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鬼から聞いた遷都の秘訣[詳細]

目次著者紹介関連図書書評


日本にとって忘れることができない年となった一九九五年、
荒俣宏と小松和彦によって仕組まれたもう一つの事件が進行していた。
これまで誰も語ることのなかった視点から、
都市と日本文化を徹底的に洗いなおすという作業である。
オウム事件から本草学まで、阪神大震災から風水まで、
「日本の宿題」が次々に俎上に乗せられていった。
謎は解体され、そして増殖してゆく。
帝都東京に明日はあるのか。




■目次より

はじめに 鬼の宿題

口伝第壱番 風水都市
 風水には地震対策がなかった
 暴走する快楽と持続する快適
 天を想定しつつ地上を考えること
 地震は体験を超えて神話化する
 時間と空間を「引いてみる」
 貧困の発明と共産主義の時間割
 カレンダーとしての道のつくり方
 霊的なものが行き交うところ
 勘が働かなくなってきた
 妖怪のいる都市を計画する
 ゴジラは現代の鯰絵になれるか
 ものへの執着とコレクターの空しさ
 ヨーロッパのホテルに歯ブラシがない理由
 旅人はなぜお土産を買うのか
 最初の人類がやすらいだ風景
 闇の啓蒙が必要になってきた
 ミクロネシアの人びとからの教訓
 道々のもののネットワーキング

口伝第貳番 地震都市  地震には四つの性格がある
 聖なる空間と芸能と経済
 渋谷のマジカル・スポットと八幡ロード
 池袋では怪事件が起こる
 日本には風水がなかった
 墓を自由につくれなくなった問題
 コスモロジーを失った町
 狸囃しと鐘の音の不思議
 上野の山で情報が経済になった
 行われなかった東京遷都
 「師」の人びとのマジカルな力
 香具師と相撲とテキヤとやくざ
 縁日には異物と異人が集まる
 将軍吉宗が博物学者をスパイにした
 江戸文化の起源は紀州にある
 比叡山のディズニーランド
 コンピュータで国見ができるか
 きれいごとの学問が隠してきたもの

口伝第参番 幻想都市  ヨーロッパの都市はシンボルだった
 新宿都庁舎ビルは有名になれない
 宦官と纏足を輸入しなかった日本
 京都幻想が江戸を支えていた
 歌枕システムによる地方開発
 東京は帝都であり続けるべきだった
 ネットワークが情報のゴミで埋まるとき
 ハッカーの歴史性と都市の未来派
 都会のエコロジストたちの憂鬱
 幻想としての故郷と実体としての農村
 問答無用の三つのドラマ
 「かわいい」と「かわいそう」のヒューマニズム
 地球規模の「生類憐みの令」が文化を滅ぼす
 男優のいる宝塚はきっとつまらない
 第四世界人類学とそれぞれの幸せ



■著者紹介

荒俣 宏(あらまた・ひろし)

1947年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。サラリーマン時代より英米幻想文学の訳出紹介をはじめ、現在にいたるまで、神秘学、博物学、幻想科学、産業考古学、路上観察学、図像学、小説など幅広いフィールドで活躍。現代文明の「忘れもの」に光をあて続けてきた。図版図書コレクターとして海外にも知られる一方、小説『帝都物語』では、東京論としても評価をえた。著作は『別世界通信』『理科系の文学誌』『大博物学時代』『想像力博物館』『本読みまぼろし堂目録』『空想文学千一夜』をはじめ、約200点を超える。

小松和彦(こまつ・かずひこ)

1947年東京生まれ。埼玉大学教養学部卒業、東京都立大学大学院社会人類学博士課程を中退。信州大学教養学部、大阪大学文学部を経て、現在は国際日本文化研究センター教授。ミクロネシアや韓国、四国等でのフィールドワークを基盤に、民俗学、文化人類学、国文学などを幅広く渉猟。鬼、妖怪、呪術、憑依といった文化の「闇」に秘められた日本人の精神の原型を探り、独自の文化論を展開している。著作は、『神々の精神史』『憑霊信仰論』『異人論』『悪霊論』『妖怪学新考』など多数。また、『経済の誕生』『妖怪草紙』に代表される、スピード感あふれる対談集では、多くの斬新な仮説を提示している。




■関連図書(表示価格は税別)

  • 怪奇鳥獣図巻 大陸からやって来た異形の鬼神たち 伊藤清司=監修・解説 3200円
  • 妖怪草紙 あやしきものたちの消息 荒俣宏+小松和彦 2800円
  • 経済の誕生 富と異人のフォークロア 小松和彦+栗本慎一郎 1456円
  • 理科系の文学誌 幻想科学派宣言 荒俣宏 3200円
  • 大博物学時代 進化と超進化の夢 荒俣宏 3200円
  • 本読みまぼろし堂目録 空想文学千一夜 いつか魔法のとけるまで 荒俣宏 3500円



  • ■書評

    『晨』(1997年8月)
    タイトルと筆者に惹かれて手にした。のっけから「遷都論には天皇の居場所という視点がないと、まるで意味がない」とくる。そして、遷都問題を出した人はみんな危険な目に遭っている、と荒俣氏。「都市の見えない要素、それでいて都市として成立させてきた要素、いってみれば鬼や妖怪の視点からの都市イメージが提示できるかもしれない」(小松氏)と行われた対談集である。
    もっとも初期に道をつくったグループといわれる日置部は、太陽が東から出るのに合わせて道をつくった。都市をつくるにはプランナーとして空間を読む国見の技術が必要だ。20世紀末になって鬼や闇の啓蒙が必要になった……官庁がらみのところからはまず出ない都市論が矢継ぎ早に出てくる。
    100年ほど前までは目に見える遺産より見えない遺産の方がはるかに大きかった、という発言もあった。見えない遺産を取り入れた都市を見てみたいものだ。




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