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童の心で [詳細]

目次著者紹介追悼・市川團十郎丈関連図書書評



市川團十郎さんと小泉英明さん

歌舞伎役者×脳科学者
竹馬の友の芸脳談義

「童の心」はだれでも心の奥底にもっていながら、
「おとなの体面」にとらわれて忘れかけているものである。(本文より)



■目次

日本人として大切なものを見直す  市川團十郎

第1章 コドモの園幼稚園からパリ,ヴァチカンへ

半世紀ぶりの再会──三つ子の魂百まで
パリ公演──フランス語の口上・バワーズさんの想い出
音の響きと劇場空間──オペラ座裏話
モナコ公演──鳴神が現実に
環境と感性──氏か育ちか
大酒飲みの遺伝子──弁慶と猩々
自分を見る・世界を見る──ダライ・ラマと歌右衛門

第2章 江戸庶民と荒事の精神

荒事と童の心──初代市川團十郎
江戸根生いの市川家──『助六』と河東節
二代目の雄弁術と邦楽の発声法──「二の字起こし」と「産み字」
歴代團十郎の工夫──修行講・歌舞伎十八番・活歴物
ウソとウソをかけあわせて超現実へ──芝居と物理の色即是空
虚を実に見せる醍醐味──宙乗りせずとも空中浮遊
学習の動機づけと報酬系──判官贔屓はなぜ生じるのか

第3章 襲名システムの妙

稽古始め──三法師役で初舞台
襲名と脱皮──商家・職人・芸能者の知恵
元祖三之助の幼少時代──ラグビーで丈夫になる
元祖海老さま──十一代目團十郎の重責
左利きは矯正すべきか──菅秀才役で筆は右に
教育というのは怒ること──『連獅子』を地でゆく愛の平手打ち
梨園の父親と息子──憧れと切磋琢磨
家族の想い出──旅行・芸者遊び・釣り

第4章 海老蔵から團十郎へ

円覚寺での修行──山脈の筆を大海の硯にひたして宇宙に描く
大先輩たちの薫陶──勘弥と先代鴈治郎
海老蔵から團十郎へ──ハレの時間を共有するお練りの復活
荒事師を支える女性たち──勁い母・朗らかな妻

第5章 刹那と永遠の狭間で

『元禄忠臣蔵』と心の読み方──肚芸と心の理論
間は魔に通じる──脳がつくる時間の流れ
乱拍子の劇的効果──祈念・怨念・情念
刹那と永遠の狭間──時間の矢・時間の環
静止顔と見得──脳にP300を出させて消す
引き吃とチンパンジーの発声──鳥獣にまなぶ
團十郎流記憶術──耳と口と身体を連動させる
失読症はなぜ起きるのか──言葉と音韻ループ

第6章 多彩なエロス、色悪の誘惑

女形の魅力──型と脳がつくる性
官能系と情動系──衆道と文化
変身の妙──お伽噺の夢を体現する
歌舞伎における殺人とゲームにおける殺人──暴力の快楽の制御

第7章 歌舞伎座さよなら公演

歌舞伎座と文化遺産の保存──想い出の場所
歌舞伎座という名器──衝撃音を活かす空間
歌舞伎座最後の『助六』──意地と張りの極致

第8章 日本文化の再発見

武道と死生観──鞘の内の文化と切腹
武士道をつらぬくソフトウェア──主従は三世の絆と葛藤
日本の表芸の精神──日本刀と職人芸
お座敷文化の再興──邦楽の裾野
『陰影礼賛』の境地──ゆれる灯りの時間
信仰と芸能──慈・悲・喜・捨

第9章 日本の再創造に向けて

伝統文化と先端技術──伊達政宗の毛髪分析
創造性を生む脳とは──意欲・情熱と自由意志
経済と文化──賢民の育つ国こそ豊かな国になる
東日本大震災後の再創造に向けて──経済至上主義から恵み合う文化へ

しなやかな靭さを育んだ共通の原点 小泉英明




■著者紹介:

市川團十郎(いちかわ・だんじゅうろう)

本名、堀越夏雄。名跡「市川團十郎」十二代目として歌舞伎界を牽引。1946年8月6日、九代目市川海老蔵(十一代目團十郎)の長男として生まれる。53年、市川夏雄として初舞台、58年、新之助襲名。65年、父の急逝で後盾を失うが、四代目尾上菊之助(七代目菊五郎)、初代尾上辰之助(三代目松緑を追贈)とともに、「三之助ブーム」をよぶ。69年の海老蔵襲名、85年の團十郎襲名は歌舞伎界の一大イベントとなる。2004年、長男の十一代目海老蔵襲名披露公演の最中に白血病を発症し、治療に専念するが、秋のパリ・シャイヨー宮公演で復帰。さらに二回の入退院をへて舞台復帰。
著書『歌舞伎十八番』(河出書房新社)、『團十郎の歌舞伎案内』(PHP新書)、『團十郎復活』(文藝春秋)など。
2013年2月3日、肺炎により永眠。享年66歳。 写真でつづる「追悼・市川團十郎丈」

