8月の新刊 佐々木敦『批評王』
『批評王』各章扉
8月の新刊は、佐々木敦さんの『批評王——終わりなき思考のレッスン』。
思想、文芸、音楽、映画、コミック、演劇、アート……
多彩な領域に筆鋒鋭利に切り込んできた批評家・佐々木敦さんは、
2019年末に、文学ムック『ことばと』編集長就任と批評家卒業を宣言。
そして、2020年春には初の小説『半睡』を発表され、いよいよ創作活動に軸足を移すとのこと。
批評家の看板を下ろす今年は、佐々木さんの批評本が次々と刊行されています。
演劇、小説といったテーマを絞った批評本が続きますが、『批評王』だけはテーマやジャンルを絞っていません。 佐々木さん曰く、ジャンルを問わないアンソロジーは2005年の『ソフトアンドハード』(太田出版)以来で、悲願だったそうです。
『批評王』は、佐々木さんの批評活動最後の総まとめとして、「ただそれだけを読んでも面白い」ロジックとレトリックの技が冴えわたる全78編を収録。 あえてジャンル別ではなく、批評スタイル別に編集した各章には、「批評の絶体絶命」「批評の丁々発止」などの刺激的なタイトルがつく、まさに画期的なアンソロジー!
2020年8月末発売予定。カバーデザインは鋭意作成中。どうぞお楽しみに。四六判ソフトカバー、528ページ、予価 本体2700円+税
■目次
批評王の「遺言」第1章:批評の絶体絶命
[思想]先生、それって何の役に立つんですか? 有用性[思想]美味しいという字は美の味と書くのだが、 B級グルメ
[文芸]リトルピープルよりレワニワを! 村上春樹『1Q84 BOOK1/BOOK2』
[思想]弱い接続と別の切断
東浩紀『弱いつながり:検索ワードを探す旅』、
千葉雅也『別のしかたで:ツィッター哲学』
[思想]「例外社会」の例外性 笠井潔『例外社会:神的暴力と階級/文化/群衆』
[文芸]小松左京のニッポンの思想 小松左京
[文芸]「人間原理」の究極 グレッグ・イーガン『万物理論』
[思想]ヤンキー論は、なぜ不可能なのか?
斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら:ヤンキーと精神分析』
[思想・音楽]グルーヴ・トーン・アトモスフィア
柄谷行人/イエロー・マジック・オーケストラ
第2章 批評の丁々発止
[音楽]偏見と偏愛の平成Jポップ10選 平成Jポップ[音楽]「音楽に何ができるか」と問う必要などまったくない 復興ソング
[音楽]「歌」の「禁」など不可能である 竹中労制作『日本禁歌集1〜5』
[音楽]発生としての歌 矢野顕子
[音楽]幸宏さんについて私が思っている二、三の事柄 高橋幸宏
[音楽]「ひとり」が「みんな」になる方法 蓮沼執太
[映画]映画の野蛮について:
イエジー・スコリモフスキ監督『エッセンシャル・キリング』/
アッバス・キアロスタミ監督『ライク・サムワン・イン・ラブ』/
北野武監督『アウトレイジ ビヨンド/
真利子哲也監督『ディストラクション・ベイビーズ』/
大森立嗣監督『タロウのバカ』
[映画]タイムマシンとしての映画 映画の原理
[音楽]パラレルワールド・ライナーノート:
リリー・アレン『イッツ・ノット・ミー、イッツ・ユー』/
ニール・ヤング『フォーク・イン・ザ・ロード』/
グリーン・デイ『21世紀のブレイクダウン』/
エミネム『リラプス』/マックスウェル『“ブラック”サマーズナイト』
第3章 批評の虚々実々
[映画]永遠のミスキャスト ペ・ドゥナ[映画]Our Empty Pages 山下敦弘監督『マイ・バック・ページ』
[映画]映画は記憶を記録する ジョナス・メカス
[音楽]の唯名論 プリンス
[音楽]カメラ vs. 峯田和伸 銀杏BOYZ DVD『愛地獄 劇場版』
[文芸・映画]「小説」の「映画」化とは何か?:
村上春樹「納屋を焼く」/イ・チャンドン監督『バーニング 劇場版』
吉本ばなな「白河夜船」/若木信吾監督『白河夜船』
[文芸]SOS団はもう解散している 涼宮ハルヒ
[コミック]ふたつの時間の交叉点 岡崎京子『リバーズ・エッジ』
[演劇・映画]「ロボット」と/の『演劇』について:
平田オリザ演出・青年団/大阪大学&ATR石黒浩特別研究室『さようならVer.2』
『三人姉妹』、想田和弘監督『演劇1』『演劇2』
第4章 批評の右往左往
[音楽]ひとりの大音楽家 山本精一[音楽]「思考する声」の歌姫 やくしまるえつこ
[音楽]キング・アンド・ボブ・アンド・ミー キング・クリムゾン
[音楽]Vaporwaveについて、私は(ほぼ)何も知らない:
