工作舎ロゴ 4月の新刊『書物の灰燼に抗して』


『書物の灰燼に抗して』刊行記念

四方田犬彦さんトークショー報告

四方田犬彦さん

『書物の灰燼に抗して』の刊行を記念して、2011年4月28日、三省堂書店神保町本店にて、著者・四方田犬彦さんのトークショーが開催されました。

今年の初めに、10年以上かけた大きな仕事が3つ同時に終わったという四方田さん。1冊目は1994年から16年かけた『パゾリーニ詩集』で、2月にみすず書房から上梓。 2冊目は、編集委員の一人として関わった「シリーズ 日本映画は生きている」全8巻(岩波書店)。2000年代から、黒沢清さん、李鳳宇さん、吉見俊哉さんの4名で編集執筆を担い、1月に完結しています。

そして、3冊目がこの『書物の灰燼に抗して』。「ガリヴァー旅行記」論を卒論とした四方田さんの本業たる比較文学の論集は、原稿が書かれた時期から数えて21年にも及ぶそうです。ちなみに、こうした非常に長くかかる本は、あと1冊、1980年から書き始めた『ルイス・ブニュエル研究』があり、来年夏には執筆を完成させる予定だとか。

そして、この大仕事の後のwaste(残滓)から生まれてくるもの、これからの10年に書こうとしているメモへと進みます。

まずは、パゾリーニの詩集『グラムシの遺骸』から。「遺骸」の原文ceneriは、通常「遺灰」と訳されますが、この詩は遺骸(土葬の)でなけれならないそうです。イタリア共産党を創ったグラムシは、死後カトリックの墓への埋葬を拒否されました。「灰」では、創世記の「汝、塵なれば塵に帰る」のように、ユダヤ・キリスト教的文脈に取り込む解釈になりますが、大地に消化されないものとして残されたグラムシは、それにNoを突きつけているのです。許されない存在として残る「遺骸」なのだと。

そして、生きるliveではなく、生き残るsurviveことしかできない時代となったこと、なぜ生き残ったかを問い続けた文学者、石原吉郎、パウル・ツェラン、レーヴィに言及しつつ、 最後に、旧ソ連の大作家にブルガーコフを挙げ、死後発表された作品『巨匠とマルガリータ』の悪魔が語ったセリフを紹介します。「一度書かれたものは灰にならない」と。こうして「書物の灰燼」へと回帰して、見事な結びになりました。

トーク後は、抽選で5名様に特典の本表紙の色校が渡され、サイン会では一人一人との会話を楽しまれ、会は無事に終了。お越しいただいた皆様、ありがとうございました。

四方田犬彦さん四方田犬彦さん
大勢の方にご参加いただきました。

四方田犬彦さん四方田犬彦さん
左/特典を手渡す四方田さん。右/サイン会で読者との会話を楽しまれました。

ブックフェア
4F人文書にて開催中のブックフェア

『濃縮四方田』の彩流社編集者の方も、三省堂での講演会に参加され、彩流社さんのブログにアップされています。こちらもお読みください。彩流社サイトへ


四方田犬彦さんトークショー「書くことの灰燼」
【日時】2011.4.28(木)18:30〜20:00
【会場】三省堂書店神保町本店 8階特設会場
【特典】本表紙の色校(四方田さんサイン&エディションナンバー入り/限定5枚)



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