9月の新刊、谷賢一著
『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』
164文字もの長いタイトルです。略して『従軍中のウィトゲンシュタイン』とお呼びください。気鋭の劇作家・演出家の谷賢一さんによる、哲学者ウィトゲンシュタインの若き日を描いた戯曲です。20世紀の思想哲学に大きなインパクトを与えた『論理哲学論考』は、第一次世界大戦の戦場で書かれました。なぜ戦場だったのか。「語り得ぬものについては沈黙しなければならない」の一節にたどりつくために、何があったのか。
著者の谷賢一さんは、主宰劇団DULL-COLORED POP(ダルカラードポップ)を軸に、ロックスターから文学者、脳科学や資本主義まで多様な題材を演劇化してきました。
最近は五輪メダリストのランナー円谷幸吉と君原健二を描いた『光より前に』、神奈川芸術劇場の主催公演『三文オペラ』などを手がけ、海外の演出家の作品にも多数参加。小劇場からエンタメまで活躍の場を広げています。
2019年8月には、東京芸術劇場シアターイーストを1ヵ月間ジャックして福島三部作』を一挙上演。福島県の各地を取材して、原発を誘致した町の1961年から2011年まで50年間にわたる政治・経済・家族のドラマを描きます。
8月8日〜28日東京芸術劇場で公演予定。8月31日〜9月2日大阪公演も。くわしくはこちらへ。
■著者紹介:谷賢一(たに・けんいち)
劇作家・演出家・翻訳家。1982年福島県生まれ、千葉県育ち。明治大学演劇学専攻。在学中にイギリス留学し、ケント大学演劇学科に学ぶ。その後、主宰劇団DULL-COLORED POP(ダルカラードポップ)を旗揚げ。文学性や社会性の強いテーマをポップに表現する。劇団代表作に『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』。
2013年、海外戯曲『最後の精神分析──フロイトVSルイス──』の翻訳・演出で第6回小田島雄志翻訳戯曲賞、文化庁芸術祭優秀賞を受賞。海外演出家の作品に上演台本や演出補などで多数参加。2016年、セゾン文化財団ジュニア・フェローに選出される。
2016年から自身のルーツのひとつである福島県を題材にした演劇プロジェクトを開始。原発誘致から東日本大震災まで、戦後の政治経済とひとつの家族をめぐる50年のドラマ『福島三部作』を2019年に一挙上演。