ネガティヴランド、ザ・ケアテイカー/V/Vm/ジョン・オズワルド/
タエコ・オーヌキ/ヴェイパーウェイヴ
[映画]激突と遭遇 スティーヴン・スピルバーグ監督『激突!』『未知との遭遇』
[映画]ストーリーテラーとしてのダルデンヌ兄弟
ダルデンヌ兄弟『午後8時の訪問者』
[文芸]「日常の謎」の原理 倉知淳『夜届く:猫丸先輩の推測』
[文芸・映画]ふたつの『トレインスポッティング』:
アーヴィン・ウェルシュ『トレインスポッティング』/
ダニー・ボイル監督『トレインスポッティング』
[文芸]善行にかんするエスキス
アントニオ・タブッキ『供述によるとペレイラは……』
[文芸]美しい日本語 石川淳
[文芸・映画]「詩」の映写 松本圭二
第5章 批評の荒唐無稽
[音楽]うたっている男 グルパリ[音楽]ホースにおける笑いの生成について HOSE
[アート]お気づきになった話
core of bells 連続イベント「怪物さんと退屈くんの12ヵ月:01お気づきだっただろうか?」
[音楽]「四分三三秒」のための約一五時間からの約一万字
ジョン・ケージ「4分33秒」
[音楽]アンビエントの再発明 Aphex Twin『Selected Ambient Works Volume II』
[音楽]コード・デコード・エンコード 空間現代『Palm』
[文芸]詩人の新(しい)書 吉増剛造『我が詩的自伝:素手で焔をつかみとれ!』
[文芸]ミステリー化どうかはどうでもいい 一條次郎『レプリカたちの夜』
[アート]フィクションがヘコヒョンなら、リアルは何?
カワイオカムラ「コロンボス」
[アート]視線の幽霊 長沢秀之「未来の幽霊─長沢秀之展─」
第6章 批評の反射神経
[文芸] 朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』[文芸] 角田光代『八日目の蟬』
[文芸] 伊坂幸太郎『PK』
[文芸] 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
[文芸] 阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』
[文芸] ミシェル・ウエルベック『地図と領土』
[文芸] 山下澄人『ギッちょん』
[文芸] J・M・クッツェー『サマータイム、青年時代、少年時代:辺境からの三つの〈自伝〉』
[文芸] ローラン・ビネ『HHhH:プラハ、1942年』
[文芸] ロベルト・ボラーニョ『売女の人殺し:ボラーニョ・コレクション』
[文芸] 山下澄人『ルンタ』
[文芸] 森達也『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい:正義という共同幻想がもたらす本当の危機』
[文芸] 栗原裕一郎・豊﨑由美『石原慎太郎を読んでみた』
[文芸] 石原慎太郎『やや暴力的に』
[文芸] 千葉雅也『動きすぎてはいけない:ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』
[文芸] 多和田葉子『献灯使』
[文芸] 江健三郎『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』
[文芸] 大澤聡『批評メディア論:戦前期日本の論壇と文壇』
[文芸] 保坂和志『朝露通信』
批評王の追伸
初出一覧
佐々木敦 著作一覧
■著者紹介:
佐々木 敦(ささき・あつし)
文筆家。1964年、愛知県名古屋市生まれ。ミニシアター勤務を経て、映画・音楽関連媒体への寄稿を開始。1995年、「HEADZ」を立ち上げ、CDリリース、音楽家招聘、コンサート、イベントなどの企画制作、雑誌刊行を手掛ける一方、映画、音楽、文芸、演劇、アート他、諸ジャンルを貫通する批評活動を行う。2001年以降、慶應義塾大学、武蔵野美術大学、東京藝術大学などの非常勤講師を務め、早稲田大学文学学術院客員教授やゲンロン「批評再生塾」主任講師などを歴任。2020年、小説『半睡』を発表。同年、文学ムック『ことばと』編集長に就任。批評関連著作は、『この映画を視ているのは誰か?』(作品社、2019)、『私は小説である』(幻戯書房、2019)、『アートートロジー:「芸術」の同語反復』(フィルムアート社、2019)、『小さな演劇の大きさについて』(Pヴァイン ele-king books、2020)、『これは小説ではない』(新潮社、2020)他多数。