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9月の新刊 『科学史から消された女性たち 改訂新版』


『科学史から消された女性たち 改訂新版』

9月の新刊は、 『科学史から消された女性たち 改訂新版——アカデミー下の知と創造性』
女性科学者たちが17世紀以降の科学史から抹殺された背景や性差の価値観を明らかにした名著です。いまや「科学と技術におけるジェンダー」研究者であり、「ジェンダード・イノベーション」の創始者として知られるロンダ・シービンガーの記念すべき第1作。1992年刊行の旧版を大幅に見直し、スリム化した改訂新版、ついに登場。

表紙は、「消された」女性科学者のひとり、昆虫学者マリア・シビラ・メリアンの肖像画。A5判上製、416頁、本体3800円+税(旧版は448頁、4800円+税なので1000円安くなりました!)。9月中旬発売予定。お待ちください。

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■目次

謝辞
序文

第1章 制度的概況

 修道院と大学
 ルネサンスの宮廷
 科学アカデミー
 周辺部における女性
 パリのサロン
 女性のアカデミー

第2章 貴族のネットワーク

 数学についてのおもしろい事情
 科学のネットワークにおける貴族女性
 自然哲学者マーガレット・キャヴェンディッシュ
 キャヴェンディッシュ、彼女はフェミニストか?
 エミリ・デュ・シャトレと物理学

第3章 手工業的伝統における女性科学者

 マリア・シビラ・メリアンと昆虫ビジネス
 ドイツにおける女性天文学者
 マリア・ヴィンケルマンとベルリン科学アカデミー
 アカデミーの天文学者にならんとす
 ギルドの伝統と専門的な科学の衝突
 アカデミーへの一時的な回帰
 見えざる助手

第4章 女性の伝統

 産婆
 人間の健康と楽しみのための料理の本
 排斥の正当化

第5章 学術文体の拮抗

 科学が女性であった時
 寓意画を読む
 男性の寓意画
 女性イコンは実在の女性を表現したか
 女性イコンの衰退
 学術文体の拮抗
 サロンへの攻撃──男性的文体

第6章 宇宙論の拮抗──自然の秩序におけるセックスとジェンダー

 古代宇宙論──不完全な男性としての女性
 ルネサンスと近代初期のフェミニズム
 デカルトとロック──慇懃な無視
 プーラン・ド・ラバールと匿名のイギリス女性
 近代解剖学と性差への問い

第7章 うわべの違いを超えて──性差の科学的探究

 女性骸骨の登場
 理想の創出──「完全な男性」と「完全な女性」
 男、万物の基準
 性と人種の比喩

第8章 補完性理論の勝利

 家庭の責務
 性の補完性の医学身体的基盤
 補完性の政治的基盤
 医学的証拠の不均衡
 男らしさ、社会的価値の尺度
 科学からの女性の追放
 大衆の科学とヴァ―チュオーソの衰退
 植物学は女性的であったか

第9章 閉ざされた公けの道

 マリー・ティルー・ダルコンヴィル──「性差別主義」の解剖学者
 ドイツ初の女性医師・医学博士、ドロテーア・エルクスレーベン
 ドイツ初の女性[哲学]博士、ドロテーア・シュレーツァー
 家庭内の助手──キャロライン・ハーシェル

第10章 女性の排斥と知識の構造

 科学は価値中立か
 科学の特権的な声
 規範の構築──カントの場合
 性差の科学的保証


参考文献
人名索引
訳者あとがき
改訂新版への訳者あとがき
著者紹介/訳者紹介



■著者紹介: ロンダ・シービンガー Londa Schiebinger

スタンフォード大学歴史学科ジョン・L・ハインズ科学史教授。「科学、保健・医学、工学、環境学分野におけるジェンダード・イノベーション」プロジェクト創始者。科学史および科学にジェンダーの視点からメスを入れ、「普遍的かつ公正な科学」幻想を打ち砕いてきた。「科学と技術におけるジェンダー」研究の国際的な先駆者であり、国連、欧州議会、多くの研究助成機関で講演活動を展開。ハーバード大学で博士号を取得(1984)。アメリカ芸術科学アカデミー会員。アレキサンダー・フンボルト財団からフンボルト賞を受賞(1999-2000: 歴史部門で全米初の女性)、米国のグッゲンハイム・フェローシップなど栄誉ある賞を多数受賞。スペインのバレンシア大学(2018)、スウェーデンのルンド大学(2017)、ベルギーのブリュッセル自由大学(2013)から名誉博士号を授与されている。
 本書に次ぐ2作目『女性を弄ぶ博物学』で国際科学社会学会・第2回フレック賞受賞。3作目『ジェンダーは科学を変える1?』では理工系分野の女性研究者をいかに育成するかを論じ、4作目『植物と帝国』では文化的・社会的文脈で抹殺されてきた知識の研究(アグノトロジー)の重要性を説き、三つの国際的な賞を受賞。ロバート・プロクター氏との共著で Agnotology(Stanford University Press, 2008)がある。Women and Gender in Science and Technology (Routledge: London New York, 2014)の4巻本を編纂し、過去およそ40年間にわたる「女性および科学・技術におけるジェンダー」に関連する論文や著作のアンソロジーを出版。
 近年では性差に配慮した革新「ジェンダード・イノベーションズ」を提唱し、欧州委員会や米国衛生研究所と協力してプロジェクトを展開。日本でも2022年4月、お茶の水女子大学に「ジェンダード・イノベーション研究所」が設立された。ジェンダード・イノベーション関連に、Gendered Innovations: How Gender Analysis Contributes to Research(European Commission, 2013)、Gendered Innovations 2: How Inclusive Analysis Contributes to Research and Innovation (European Commission, 2020)がある。

