3月の新刊
荒俣宏 『理科系の文学誌 新装版』

3月の新刊は、『理科系の文学誌 新装版』です。
未来=現在を予見する荒俣宏、初期の代表作、新装版でついに復活!
「科学こそが幻想である」。荒俣宏が、ニュートンやJ・G・バラード、P・K・ディックなどSF・幻想文学を科学の眼で読み解いた初期の傑作を、40年の時を経て待望の復刊! 文学を科学の言葉で語り、SFのまやかしと限界と不誠実さを明かしつつ、その未知の可能性を探る。

新装版 口絵の色校
新装版では口絵デザインが一新され、さらに荒俣さんによる「新装版のためのあとがき」が加わります。そこでは本書のきっかけとなった雑誌『遊』編集長の松岡正剛さんとの思い出が綴られ、必読です。
…二十代だったわたしに別格の影響を及ぼしたのは、当時の工作舎で雑誌『遊』を編集していた松岡正剛さんだった。松岡さんと知り合ったきっかけは、別世界感性の先人ともいえる稲垣足穂だった。わたしがアイルランド幻想文学の大物ロード・ダンセイニの翻訳書を出版したとき、おなじくダンセイニに心酔していた足穂さんに推薦文を書いてもらっていた。たぶんその縁で、足穂さんの作品もいくつか論評していたのが、松岡さんの目に触れたのだった。
会社のコンピュータ室にあらわれた松岡さんは、いきなり『遊』を出して、ここに足穂のことを書きませんか、と切り出した。そのときアッと叫んだと思う。なぜなら、『遊』はわたしが愛読していた雑誌だったからだ。以来、松岡さんの仕事が最大の関心事になった。…
このあとがきを書いている最中に、その松岡正剛さんが世を去られた。今度は本当の別世界で、時間のねじを止めて、物質と精神の未来を心ゆくまで話したい。松岡正剛さんと。(「新装版のためのあとがき」より)
会社のコンピュータ室にあらわれた松岡さんは、いきなり『遊』を出して、ここに足穂のことを書きませんか、と切り出した。そのときアッと叫んだと思う。なぜなら、『遊』はわたしが愛読していた雑誌だったからだ。以来、松岡さんの仕事が最大の関心事になった。…
このあとがきを書いている最中に、その松岡正剛さんが世を去られた。今度は本当の別世界で、時間のねじを止めて、物質と精神の未来を心ゆくまで話したい。松岡正剛さんと。(「新装版のためのあとがき」より)
その他、「本文の記述の随所には、1981年初版刊行当時の社会情勢やエピソード、あるいは「最新」の科学情報が反映されているが、そのような時代背景の中で綴られたことにも大きな意義があるため、あえて変更・更新はしていない。ただし、著者が個人的に変更や追記・削除を望んだ部分は改めてある。図版は初出時のものを一部変更、また追加・削除した。」との編集部のよる注記も。
カバー絵はまりの・るうにいさん。A5判変型上製、444頁、定価 本体3500円+税、発売は3月末。
■目次より
プロローグ 宇宙文学の系譜PART1 言語の宇宙へ
ケースI『バベル–17』、ケースII『ガリバー旅行記』、ケースⅢ『山椒魚戦争』PART2 物質の未来を求めて
ケースI『結晶世界』、ケースII『時の凱歌』、ケースIII『エントロピー』PART3 生命圏科学異聞
ケースI『エレホン』、ケースII『闇の左手』、ケースIII『地球の長い午後』PART4 二十世紀の展望
ケースIロシア=ソヴィエト、ケースIIイギリス、ケースIIIアメリカ、ケースIV日本PART5 函数関係としてのSF
ケースI作品〈非(ナル)A〉、ケースII生物学戦争、ケースIII文学建築論エピローグ 高い城の男、あるいは東西の融合
あとがき
新装版のためのあとがき