ナノテクの楽園[詳細]
これはすごい!
いまさらSFを読む奴の気が知れない。
——『ワシントン・ポスト』
レジスは万病を治し、
草をステーキに変える
ナノの恩恵と危険を余すところなく描き出した!
——『サンディエゴ・ユニオン=トリビューン』
超微小マシンの無限の可能性を鮮やかに描く
科学ジャーナリズムの登場!
——『ニューヨークタイムズ・ブックレビュー』
■目次より |
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第1部 限界
第1章 kTの皮肉誰が原子を見たのか?/ブラウン運動の謎/アインシュタインの示唆/分子レベルの暴力地獄
第2章 古いテクノロジー
宇宙マニア、ドレクスラー/原子の姿を照らすX線/遺伝子工学の登場 ブラウン管に姿を現した原子/バイオコンピュータからナノコンピュータへ
第3章 世紀の大破局
何でもできる分子機械/宇宙で自動的に作られる光帆/暴走するかミニロボット/先まわりしている奴がいた
第4章 「ファインマンはいっぱい食わされた」
世界中の本の情報を一粒の砂におさめる/ファインマンの懸賞問題/1000ドルをせしめた男マクレラン/エレクトロニクスも追い越しはじめた
第5章 永遠と雲と
天界の女王、土星に魅せられる/空想のネパール旅行/デザイナータンパク分子構想
第6章 エリック、ファインマンに会う
ザナドゥー・ハイパーテキスト計画/ついにその筋に論文を発表/エリック旋風、巻きおこる/リチャードがパーティにやってきた
第7章 エリック師のナノテク・リバイバル
グレーグー対ブルーグーのナノ大戦/だんだんカルトになってきた/引導を渡す日が近づいた/八弟子全員、ミラーポイントに達す
第2部 エスケープ
第8章 ふくれあがった微小計画四半世紀後に懸賞金をせしめたニューマン/ナノテク・エンジンは黙々とダイヤをつくる/モラヴェックは呼応した/もとをたどればハインラインだった
第9章 アストリッドとプリシラ
パウリ、ボーア、草場の陰で赤面!?/ナノ世界本部「フォアサイト研究所」設立/潤滑油のいらない精密ベアリング/大物たちの反応は?
第10章 退屈、憎しみ、そしてユートピア
ナノテクの報酬は優雅な倦怠?/バベッジ機械の再来/嫌な奴も長生きする/デュードニーの琴線にふれる
第11章 三個の小さな歯車
パトロン現る/走査型トンネル顕微鏡、原子に接近/原子を将棋の駒のように動かした/天然にまさる人工タンパク質/ネット上でも話題騒
第12章 キャプテン・フューチャー
大風呂敷は控えよう/MIT、学位授与を拒否する/原子ハッカーの脅威/物質はもはやソフトウェアになる/ついにマスコミも注目
第13章 分子は神聖か?
原子でIBMロゴを綴る/メディア・ラボならいけそうだ/レベック、自己複製システムを作る/分子の搾取は許されるのか?/ドレクスラー博士誕生
第14章 非難の大合唱
「ナノシステムズ」で吹っ飛んだ/非難の嵐もすごかった/原子は安定性を取り戻すか?/終ってからでは遅すぎる
第15章 止められるなら止めてみろ
強い味方、バックミンスター・フラーレン/分子テクノロジーとしての遺伝子治療/人工タンパク質は使えそうだ/人工原子まで出現した
第3部 笛吹きを演じる
第16章 アメリカ郊外日曜の昼下がりウエルズの悪夢/人は働かずにいられるか?/ホンモノや素朴さが見直される/最善の予測とは未来を創造することだ/誰が「ノー」と言えよう
■関連図書(表示価格は税別) |
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■書評 |
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◎川合知二氏(『日経サイエンス』2001年5月)
ドレクスラーが提唱する超微小エンジニアリング誕生の背景を余すところなく描き出している。『創造する機械』では余りにもSF的に感じられた分子ナノテクノロジーをわかりやすく解説している点で、お薦めだ。
◎森岡正博氏(『毎日新聞』1997年7月27日)
本書『ナノテクの楽園』には、そのあたり[ナノテクノロジー]の技術開発の最前線が生き生きと描かれていて、読んでいるだけでわくわくしてくる。コンピュータで操作できる分子規模の「霧」を部屋のなかに充満させておいて、指令ひとつでなんでも好きな物体を出現させるなどの発想は、すごいの一言だ。ただし、ナノテクが実現すれば、食料も肉体もいくらでも廉価で生産できるから、夢の楽園が実現するという主張は、良くも悪くもアメリカ的な能天気だなあという気がした。
◎大森 望氏(『日本経済新聞』1997年7月6日)
MIT一年生のとき宇宙植民地に関する論文を発表してジェラルド・オニールをうならせ、太陽帆システムを考察する論文で修士号を得た天才少年ドレクスラーは、やがてナノテクノロジーというまったく新しい分野をほとんど独力で創造し、世界を変える夢にとり憑かれる。レジスの筆は、魅力あふれるこの人物の姿をあますところなく描き出す。その意味では、科学ノンフィクションとしてより、「現実の向こうを見てしまった男」の物語として読むべきかもしれない。
リチャード・ファインマン、テッド・ネルソン、マーヴィン・ミンスキーなど、ドレクスラーをとりまく人物にも、各分野の第一線で活躍する個性的な研究者たちが顔をそろえ、読み物としての面白さは抜群。
基本路線はナノテク礼賛だから、懐疑論者はむっとするかもしれないが、現代科学から失われて久しい未来への夢がここにある。
労働の必要もなく、だれもが永遠に遊んで暮らせる薔薇色の未来社会! ナノテクの未来を信じるかどうかはともかく、楽天的で愉快なレジスの書きっぷりが読者に活力を与えてくれるのはまちがいない。