小泉英明 (こいずみ・ひであき)

(株)日立製作所役員待遇フェロー、東京大学先端科学技術研究センター客員教授を経てボードメンバー、(社)日本工学アカデミー理事・国際委員長。1971年、東京大学基礎科学科卒業。76年、偏光ゼーマン法の創出で理学博士。日立MRI開発プロジェクトリーダーとして種々の新技法を開発。95年、光トポグラフィ法を創出して「心の計測」に取り組む。同社基礎研究所所長、(社)日本分析化学会会長、(独)科学技術振興機構「脳科学と社会」領域総括などを歴任。大河内記念賞ほか内外の多くの賞を受賞。ローマ法王庁科学アカデミー創立400周年にて記念講演。『日経サイエンス』誌創立40周年特集号がノーベル賞候補として紹介。
著書『脳は出会いで育つ』(青灯社)、『脳の科学史』(角川SSC新書)、『脳科学の真贋』(日刊工業新聞社)、編著書『幼児期に育つ 科学する心』(小学館)、『育つ・学ぶ・癒す 脳図鑑21』『脳科学と芸術』(工作舎)など。




■関連図書(表示価格は税別)

[工作舎の日本文化 関連図書]
  • にほんのかたちをよむ事典 形の文化会=編 3800円
  • 茶室とインテリア 内田 繁 1800円

    [工作舎の脳 関連図書]
  • 脳科学と芸術 小泉英明=編著 3800円
  • 育つ・学ぶ・癒す 脳図鑑21  伊藤正男=序 小泉英明=編 (品切)
  • 三つの脳の進化  P・D・マクリーン 3400円



  • ■書評

    2012.5.6 朝日新聞書評
    …「紅葉狩り」の習慣がない欧州で、どういうふうに日本の感性を伝えるかと団十郎。これからの脳科学は「感性」を正確に理解することが大事な役割、と小泉。演目の解釈や役のハラ、芸道精進など不思議なまでに歌舞伎と脳科学が響きあい、興味尽きない。

    2012.4.22 北日本新聞 演劇評論家・桂真菜氏書評
    伝統と先端が掛け合い
    …芸術と科学が寄り添う中で生まれた、詩を紡ぐイメージに魅了されるのは、第5章「刹那と永遠の狭間で」。舞台上の伸縮する時間、「間」という空白の時間、見得による無限の時間…これらの想念に触れるたび、歌舞伎の深淵に引き込まれていく。
    笛に三味線に唄、と複雑な構成のお囃子が指揮もないまま、一糸乱れずそろう秘密にも近づけた。対談者が掛け合いで呼吸を合わせる技の極意に迫る過程では、評者の息も弾んだ。…

    2012.4.22 日経新聞書評
    …脳科学の最先端を行く合理的な知見と、歌舞伎の伝統や日本人特有の情緒とが絶妙に響き合う。深い体験と知識に裏付けられた言葉の応酬は実にスリリングだ。対談形式で読みやすく、豊富な脚注も理解を助ける。

    2012.4.19 新文化「ウチのイチ押し!」
    12代團十郎と脳科学者が談論風発
    …襲名制に代表される梨園の伝統や智慧と妙、時代とともに進化を遂げ生まれ変わる芸術・歌舞伎の魅力、歴代の市川團十郎の知られざる逸話、また12代目の実父で、元祖「海老さま」として絶大な人気を博した11代目の素顔も語られる。市川家秘蔵の、公私にわたる写真は、とくに歌舞伎ファンにとっては必見だ。
    一方、小泉氏は科学者の視点から、芸術、文化、人間行動など様ざまなテーマについての広範な知識を随所で披露。文中に「脳構造の進化」「五感と知情意の脳内ネットワーク」などといった図版が現れるのも、本書のユニークさを物語る。…
    「…(歌舞伎の)魅力と活力の秘密に、市川宗家の当主と、ノーベル賞候補とも噂される脳科学者が迫ります。歌舞伎にひそむ宗教性や前衛性など、忘れがちな日本人の心の深層も明らかに」編集担当・十川より一言

    2012.4.9 「日経ビジネスオンライン」書評
    脳科学者と名優との対談本で再確認した人の脳の神秘
    人が知性や理性を持つ仕組みと「幽体離脱」の実在

    …團十郎氏は、「自分から飛び出して、その自分を後ろから見て、やっていることをチェックする場合があります」と自身の経験を述べている。…プレゼンテーションがうまい人、あるいは会議の場で巧みにファシリテーションを行う人。こういった人々は、共通して、「自分から離れて、自分を見る」感覚を有しているようなのだ。…  比べること自体おこがましいが、どうやらこの「幽体離脱」感覚(註:「自分から離れて、自分を見る」感覚)は、歌舞伎や能の名人上手の持っている一種の特殊能力ともどこか共通する部分があり、脳の角回の働きとも関係していそうだ。




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