■訳者紹介:小川眞里子 (おがわ・まりこ)

三重大学名誉教授(科学史・科学論分野)。東海ジェンダー研究所理事。博士[学術](東京大学 2012)。著書『フェミニズムと科学/技術』(岩波書店 2001)、『甦るダーウィン』(岩波書店 2003)、『病原菌と国家』(名古屋大学出版会 2016)。共編著『科学史の世界』(丸善 1991)、『女性研究者支援の国際比較』(明石書店 2021)。共著『環境危機と現代文明』(朝倉書店 1996, 新装版2008)、『科学技術と社会』(東京大学出版会 2020)、『科学と倫理』(中央公論新社 2021)など。共訳書 シービンガーの主要著作4冊はじめ、シェパード『ヴェールをとる科学』(誠信書房 1997)、ボウラー『環境科学の歴史』I・II(朝倉書店 2002)など。『病原菌と国家』で日本科学史学会学術賞。澤柳政太郎記念東北大学男女共同参画賞(2017)、令和4年度男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰など。

:藤岡伸子 (ふじおか・のぶこ)
名古屋工業大学名誉教授(比較文化・地域研究)。春日井市男女共同参画審議会会長、東海ジェンダー研究所評議員。共著に『アメリカの文化』(弘文堂 1992)、『あめりか いきものがたり』(臨川書店 2013)、訳書にロペス『水と砂のうた』(東京書籍 1994)、共訳書に『西洋思想大事典』(平凡社 1990)、『自伝でたどるアメリカン・ドリーム』(河合出版 1992)、『生態系サービスという挑戦』(名古屋大学出版会 2010)など。

:家田貴子 (いえだ・たかこ)
本書翻訳時は東京大学大学院理学研究科科学史・科学基礎論博士課程在学中。中島貴子として共編著に『科学の不定性と社会──現代の科学リテラシー』(信山社 2017)、著書に『科学技術のリスク評価──森永ヒ素粉乳中毒事件を中心に』(編集工房 球 2021)など。



講演のお知らせ

日本でも2022年にお茶の水女子大学にジェンダード・イノベーション研究所が設立されるなど関心が高まり、9月にロンダ・シービンガーさんのオンライン講演が相次いで開催されます。

●2022年9月7日(水)10:00〜12:30
お茶の水女子大学 国際カンファレンス
ジェンダード・イノベーションが拓く未来:性差分析による新しい価値の創造

基調講演:ロンダ・シービンガー
パネルディスカッション:「ジェンダード・イノベーション視点からの健康、工学、ビジネス」
 モデレータ  小川眞里子 (東海ジェンダー研究所 理事)
        石井クンツ昌子 (IGI所長)
 パネリスト  ロンダ・シービンガー (スタンフォード大学 教授)
        マルティナ・シュラウドナー (ベルリン工科大学 教授)
        レンブラント・コーニング (ハーバード・ビジネス・スクール 助教授)
        藤山真美子 (お茶の水女子大学 准教授/IGI研究員)
Zoomウェビナー(日英同時通訳あり)/参加費無料・要事前申込
詳細は お茶の水女子大学 ジェンダード・イノベーション研究所

お茶の水女子大学 国際カンファレンス

●2022年9月10日(土)13:00〜16:00
公益財団法人 東海ジェンダー研究所 25周年記念 国際講演会 2022
ジェンダード・イノベーション

基調講演(Zoom):ロンダ・シービンガー(日英同時通訳)
シンポジウム(会場):
 パネリスト 弓削尚子(早稲田大学法学学術院教授、『植物と帝国』共訳)
       鶴田想人(東京大学大学院総合文化研究科 博士後期課程)
 コーディネーター:小川眞里子
参加費無料・要事前申込
詳細は 東海ジェンダー研究所

東海ジェンダー研究所 25周年記念 国際講演会




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