科学者としていちばん大事なこと
(『素粒子の宴』より)
12月10日にノーベル賞授賞式を控え、各受賞者の記念講演が話題となっている。授賞式を欠席される南部陽一郎博士の言葉が聞けないのは残念。しかし、対談およびインタビューで構成された『素粒子の宴』は、「対称性の自発的破れ」発見の過程、物理学のおもしろさ、科学者としての姿勢などが語られる。また、対談の気楽さゆえに、アインシュタインやハイゼンベルクを筆頭とする科学者へのコメントも興味深く、博士の人となりがうかがえる貴重な書。本書からの一節を紹介したい。
科学者としていちばん大事なことは、どの実験、どのデータを信じるか、その判断力をもつことだと思います。つまり、何ものも金科玉条としないこと。ある実験が行われて、みんなはそれを信用する。しばらくするとあの実験は間違っていたとわかって、やっぱり初めの単純な理論のほうがよかったということになる。こういう事情を私はなどはそれこそいやというほど体験しているわけです。(
「素粒子物理学者の飛跡:南部陽一郎インタビュー」より)
なお、ノーベル賞授賞式翌日12月11日には、新聞各紙でノーベル賞特集記事が組まれる。読売・毎日新聞朝刊、日経新聞夕刊に広告を出す。30年間埋もれていた名作だけに、多くの読者に出合ってほしい。
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