タイの葬儀山車、舟山車…
『靈獣が運ぶ アジアの山車』

タイのナーガの舟山車|「多頭のナーガが乱舞する」より
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昨年(2016年)10月に逝去されたタイのプミポン前国王の国葬を10月に控え、準備のニュースが報道されています。巨大火葬施設に加え、「木製の霊車」の写真も紹介されました。高さ11.2m、長さ18m、重さ13.7トン、金箔で覆われた壮麗な葬儀山車です。 毎日新聞|タイ前国王の国葬準備大詰め
この山車は、タイで信仰を集める無数のナーガ(蛇)とガルーダ(鳥)で飾られています。タイに限らず、アジアでは貴人の葬儀や祭りに山車が用いられ、聖なる獣の意匠をまとっています。霊獣たちの力がこの世とあの世を結びつけるのです。
タイ、ミャンマー、バリ島など現地研究者による論集『靈獣が運ぶ アジアの山車』では、第1部を「送る舟・飾る船――アジア「舟山車」の多様性」として、ミャンマーの靈鳥(カラウェー)船、タイのナーガの舟山車など、アジア各地の祭りに用いられる舟山車を紹介。第2部「「魂を運ぶ」聖獣の山車」では、鷲の力を象徴するガルダをあしらったバリ島の葬儀山車バデと、象と鳥が合体したハッサディーリンを象った東北タイの葬儀山車メル塔を紹介します。
豊富な写真や図版がオールカラーで掲載され、アジアの人びとが山車に托す想い、華麗な意匠にこめられた祈りの心が伝わる貴重な本です。特に、ソーン・シマトラン氏の「第1部3 鳥(ガルーダ)と蛇(ナーガ)のシンボリズム―動物信仰とタイの伝統文化」には、プミポン前国王(ラーマ9世)戴冠式の記録写真や、ラーマ7世王妃の葬送の行列写真なども収録。タイ王室の宗教観・宇宙観を知るための資料としておススメです。
なお、タイ王室の葬儀山車そのものについては、本書の姉妹本 『動く山 アジアの山車』(左右社)でシマトラン氏「タイ王室の葬儀車。霊魂を天界に運ぶ」に詳しく記されています。

右上がラーマ7世王妃の葬送の行列|第1部「3 鳥(ガルーダ)と蛇(ナーガ)のシンボリズム」より

東北タイの葬儀山車ハッサディーリンのメル塔|第2部「7 「象+鳥」の力で飛翔する」より