中世パリの装飾写本 [詳細]
本邦初! 装飾写本の本格的手引き登場。
こんな見方/読み方があったのか!
池上俊一(西洋中世史)
図版編:ベリー公の『聖母のいとも美しき時禱書』より
■目次 |
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図版編
『教訓聖書(ビーブル・モラリゼ)』(ウィーン二五五四番)
『聖ルイの詩編』
『梨物語』
『マダム・マリーの祈禱書』
イヴ作『聖ドニの生涯と殉教』
『ジャンヌ・デヴルーの時禱書』
『ギヨーム・ド・マショー作品集』(写本C)
シャルル五世の『フランス大年代記』
ベリー公の『聖母のいとも美しき時禱書』
『ブシコー時禱書』
ベリー公の『いとも豪華なる時禱書』
『ロアン大時禱書』
テクスト編
【13世紀】第1章 パリ写本装飾の始まり
フランス王家の写本『教訓聖書(ビーブル・モラリゼ)』/ パリの写本制作の活況/写本装飾の制作過程第2章 ものがたる写本絵画
長大な扉絵から始まる『聖ルイの詩編』/ 本文詩編の装飾/ 絵巻物に似た扉絵/ 扉絵の用途/ 聖ルイと読書第3章 声から文字へ
「薔薇物語」の流れをくむ恋愛譚「梨物語」/ 絵画と文字の織りなす物語/ 文字に秘められた謎/ 声から文字へ/ 文学作品の挿絵と読者第4章 聖書絵本の流行
絵画からなる『マダム・マリーの祈禱書』/ 聖書絵本の流行/ 連続的黙想と絵画/ 女性読者と図像コラム:写本画家オノレ
【14世紀】
第5章 中世パリの日常生活
聖ドニ伝説/ イヴ作『聖ドニの生涯と殉教』/ 人物と場所を特定する表現/ 肖像成立の予告第6章 写本装飾の革新――ジャン・ピュッセル
『ジャンヌ・デヴルーの時禱書』の革新性/ ジャン・ピュッセルと作品/ 時禱書第7章 個人全集の成立
ギヨーム・ド・マショーと『作品集』/ 作品集の「序」/ 長編物語の構成/ 語り手兼主人公「私」=作者マショー/ 〈個人全集〉としての写本第8章 政治を反映する写本絵画
王家の正史「フランス大年代記」/ 〈改訂増補版〉としてのシャルル五世の写本/ 修正の意図/ シャルル五世と書物【15世紀】
第9章 数奇な運命をたどった装飾写本
『聖母のいとも美しき時禱書』の装飾/ 数奇な運命/ 稀代の愛書家ベリー公ジャン/ベリー公の時禱書*『小時禱書』*『ブリュッセル時禱書』*『大時禱書』
第10章 中世末のエコール・ド・パリ
『ブシコー時禱書』と注文主/ ブシコーの画家――自然主義とページ構成の刷新――/ 中世末のエコール・ド・パリ/文学作品などの装飾写本*『クリスティーヌ・ド・ピザン作品集』*ピエール・サルモン作『対話』*『テレンティウス作品集』*ボッカッチョ作『デカメロン』
コラム:ベッドフォードの画家
第11章 写本装飾のピーク――ランブール兄弟
ベリー公の『いとも豪華なる時禱書』/ ランブール兄弟の絵画の特徴/ ランブール兄弟コラム:ベリー公の『美しき時禱書』
第12章 最後の大傑作
最後の大傑作『ロアン大時禱書』/ パリ写本装飾の伝統につらなる図像/ ロアンの画家/ パリの危機と伝統の断絶gallery(ギャラリー)
[巻末資料]
絵画で読む聖書の物語
図版リスト
主要参考文献
索引
■関連図書(表示価格は税別) |
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[本の歴史をめぐる]
■関連情報 |
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●ブックファースト新宿店「スタッフ23人が選ぶ2015年の174冊」
「活版印刷以前の写本世界がこれ1冊で堪能できます。芸術書としても、また書物の歴史本としても、以後、棚において長くおつきあいせねばならない本」とのコメントも。
●パネル展開催
