フローラの十二か月[詳細]
Fleurs, Fetes et Saisons
大晦日から元旦にかけての聖シルヴェストル祭から、
日本でもおなじみのクリスマスまで、
ヨーロッパの自然と風土が織りなす四季折々の祝祭は、
そのまま花と緑のカレンダーでもあった。
ギリシア=ローマ神話、ケルト・北欧の妖精物語、聖書と聖人伝説、
民間伝承などに隠された植物のシンボルを読み解くことを通じて、
西洋文化のエッセンスが鮮やかに描き出される。
■目次より |
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迷い込む危険を冒して
序章 暦と気候について
ユーリウスとグレゴリウスあるいは時間の測定
過ぎる時間から変わる天候へ
第1章 氷霧
眠れる森の種子
新年にヤドリギを
冬のさ中に緑であり続けるキヅタ
第2章 蘇りしもの
春の祭典
「枝の主日」のツゲ
油と塗油の秘跡 オリーブ
木と「十字架」 レバノンスギ
復活祭の園
一茎のスズラン
第3章 夏の盛り
自然が最盛期に達するとき
聖ヨハネの日と薬草
ゲッケイジュの冠とカシワの葉
花束と旗
聖母のバラ
コムギの刈り入れとブドウの収穫
果実のとき
仮庵の祭り
第4章 死と蘇り
秋の色
フランチェスコとテレサ
万聖節 キク
死者の日
花と花輪
11月11日
聖ニコラ アーモンド
クリスマスの夜
12月25日
聖シルヴェストル祭
付 フランスの主な祝日
■関連図書(表示価格は税別) |
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■書評 |
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◎中川謙氏(『朝日新聞』1997年11月30日)
博識の植物学者が、主に植物にまつわる民間伝承と文明のかかわりを縦横に論じている。著者によれば植物は「生命」さらには「性」の象徴であり、またブドウ酒などの形で「酔い」の源ともなる。だから権力者が時に、その性格を秩序の敵とみなす。民衆への弾圧の背景に植物の影がほの見える例はいくらでもある。植物の持つ力は、神話や祭りを通じ「現代のラディカルな新しさ」の底にも流れ込んでいるのだ、という。
◎『マリ・クレール』(1998年1月)
「植物の本ではあるのだが、季節ごとに伝統ある祝祭の場をめぐり、広範な視野をもって書き綴られた知的水準の高い内容には圧倒される。聖書や神話が全編に流れ、東西の宗教、祝祭と民間伝承、歴史的背景など、軽妙に話が展開していく。ギリシアではキヅタやブドウと同じようにイチジクの木をディオニューソスに捧げる。この3種類の木は、葉の形によりはっきりとした類縁関係を成り立たせる。プラトンは干しイチジクが大好物で、フィロフィコス、すなわちイチジク愛好家と呼ばれた。彼はイチジクが頭を良くすると考え哲学者にすすめたとか。植物学というひとつのカテゴリーが縦横無尽に解き放たれ、植物に対する人間の思いや象徴的な意味を照らし出している。