11月の新刊 倉谷滋著『地球外生物学』
11月の新刊は、倉谷滋先生の『地球外生物学——SF映画に「進化」を読む』。
倉谷先生は、理化学研究所主任研究員であり、進化発生学で世界的に注目を集める第一線の研究者でありながら、前作『ゴジラ幻論』では映画「シン・ゴジラ」の女性科学者・尾頭ヒロミのレポート、1954年初代「ゴジラ」の山根恭平博士の孫による講演記録などを創作され、怪獣マニアも唸らせました。今年は講談社現代新書で『進化する形』、集英社インターナショナル新書『怪獣生物学入門』を上梓され、もはや売れっ子科学者です。
さて、本書のテーマはエイリアン。エイリアン、物体X、ソラリスの海、ウルトラ宇宙怪獣などの生物学的謎に挑みます。
「エイリアン」は植物か?
SFに登場する異星人の姿は、我々がどのような世界に住んでいるのかという認識、つまりは時代とともに変わる世界観の影響を受けないではいられない。宇宙人、宇宙生物をめぐる我々のイメージは、宇宙そのものの姿や生物進化に関する我々の科学的「常識」を見事に投影している。
冒頭の「エイリアンは植物か?」という不思議なコピー(帯のキャッチコピーでもある)の謎は、第一章で解説されます。犠牲者に卵を生みつける習性をもつ昆虫はいくらでいるが、エイリアンはもっと複雑で、その生活史は「シダ植物」に似るという。犠牲者に生みつける卵のもとは「性を持たない胞子」のように見えるのだとか。ぜひ本をお読みください。
四六判上製、240ページ、本体2000円+税。11月中旬発売予定。
■目次
はじめに――地球外生物を考える第一章 「ギーガー種」の進化と逸脱―映画『エイリアン』の生物学的事情
1 エイリアンの生物学ホラーの品格
生物学的分析の試み
「エイリアン世界」とその変貌
不条理の中身
恐怖の生物学
『プロメテウス』の問題
「アース」が生んだ世界観
3 エイリアンの生活史と社会性
生活史の起原
クイーン・エイリアンへの道
4 エイリアンのボディプラン進化
二つのボディプラン
エイリアンの「肢」
付論1 マリオ・バーヴァの『バンパイアの惑星』と『エイリアン』
付論2 『デイヴィッドの素描』を読む
プロメテウスの末裔
エリザベス
第二章 超(ウルトラ)系宇宙生物群―地球外来種とその生存戦略
1 ナメゴンと火星人[火星には軟体動物が似合う]2 ボスタング[軟骨魚類との類似と差異]
3 バルンガ[恒星を喰う胞胚]
4 ケムール人の周辺[異星と異界の生命原理]
5 ガラモンとセミ人間[脊椎動物と昆虫の微妙な関係]
6 バルタン星人[生態学的地位への脅威]
7 ギャンゴとガヴァドン[形態形成の因果論と目的論]
付論3 「トリフィド」の栄光
8 スカイドンとシーボーズ[落ちてきたもの]
9 クール星人[宇宙人における「頭部」の問題]
10 ピット星人[宇宙人における「着衣」の問題]
第三章 地球外文明論―映画の中の異星生命
1 物体X[常軌を逸した形態形成能]2 岩石生物[もう一つのヘッケルの夢]
3 宇宙の単細胞生物[「適応度の谷」の手前で]
4 『エイリアン』と『ライフ』の狭間[重力制御か光速移動か]
5 『2001年宇宙の旅』から『コンタクト』へ[そして『インターステラー』]
6 レイ・ハリーハウゼンと宇宙SF[ヴィクトリア朝的展開]
7 ソラリスの海[幸福な思考停止]
8 『テンペスト』に世界を見る[酒呑童子から『スター・ウォーズ』へ]
プロスペロの子供たち
構造の分析
テクストを拘束するもの
9 『吸血鬼ゴケミドロ』について[「寄生」の本質]
付論4 整体師宇宙人仮説
あとがき―プラネタリウムとしての宇宙SF