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◎はじめに◎

いよいよ8月には『形の文化誌9 芸道の形』が発売されます。能や狂言、お茶などの形にまつわる論文が、わび・さびの世界に誘います。詳しくはこちら>>>  

刊行にちなみまして、形を大特集! 工作舎からは、いのちと形態に関する根源的な興味を掻きたてられることまちがいなしの書籍を集めてみました。そのほか、おもしろい本やDVDなど多数載せましたのでぜひご覧下さい。




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そもそも「形」「形態」というのは視覚や触覚によってとらえられる外見的な姿なんだそうな(厳密にいうと違うのかもしれないが)。ということは見えるものすべて「形」といえる。自然も人工物も、ということだ。そもそも形を考えることは、とても根源的な問題のようで、ぞうの鼻はどうして長い? とかタコはなぜ八本足‥‥と考えだすとキリがないほど、素朴な疑問がわいてくる。

一方で「形」は美や芸術とも切っても切れない関係がある。かの偉大な建築家、アントニオ・ガウディも自然のフォームに学び、それを作品に活かした、という話はあまりにも有名。芸術家たちは自然の形態を模倣したのだ。

またゲーテはその著作『形態学序説』で、こんなことをいっている。

「生命ある存在を分解してゆけば、確かに諸要素に到達はできる。しかし、この諸要素を集めてみたところで、もとの生命ある存在を再構築したり、生の息吹を与えることはできない‥‥それは生命ある形成物そのものをあるがままに認識し、眼に見え、手で触られるその外なる部分部分を、不可分のまとまりとして把握し、この外なる諸部分を内なるものの暗示として受け止め、こうしてその全体を幾分なりと直感において我がものとしょうと‥‥」

ゲーテがここでいっているのは、もちろん分断化された自然科学への危惧。でも、まあ、むずかしい話は置いといて、形(まとまり)の内なるメッセージを直観で受け止めよう、という発想はなかなか魅力的。ゲーテのいうようにわたしたちは目に見えて、触れられる「形」の世界に生きているのだから、もっと形からのインスピレーションを大切にするべきなんじゃないかしらん。そうしたら世界はいっそう楽しく見えるに違いない!!

さあ、形の旅へでかけましょう。
                           シムラミドリ                     

◎工作舎のとっておき形本6冊
形の文化誌[1]
アジアの形を読む
形の文化会=編
杉浦康平+伏見康治ほか=著

A5判 252頁 1993.12
定価 本体2000円+税
 [注文]
.  杉浦康平によるアジアの宇宙観「日月照応」をはじめ、金平糖や紋様、龍など形の文化をめぐるエッセイと論文が盛りだくさん。なかでも、白虎社主宰の大須賀勇と布施英利による対談は身体とアジアがテーマで面白い。西洋のモノの見方は鳥的(俯瞰的)、東洋は虫的(そのものの中に入って世界を感じる)であるという。キリストの磔刑が高みへ向かって昇天する瞬間を表している一方で、釈迦は大地に横たわったまま涅槃に入るというそれぞれの姿からも、ナルホド納得! そのほかの形の文化誌シリーズ詳しくは >>>

水・大気・音・生命・言語から
カオスの自然学
テオドール・シュベンク
赤井敏夫=訳

四六判/上製 328頁 1986.5
定価 本体2400円+税
 [注文]
.  今にも生命のリズムが聴こえてきそうな大推薦の一冊。さまざまのイマジネーションを掻きたてる100点の図版と80余点の写真による゛流れの万華鏡(グラフィズム)″を収録。水や大気が生み出す形態には、生命の誕生、群体のオーガニズム、言語の発生など、多くの謎を解く鍵が秘められている。一読したとたんあなたがいつも見ていた世界は新たな意味を帯びはじめるだろう。

形態と機能をめぐる自律進化
選択なしの進化
リマ=デ=ファリア
池田清彦=監訳
池田正子+法橋登=訳

A5判/上製 472頁 1993.5
定価 本体5500円+税
 [注文]
.  ダーウィン以降の大胆で画期的な仮説!! 著者は自然選択は科学界の神話であり、進化は「形態と機能」にその起源があると主張する。つまり、植物も動物も鉱物もそれが進化する要因は「かたち」というわけ。コノハムシが、なぜあれほどまでに葉にそっくりなのか。やまあらしの背と結晶の形はなぜ似ているのか。こうした自然界の不思議が今、明かされる。ユニークな図版多数収録!

時間がつくる生命の形
動物の発育と進化
ケネス・J・マクナマラ
田隅本生=訳

A5判/上製 416頁 2001.4
定価 本体4800円+税
 [注文]  [目次]
.  生物の形や大きさがちがうのはなぜ? フィンチのくちばしにユーカリの葉など、同じ種の中でも大きさが違うのは? 異時性の進化論<ヘテロクロニー>を通して進化の過程にその答えがあると解明する。人間の世界では、大人になりたがらない青少年たちのピーターパン症候群が危 惧されているが、本書によると、自然界では幼児化<ネオテニー>はあたりまえらしい!?

