りにされたことから生じる一大幻想絵巻。ボケ老人的な論理の飛躍が次々に繰り出される、自由連想じみた物語の奔放さは比類がない。尾ひれをつけた老婆の妄想だったものが、いつの間にやら異性物との交流に世界変革といった壮大な話にふくれあがる様子はただただ驚くばかり。ボケ老人になるのがこんなに楽しいとは!
読み進むうちに、飛躍して見える各種の展開に、何か説明しがたい論理性が感じられてくるのも本書の醍醐味。キャリントンの描く不思議な味わいの絵とも共通する夢の論理だ。そうした絵やスケッチ、写真も何点か収録されており、様々な楽しみ方のできる味わい深い一冊。現在巡回中の「フリーダ・カーロとその時代」展にも彼女の絵があるのであわせてお薦め。
●中村びわ氏(bk1)
…女神たるキャリントンも霊感を与えるだけでは飽き足らなくなり、自分が得た霊感を創造に向かわせ自立した女性となっていく。耳ラッパを手にした老婆の行動が、それに寄り添う気がする。「自立」は物語後半に思いの他のスケールで展開していく。西欧文化を支えるキリスト教の教義や聖杯伝説、騎士道物語などに踏み入り、超現実を物語の現実化に痛快にすり変える。ファンタジーってこんなに面白おかしくラディカルに伝統や制度に当たっていけるのかと感心すると同時に、これがブルトンの宣言に即した、よく練られた実践小説であることに気づかされる。…キャリントン自身の挿画、相も変わらず凝りに凝りまくりの工作舎の装丁(子持ち罫の四隅にある罫の細さは何だ!?)について書く幅がない。残念!
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●ダ・ヴィンチ(2003年10月号)
…乳母の語るアイルランドの伝説・昔話に影響を受けた著者の描く奇想天外な幻想譚……
●東京新聞(2003.8.28 夕刊)
一癖二癖ある老人たちに独裁的な施設長夫妻、ウインクする尼僧の肖像画、殺人事件、反乱、氷河期の再来……老いの身空、妄想と覚醒の狭間をたゆたう悦楽をあなたにも
●産経新聞(2003.8.17)
好奇心旺盛な老女の冒険をシニカルに描く。女性シュールレアリストが紡ぐ奇想天外な物語