2015.6月末より、青山BC六本木店、東京堂書店神田神保町店、ブックファースト銀座コア店にて、本書収録の美しい挿絵(ミニアテュール)のパネル展を開催。 >>>
■書評 |
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●ハンディクラフツ 2016年3月号紹介
中世史、本の歴史、カリグラフィーに興味ある方におすすの、日本初の装飾写本の本格的手引書。…美しく豪華な装飾写本の、挿絵と文章はどのように読まれたのかを解き明かします。
●歴史と地理:世界史の研究 2016年2月号 山川志保氏書評
ルイ=フィリップの息子、オマール公アンリが購入したことで19世紀半ばに再びフランスに戻った至宝、ベリー公の『いとも豪華なる時祷書』は、所有者変遷のミステリアスさ、それ以上にその色彩の美しさや細やかな描写が魅力的である。
●2015.9.24号 週刊文春 鹿島茂氏書評
入門書にして決定版という稀有な一冊
…「それ(写本装飾)は書物のなかにあらわれる芸術としての独自性をもっている。まずは文字と共存しなければならない。視覚的に美しいハーモニーをつくり、内容的にもテクストにマッチする必要がある。さらに、それが位置する書物という独自の場にフィットすることも求められる。(中略)」
これは重要な視点である。というのも、装飾写本とその様式を受け継ぐ挿絵本というジャンルはテクストと絵画のコラボレーションにその芸術性の神髄があるのだが、これが意外に理解されてないからだ。いいいかえると、装飾写本の絵画部分(ミニアチュール)だけを抜きだしてこれを芸術的ないしは歴史的観点から論じるのは邪道であり、装飾写本の正しい味わい方ではない。…
●2015.9.25 図書新聞 高宮利行氏書評
写本芸術の興隆と衰微の様相を、多数の図版を用いて紹介
…15世紀半ばにグーテンベルグ聖書の出現によって活版印刷術が書物生産を一変させた時期を前に、観る人の目を奪う形で花開いた写本芸術の興隆と衰微の様相を、多数の図版を用いて紹介した書である。表紙カバーに用いられたベリー公の『いとも豪華なる時祷書』のランブール兄弟が五月の遠足を描いた有名な一葉など、この主題に関心のある読者なら、どこかで目にしているに違いない。…
(中略)本書を手に取った読者で、隅々まで心遣いが息づくアナログの本が、ネット全盛の時代にいつまで出版できるのだろうかと、案じた人もいたに違いない。…
●2015.8.30 日本経済新聞短評
…制作拠点が修道院から都市の工房に移り、注文主も聖職者から国王や王妃、貴族ら世俗の権力者に替わるなど、社会の変容と結びつけて説明する点が興味深い。キリスト教など背景知識の解説も充実。随所に登場するカラー図版を眺めるのも楽しい。
●2015年9月号 月刊アートコレクターズ 著者インタビュー
装飾写本の誘惑
…卒業論文では、この本でも取りあげたランブール兄弟のベリー公の『いとも豪華なる時禱書』について論じました。時禱書はキリスト教徒が個人で行う祈禱のための書物で、趣向を凝らした装飾が施されることが多く、とりわけこの写本は、美しさにおいても斬新さにおいても群を抜いています。…たとえば、夜景と松明の明かりの描写には、光を敏感にとらえる彼らの感性と、それを描出する確かな技量を見て取ることができます。…
中世パリにみる書物の歴史
私の関心は絵単体というよりも、内容とかたちを有する装飾とテクストを収めた書物そのものにあります。読者が参加して読み取るように絵画の中に仕組まれた要素を見いだして、絵画の外の史料から再構築した現実の読者がそれを読み取ることができたかどうか検証していく。画家の研究はあっても、絵を観ていた人たちの研究はあまりされていません。特に装飾写本の読者を研究している人は、海外でもほとんどいないと思います。…