夢の場所・夢の建築[詳細]
建築家による夢の研究
なぜ夢には自分が育った場所がよく現れるのか。
夢に現れる場所はいったいどういう場所なのか。
われわれは夢の中で建築や空間環境とどのようにかかわっているのか……
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夢の場所は記憶を介して安定する。
よく保存された成長期の「場」の記憶をもとに、
充分安定した成長期の「場」の夢を見るのではないだろうか。
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夢を回想して記憶に移す、あるいは移そうとした数は
実は相当の量にのぼるのではないか。
夢日記の形式で、記録する前に消えてしまったものは、かなりありそうだ。
■目次より |
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I 夢考察のきっかけ
II 夢考察をめぐる問題点
III 夢の記録方法
IV 夢考察の経過
V 夢の場所の分類と統計
VI 私の生活史と住んだ家
VII 夢の場の出現件数
VIII 夢における「場」の安定性
IX 「夢の場」に見られる傾向
X 夢における類似性の強調
XI 「夢の場」に働く原理仮説
XII 「夢うつつの場」の出現とその解釈
XIII P群の解釈1 層状仮説
XIV P群の解釈2 再生仮説
XV 場所の進化へ
第2部 夢の中の空間をめぐって 吉武泰水+横山正
夢の記述方法
夢の地図
環境の二重写し
シュルレアリスム絵画と夢
空間の原形質
「ヤコブの夢」と階段
暗さと明るさ
二つの視点
建築家による記述
夢の速度
自在に夢を見る
夢の機能
夢を見る場所
第3部 夢の建築を読む
旅館・学校空間をめぐる 滝口修造「夢三度」
うす暗い広間 中勘助「夢の日記」
浮遊する感覚 小泉八雲「夢旅行」
たくさんの部屋がある広い旅館 島尾敏雄『記夢志』
料亭の迷路空間 横尾忠則『私の夢日記』
異質な経験を引き出すトンネル空間 秋山さと子『チューリヒ夢日記』
売春宿と劇場空間 F・カフカ「夢」
再訪できる洞穴 M・エリアーデ『エリアーデ日記』
階層構造をもつ家 C・G・ユング『ユング自伝』
まとめ:トータル・インスティチューションの空間
■関連図書(表示価格は税別) |
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情報論の西垣通、精神分析の香山リカ、禅哲学の上田閑照など10名の論集。
メタフィクションの筒井康隆、メラヴィリアの高山 宏、電脳空間の巽 孝之など8名の論集。
トマソンの赤瀬川原平、漫画評論の夏目房之介、空想科学の柳田理科雄など8名の論集。
免疫学の多田富雄、昆虫写真家の海野和男、美術評論の椹木野衣ら9人の論集。
まるごと一冊、高山宏。マニエリスム、ピクチャレスク、驚異の部屋など逍遙。
■書評 |
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◎藤森照信氏(『毎日新聞』1997年8月24日)
25年の採夢の中で、著者は面白い現象に気づく。優位に立つ人・筋とはかない場の二つを安定性という点からチェックするとどうも力関係は逆転するらしい。人・筋は、印象深いけれど、けっこう気まぐれで、見るたびにどんどん変わる。ところが、そのドラマの背景になる町や家や地形の様子はいちじるしく安定している。
そしてその安定した場にも優劣があるらしい、と気づく辺から著者の分析は、夢分析ならではの佳境に入り、立ち込める霧の中を懐中電燈をたよりに奥へと分け入ってゆく。ヘビが出るかジャがでるか。……
昨日の私と今日の私が同一であるという自己のアイデンティティを支えているのは意識の方だが、夢を含む無意識の方は、場についての新たな経験情報を組み込みながら過去の経験を結合して安定性を支え、われわれの日々の前進に備えているのではなかろうか」
無意識下における場の連結感が、人間の自己同一感を保証している、と言うのである。
夢の中のはかなく消えやすい場は、夢の奥の夢、無意識の奥の無意識の住人だった。そのぶん意識の世界でははかなく消えやすい。著者も自ら言うようにずいぶん大胆で魅力的な仮説である。
杉浦康平のブックデザインも必見