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ダーウィン進化論の中心概念「自然淘汰」には、 |
■目次より | ▲ |
第1章 ダーウィンの隠喩とロシアの読者 生存闘争に関するダーウィンの見解 マルサスとの連関 ダーウィンの隠喩からの抜粋 ロシアの読者 第2章 マルサス、ダーウィン、およびロシアの社会思想 ロシア人のマルサス受容 1798-1864 急進派のジレンマ ビビコフの訳本 ナロードニキ主義、自然科学、および生存闘争 その他の急進派の声:ダーウィンを讃え、マルサスをけなす 保守派の批判:マルサス、ダーウィン、および「イギリスの国民型」 マルサスとダーウィンについてのトルストイの立場 結論 第3章 ベケトフ、植物学、自然界の調和 ロシア随一の植物学者 調和と進化 1864-1876 調和と闘争 闘争でなく調和 1882-1896 天界の調和と非マルサス的生物学 第4章 コルジンスキー、ステップ、突然発生の理論 ロシア植物学における〈恐るべき子供〉 なぜステップに樹木がないか レヴァコフスキーの実験 ステップと森林についてのコルジンスキーの考え 『生命とは何か』:生気論とステップ= 森林問題 植物地理学から進化へ:突然発生の理論 第5章 メチニコフ、ダーウィニズム、食作用説 合理的な世界観を追求する科学者 自然淘汰説に関する論考 1863-1876 パラダイムとしての寄生 細胞内消化と食作用説 病理学者と炎症 ダーウィンと食作用説の擁護 イリア・イリイチの死 第6章 ケッスラーとロシアの相互扶助論の伝統 K・F・ケッスラー 魚類学と相互扶助の法則 ケッスラー以後の相互扶助 M・N・ボグダーノフと彼の子供向けのお話 ケッスラーの遺産:相互扶助と淘汰説 第7章 クロポトキンの相互扶助論 アナーキスト公爵 シベリア体験 相互扶助という概念の芽生え 相互扶助:進化の一要因 進化の理論としての相互扶助 ダーウィンに帰れ 地理学、イデオロギー、進化論 第8章 セヴェルツォフ、ティミリヤーゼフ、および古典的伝統 N・A・セヴェルツォフ 生態学と進化 1855-1858 ダーウィンと生存闘争 K・A・ティミリヤーゼフ クロロフィル、エネルギー保存の法則、そしてダーウィン説 用不用と、ダーウィンのマルサス主義的隠喩の放棄 古典的伝統の限界 |
■著者紹介:ダニエル・P・トーデス Daniel
P. Todes |
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1952年3月19日、米国メリーランド州の港湾都市ボルチモアに生まれる。ペンシルヴェニア大学に進み、科学史および科学社会学を専攻、博士号を取得する。また、この頃から、ロシアにおける医学から文学に至るまで幅広く関心を深め、フルブライト・ヘイズの奨学研究生となる。実験心理学とツァーリズムの検閲制度についての学術的研究と講演活動にも取り組む。さらにロシア・ソ連の疫病学の歴史研究などでも実績を重ねる。1987年、「ダーウィンのマルサス主義的隠喩とロシアの革命思想1859-1917」を科学史学会誌に発表。これがベースとなって本書に結実。本書上梓の後は、主にロシアの生理学者イワン・パヴロフについて探求し、2冊の著書をまとめている。現在、ジョンズ・ホプキンズ大学医学史研究所に在籍。 |
■関連書籍 | ▲ |
・英国心霊主義の抬頭 ヴィクトリア・エドワード朝時代の社会精神史 J・オッペンハイム 6500円 ・ダーウィンの衝撃 文学における進化論 G・ビア 4800円 ・ダーウィンの花園 植物研究と自然淘汰説 M・アレン 4500円 ・ダーウィン 世界を変えたナチュラリストの決定版伝記 A・デズモンド+J・ムーア 18000円 ・ダーウィンと謎のX氏 第三の博物学者ブライスの消息 L・アイズリー 2816円 ・エラズマス・ダーウィン チャールズの祖父の破天荒な生涯 D・キング=ヘレ 6500円 ・ビュフォンの博物誌 全図版をカラー復刻 荒俣宏=監修 12000円 ・大博物学者ビュフォン 18世紀フランスの変貌する自然観と科学・文化誌 J・ロジェ 6500円 ・花の知恵 小さな命の神秘世界 M・メーテルリンク 1600円 ・蜜蜂の生活 巣の精神に生きる M・メーテルリンク 2200円 ・白蟻の生活 人間への予言的社会 M・メーテルリンク 1800円 ・蟻の生活 聖なる生命宇宙 M・メーテルリンク 1900円 |
■書評 | ▲ |
◎新妻昭夫氏(『科学朝日』1993年4月) …生存闘争の別の側面である種間闘争を重視し、ダーウィンが軽視していた同種内の個体間の相互扶助的側面を強調する独自のダーウィニズムがロシアで展開されることになった。本書ではこの過程が。10人以上の生物学者だけでなく、社会学者やトルストイなど文化人に関する膨大な資料をもとに検討されている。分析は緻密、結論は明解であり、このようなロシア的土壌でソビエト革命は、種間問題が階級闘争に、相互扶助が共産主義へと展開されるだろうことを予想させるが、著者は禁欲的な姿勢を堅持し議論を革命前にとどめている。… …本書は、日本におけるダーウィニズムの受容研究に必須の比較資料を提供しているといえる。とくに「ロシア・ダーウィニズム」の関係者が沈黙をまもっているいま、1952年生まれという若い世代の著者によって本書が書かれたという事実は、この分野の今後の展開のありかたを示唆しているだろう。 ◎栗本慎一郎氏(『週刊ポスト』1993年3月12日) …ある意味でダーウィン主義の落とし子そのものであるマルクス主義が革命後、ルイセンコの遺伝学説を押し立てて19世紀の偉大な学者たちが忘却の彼方に追いやられたのだが、共生を主張する進化論者ベケトフ、突然発生説の最初の主張者コルジンスキー、異種の生物たる微生物が人体を救う役割を持つとする食作用説でノーベル賞を受けるメチニコフ、生物の相互扶助論の主唱者ケッスラーらが活躍したのだった。このなかには生物学者にして革命家のクロポトキンの名も見える。これらの人びとは、実に該博な知識を土台にして研究し論争していた。19世紀ロシアはまさに博物学者にして非マルクス的、非ダーウィン的な社会改良家たちの宝庫だったのだ。ペテルブルク大総長たるベケトフの若い同僚にメンデレエフがおり、ベケトフの孫アレクサンドル・ブロークはメンデレエフの娘に恋をする。こうして『うるわしの淑女』が書かれ、クロポトキンは生物の相互扶助の概念をベースに人為的で有害な政府を排するアナーキズムを標榜するのである。 こうしたロシアの風土と知識人の係わりについて、われわれはほとんど知るところがなかった。クロポトキンのアナーキズムもほぼ完全に誤解されてきている。ロシアの生物学者たちの造詣の深さも知られてこなかった。これらを知りうるだけでも本書は興味ある本だが、科学者のありかたは文化の主要因の一つであること、本当のロシア的思考は弁証法ではなかったようであること、無政府ならともかく極悪政府から辛くも逃げ切った今日のロシアの民衆たちはやはり相互扶助に頼っているのだろうかなど考えさせられもする好著である。 |
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