6/20付 図書新聞『アルス・ロンガ』
池上英洋氏評
2020年6月20日付 図書新聞にて、ペーター・シュプリンガー+前川久美子の共著『アルス・ロンガ』を、美術史家の池上英洋氏が書評してくださいました。「時の翁に喰われるトルソー」と「人生は短し、芸術は長し」の二段構えで構成され、丁寧かつ読み応えのある書評です。
芸術は永遠か
芸術家と死、ヴァニタス(虚栄/儚さ)と永遠性の関係を包括的に論じる
…芸術家が亡くなった後にも作品は生き続けることに、外から見ている私たちには一種のロマンを感じてしまうが、彼らにとっては無情極まりないことであり、そのため芸術家は自ら存在した記憶をとどめようとさまざまに努力してきた。
(中略)
…まず墓碑や礼賛画にような芸術家モニュメントを蒐集する。次にルーベンスの邸館のような物理的空間による記憶の例を挙げ、続いて芸術家の死の瞬間そのものを扱った作品をとりあげる。そのなかにはゴーガンが制作後にその前で自殺を図った《我々はどこからきたのか、我々はなにものか、我々ははどこにいくのか》なども、一種の遺書としてピックアップされている。…そして同書は、本評の冒頭で採り上げた時の翁の銅版画などを題材に、芸術家と死、ヴァニタス(虚栄/儚さ)と永遠性の関係を包括的に論じて閉じられる。
どうもありがとうございました!