『生物多様性のしくみを解く』南信州新聞書評
4月の発売以来、売れ行き好調な『生物多様性のしくみを解く―第六の大量絶滅期の淵から』。5/31付 南信州新聞に書評が大きく掲載されました。南信州新聞は、著者の宮下直さんの故郷、長野県飯田市を拠点とする新聞です。
飯田出身、故郷での原体験が説得力に
…子どものころから「生き物博士」と呼ばれるほどに昆虫や鳥類、クモ類など伊那谷の豊かな自然に親しんだ。同書ではそんな子ども時代の原体験や、原風景が文中のあちこちにちりばめられている。
たとえばため池。日本の農業用のため池は希少な昆虫、魚、水生植物の宝庫だ。しかしその豊かなため池もいま、外来種が在来種を食い尽くすという危機の内にある。
外来種とはアメリカザリガニやウシガエル。アメリカザリガニは在来種を食べるばかりか、自分に都合のよい環境をつくるため、水草をはさみで切りまくる。どうなるか。水生昆虫や小魚にとって水草は、隠れ家で産卵場所だから生活基盤が根本から破壊される。かくして、トンボもすめなくなるというわけだ。
著者はそこで外来種に侵食される前の、飯田の家の近くのため池を回想する。〈周囲を田んぼや人家に囲まれたため池で、見た目によい環境には思えなかったが、図鑑で見たいと思っていた種がたくさんいることがわかって、驚きの連続であった〉…(略)
(村澤聡)