工作舎ロゴ 書籍解説

HOME > 書籍 > ジャンル一覧新刊一覧 > バロックの聖女/基本データ




バロックの聖女[詳細]

目次著者紹介関連図書書評


癒しのエクスタシー

悪魔憑きも、狂女も、役立たずも、野心家も、
いびつな生を過剰に生きぬいて、救われた。
やり遂げるパワーをひきだす文化の秘密に迫る。




■目次より

1 聖者に尊敬された悪魔憑き マリー・デ・ヴァレ(1590-1656)の物語
  悪魔憑きから聖女へ
  イエスとマリアの修道会
  ヨブの嘆きとともに
  棺から立ちのぼる芳香

2 イエスと心臓を取り替えた聖女 マルグリット・マリー(1647-1690)の物語
  聖なる臓器信仰のルーツ
  イエスの血まみれの心臓
  マルグリット・マリーの官能的ヴィジョン

3 狂気をパフォーマンスにした聖女 虚無のルイーズ(1639-1694)の物語
  過剰な女性の典型
  マグダラのマリアに嫉妬する
  ルイーズとギヨエの死の舞踏

4 ルーダンの悪魔憑きの銀河系 天使のジャンヌ(1602-1665)の姉妹たち
  サタンの世紀
  その1 マルト・ブロシエの場合
      アクロバティックな狂態
      悪魔憑きの弾圧から救済へ

  その2 マドレーヌ・ドゥマンドルの場合
      告解師が悪魔として糾弾される
      サバトは本当にあったのか

  その3 ジャンヌ・デ・ザンジュ(天使のジャンヌ)の場合
      歴史的事件ルーダンの悪魔憑き
      悪魔払いのパフォーマンス
      ヒステリー患者とジャンヌの違い
      体の各部に住む悪魔
      天使と悪魔のイメージ
      一般信者もまきこむ騒ぎ
      後の太陽王ルイ14世を祝福する
      修道院長ジャンヌと告解師の危険な関係

  その4 マドレーヌ・パヴァンの場合
      悪魔と天使の黄昏

  その5 魔女たちの末路
      聖性を失う魔女たち

5 ヴェルサイユの聖女 ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール(1644-1710)の物語
  王と神のあいだ
  ルイ14世とルイーズの純愛
  寵姫たちのかけひき
  性の恍惚から「聖」の恍惚へ

6 超能力の聖女 アニエス・ド・ランジャック(1602-1634)の物語
  黒い聖母に守られて
  殉教処女の憧れ
  イエスの声を聞く
  尊敬と非難のはざまで
  体が燃えるように熱くなる
  アニエスとオリエの霊的関係
  死後もつづく癒しの奇跡
  やり遂げるパワーをひきだす文化



■著者紹介:竹下節子 (たけした・せつこ)

976年東京大学比較文学比較文化修士課程修了。以後パリ大学、高等研究所でカトリック史、エゾテリスム史を専攻。比較神秘思想を感性、知性、霊性の統合的な観点から研究し、魂の癒しの可能性を今日的なメッセージとして発信する。
パリでは執筆活動、教育活動とともに、国際交流サロンを主宰してアーティストを支援するかたわら、みずからも室内楽アンサンブルのメンバーとして演奏活動を続けている。
 著書は『パリのマリア』『ヨーロッパの死者の書』『聖女伝』『ローマ法王』(以上筑摩書房)、『奇跡の泉ルルド』(NTT出版)、『ジャンヌ・ダルク』『聖母マリア』(以上講談社)、『聖者の宇宙』(青土社)、『さよならノストラダムス』『カルトか宗教か』『不思議の国サウジアラビア』『テロリズムの彼方へ、我らを導くものは何か』(以上文芸春秋)、『からくり人形の夢』(岩波書店)など多数におよぶ。




■関連図書(表示価格は税別)

  • セイレムの魔術  17世紀ニューイングランドの魔女裁判 チャドウィック・ハンセン 3800円
  • 狼憑きと魔女  17世紀フランスの悪魔学論争 ジャン・ド・ニノー 3200円
  • ヴァンパイアと屍体  死と埋葬のフォークロア ポール・バーバー 3200円
  • 犬人怪物の神話  西欧、インド、中国のドッグマン伝承 D・G・ホワイト 4800円
  • 英国心霊主義の抬頭  19世紀末の魂の高揚 ジャネット・オッペンハイム 6500円
  • ルネサンスのエロスと魔術  想像界の光芒 ヨアン・P・クリアーノ 4800円
  • 眠りの魔術師メスマー  近代精神医療の先駆者 ジャン・チュイリエ 2900円
  • 子どもの神秘生活  生と死、神・宇宙をめぐる証言 ロバート・コールズ 3800円
  • アインシュタイン、神を語る   宇宙・科学・宗教・平和 ウィリアム・ヘルマンス 2200円



  • ■書評

    原研二氏(『東京新聞』1996年10月13日)
    悪魔憑きの女とカトリックというハードな制度のねじり合い。著者が伝えたいと願った聖女をめぐる「過剰さ」は、現代人の救いなどに関わることなく、遠い時代の異文化に徹することによって活写された。キリスト教を「性の神経症」「女性恐怖」と批判するフェミニズムではなく、もっと本質的で大きなドラマ、聖性の聖性らしい力が本書の至るところに溢れ出て、読む者を揺さぶるのである。

    彌永信美氏(『図書新聞』1996年11月16日)
    著者も言うとおり、これらの「聖女」たちは現代から見ればたんなる神経症患者でしかないかもしれない。しかし「たとえ病気だとしても、異常だとしても……彼女らに真実がないなどとどうしていえるだろうか」(「はじめに」)。その「聖女」たちの内的論理を見事に描き出した本書は、現代にも連なるこうした聖性の妖しく暗い側面を探索するための、一つの重要な道標になるにちがいない。




    ALL RIGHTS RESERVED. © 工作舎 kousakusha