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8月の新刊 クリアーノ『異界への旅』


『異界への旅』帯付き

8月の新刊は、『異界への旅—世界のシャーマニズムから臨死体験まで 』です。

ギルガメシュの冒険、オシリス神の死と再生、黄帝の昇天、 ラーマクリシュナの恍惚体験、オデュッセウスの遍歴、 エノクの黙示録、ダンテの『神曲』…

古今東西の神話・伝説・宗教に見られる数多の「この世の外」の体験は、古代シャーマニズムから発する異界探求の霊魂の旅でもあった。それは、現代の体外離脱、臨死体験、幻覚剤による変性意識、そして多次元世界の研究にまで連綿と通底している。
さまざまなエピソードを通して「異世界」に迫る書。

著者のヨアン・ペテル・クリアーノは、宗教学者ミルチャ・エリアーデに師事し、『エリアーデ世界宗教事典』の共著者としても知られ、エリアーデの後継者として嘱望されていましたが、1991年に暗殺された悲運の学者です。単著の『ルネサンスのエロスと魔術』(工作舎)、『霊魂離脱(エクスタシス)とグノーシス』(岩波書店)も邦訳されています。

四六判上製、364頁、本体3800円。8月下旬刊行予定。どうぞお楽しみに。




■目次より

頌辞…ローレンス・E・サリヴァン
謝辞
序論

第1章 四次元探求のための歴史家の旅支度

第2章 遊離霊魂は遊離霊魂を求める…シャーマニズムの輪郭

 一般人のための民族心理学/シャーマニズムとは何か
 シャーマニズム対シャーマニズム/シャーマニズムは魔術か?
 魔術はシャーマニズムか?

第3章 暗黒の財宝……メソポタミア宗教の永世希求

 不死の代価/イナンナ=イシュタルは地獄の象徴/昇天説話

第4章 人形・劇場・神……古代エジプトの死後生

 ピラミッドから棺柩(かんきゅう)へ/「ピラミッド・テクスト」
 「棺柩文」/『死者の書』

第5章 中国道教における鶴駕、霊魂飛翔、幽婚説話

 食気/中国の二つの霊魂/シンガポールの霊魂飛翔
 台湾の幽婚説話/鶴駕の導師

第6章 心への旅……佛教と三界流転三界流転(さんがいるてん)

 ヒンドゥー教における遊離魂/佛教における遊離霊魂と三界流転
 チベット密教の葬祭儀式/死者のためのヨーガ/民間佛教

第7章 熱狂から霊的幻視へ……古代イランの霊魂離脱

 イランのシャーマニズムは存在するか?/神官キルディールの幻視
 義しき人ウィラーフの他界の旅

第8章 ギリシアの巫医

 女神をめぐる航海/降霊術(ネキュイア)
 ギリシアのシャーマン、巫医(イアトロマンティス)
 知られざるプラトン/科学革命/プラトン以後
 プルタルコスにおける臨死体験と体外離脱体験/プロティノスの神秘主義

第9章 七つの神殿と神の戦車
 ……メルカーバーからカバラまでのユダヤ神秘主義

 黙示録/ユダヤ教黙示録/初期ユダヤ神秘主義/グノーシスの天界帰昇
 初期キリスト教神秘主義/カバラ/後期ユダヤ神秘主義

第10章 惑星間旅行
 ……プロティノスからフィチーノに至るプラトン的宇宙周航

 宇宙船(スペース・シャトル)としての霊魂/グノーシスの「偽霊魂」
 霊魂の車駕/近代ヨーロッパ初期の世界観

第11章 天界帰昇の極致……ムハンマドからダンテへ

 初期キリスト教の天界帰昇/中世初期/イスラーム教の「昇天(ミウラージュ)」の説話
 十二世紀ルネサンス/『神曲』

結論

邦訳文献
原注
人名索引



■著訳者紹介

ヨアン・ペテル・クリアーノ Ioan Peter Couliano
1950年ルーマニア・イアーシ生まれの宗教学者、哲学者、思想史家。ブカレスト大学在学中にペルージャに留学した際、イタリアに亡命。ミラノのカトリック聖心大学を卒業。その後、パリ第4大学(パリ・ソルボンヌ大学)で博士号取得。1975年ヨーロッパを離れ、シカゴ大学で客員教授、神学教授として長く務める。故国の先輩である著名な宗教学者ミルチャ・エリアーデに師事し、その協力者・後継者として期待される存在となった。
グノーシス主義、ルネサンス期の呪術を中心に、オカルト、エロス、精神、歴史の相互関係に関する独創的な著書・研究書を多数著わし、学術論文、書評、資料編纂も数多い。また「ジャーナル・インコグニタ」の編集長を務めるなどのジャーナリスティックな活動や、魔術的な雰囲気の小説を発表するなどの偉才ぶりを発揮したが、1991年シカゴ大学構内で何者かに暗殺される。ルーマニアの政治を批判したためといわれている。 邦訳書に『ルネサンスのエロスと魔術』(工作舎)、『霊魂離脱(エクスタシス)とグノーシス』(岩波書店)。エリアーデとの共編に『エリアーデ世界宗教事典』(せりか書房)。

桂 芳樹(かつら・よしき)
1932年東京生まれ。東京大学文学部独文科卒、同大学院人文科学研究科修士課程修了。名古屋大学助教授、筑波大学助教授、神田外国語大学客員教授を歴任。専攻はドイツ文学、ルネサンス思想史及びヨーロッパ文化史。訳書に、『ルネサンスのエロスと魔術』、アンドレ・シャステル『ルネサンス精神の深層』、ガイア・セルヴァディオ『ルネサンスのマドンナたち』、『エラノス叢書』(共訳)、エティエンヌ・バリリエ『蒼穹のかなたに』I・II、『霊魂離脱(エクスタシス)とグノーシス』。
2018年7月、本書『異界への旅』の本文訳了後、逝去。






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