生命の形態と意識の進化を探る
形の冒険
ランスロット・ロウ・ホワイト
金子務=解説
幾島幸子=訳

四六判/上製 332頁 1987.2
定価 本体2200円+税
 [注文]
.  ─美は形態をもたらす力にある─アリストテレス、ゲーテなどの形態学の伝統を受け継ぐホワイトの思索の書。形態とは何かにはじまり、美、哲学、生命とは、人間とはといった問題に思いをいたらせ、自然と人間のイマジネーションの世界を探る。美しい言葉で綴られた形態の魅力にくぎずけ!

自然と芸術の形態をめぐるシンポジウム
形の全自然学
ランスロット・ロウ・ホワイト=編
斉藤栄一=訳

四六判/上製 396頁1985.5
定価 本体2800円+税
 [注文]
.  ウォディントン、コンラート・Z・ローレンツ、ゴンブリッチ‥‥知の巨人が集った形態をめぐるシンポジウム。当時バイブルともされた本書。形態学を知りたいなら、この本を読むべし! 形態についての知識の発展をまとめた「形態学年譜」も付録。

◎そのほかのお薦めラインナップ
イメージ画像は作品とはほぼ関係ありませんので、あしからず

【形態の科学】

かたち探検隊
岩波科学ライブラリー(83)
小川泰=著

.  キリンのしま模様、ビールの泡など、自然界や人工物にあるいろいろな形。「でも、どうしてそんな形なの? 科学的な説明を聞いてみたい!」と思うあなた。そこでとっておきな本がコレ。形の文化会でおなじみの著者が形の魅力を存分に科学する。朝日新聞夕刊科学欄の連載を単行本化。


サイズの生物学
ゾウの時間ネズミの時間

中公新書1087
本川達雄=著

.  動物のサイズが違うと、時間の流れる速さまで違ってくる?! そんなこと考えてもみなかったが、でも確かに子供の頃は、今よりも一日が長く感じられたなあ。体の大きさと時間の関係を解説する、新しい生物学入門書。

【形を鑑賞する】

絶滅生物の知・形・美
アンモナイト学

東海大学出版会
国立科学博物館=編
重田康成=著

.  アンモナイトの採取の方法から最新の研究結果までを扱った、本格的な解説書。北海道産のアンモナイトの写真を多数掲載してあり、見た目にかなり楽しめる。


Water
Thames&Hudson
Bernard Fischesser=著
Hans Silvester=写真

.  美しい波紋の写真が印象的。豊かな水の形態が堪能できる一冊。そもそも水とはどうしてこんなにも神秘的なのだろう。

【文字の形】

生きているもう一つの象形文字
トンパ文字

マール社
王超鷹=著

.  雲南省の奥地で今でも使われているという驚き(!)の象形文字「トンパ文字」。文字のひとつひとつが素朴で愛嬌たっぷり。巻末に付けられたトンパ文字の総覧1200文字を使って文章を作ってみては?


芹沢けい介美術館
.  静岡市の登呂遺跡そばにある美術館。芹沢けい介は「型絵染」の人間国宝として広く知られている。特に文字をモチーフとした独創性の高い作品は、日本人の心をくすぐってやまない。有名な「風の字のれん」は、本当に風が吹き抜けるようだっ!
https://www.city.shizuoka.shizuoka.jp/seri-site/ 作品も見られます。


【形の宇宙】

POWERS OF TEN(DVD)
CHARLES AND RAY EAMES
.  10秒毎に10のn乗メートルの速度でヒトの細胞から宇宙の果てまでを旅する、9分間の一大映像叙事詩。ミクロコスモス、マクロコスモスという世界観が凝縮された作品。作品の趣旨とは違うが、人はいつしか肉眼では見ることのできなかった、細胞の形や地球の形も見られるようになったのだからスゴイ。


チベット仏教の知恵と心の芸術
マンダラ・コスモロジー
(CD-ROM)
トランスアート
トゥプテン・ジンパ仏教博士=監修

.  深遠な宗教体験、チベット仏教の宇宙観を、マルチメディアの技術を駆使して解き明かす。立体曼陀羅を目の当たりにすると、より曼陀羅がわかった気になる。思い過ごしか…。でも、とにかく面白い!!


M.C.エッシャー
カライドサイクル

タッシェンジャパン
ドリス・シャットシュナイダー=著

.  エッシャーの作品が立体的に再現できるという変わり種本。あらかじめ型押のしてある紙を使ってきれいな幾何学模様の模型を自分で組み立てることができる。ちなみにカライドサイクルとは四面体でできた三次元のリングのことなんだそう。