12月の新刊 倉谷 滋 『反復幻想』
12月の新刊は、倉谷滋著、 『反復幻想—進化と発生とゲノムの階層性』 。
19世紀の進化学者、エルンスト・ヘッケルが提唱した「発生は進化を繰り返す」あるいは「個体発生は系統発生を繰り返す」はよく知られています。これを「発生反復説」といいますが、この説はその後いったんは否定されたかに見えました。しかし、1990年代に興隆した進化発生学に重要なビジョンと課題を提供し、無視できない存在に。
著者の倉谷滋さんは、理化学研究所主任研究員として第一線で活躍しながら、『ゴジラ幻論』(工作舎)や『怪獣生物学入門』(集英社インターナショナル新書)など話題の一般書も刊行。そんな倉谷さんが本業に立ち返り、「発生反復説」の現代的可能性に正面から取り組む力作です。
倉谷さんが2016年に刊行した『分節幻想—動物のボディプランの起源をめぐる科学思想史』に続く幻想シリーズ第2弾になり、A5判上装、704頁、本体8000円+税。12月中旬発売予定。
■目次
はじめに第1章 発生反復説
コラム●発生学は終わったのか?第2章 反復とは何か
フォン=ベーアと原型説ボディプランと胚葉説
コラム●発生学書は在るべき処へ?
第3章 『一般形態学』とヘッケルの発生反復説
ハクスレーからミュラーへ形態学的な系統樹
ヘッケルの胚葉
コラム●形態学は学問だ
第4章 生物発生原則のその後
反復の実例はあるのか揃い並ぶ胚たち
コラム●ヘッケル的進化の困難さ
第5章 保守的な発生のメカニズム
構造的ネットワークファイロタイプとガストレア問題
コラム●草薙素子は進化する?
第6章 発生が進化を繰り返す理由
エピジェネティクスから反復を見るコラム●異能の人、ヘッケル
第7章 反復説に反する考え方
ヘッケルの変形発生ド=ビアのヘテロクロニー論
ゼヴェルツォッフの学説
ヘテロクロニーとヘテロトピーの組み合わせ?
コラム●因果連鎖としての発生と進化
第8章 ボディプランの進化
発生負荷と反復コラム●現代に蘇る遺産
第9章 越境する反復と諸問題
化石と死体の反復レイヤーと反復
付記
第10章 結論とまとめ
結語まとめ
後記